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バグ個体に転生した俺、魔物として進化しながら人間社会を喰らう  作者: HATENA 
第12章「継承(エピローグ)」

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第2話「違和感」

 昼を過ぎても通りの流れは途切れず、人の数は確かに増えているはずなのに、青年にはどこか“抜けている”ような感覚が続いていた。


 混雑しているはずの時間帯なのに、足は自然と前へ出てしまい、止まる理由が見つからないまま進めてしまう。


 誰かにぶつかりそうになる瞬間もあるが、その直前で体がわずかに軌道を変え、結果的に接触することはなかった。


 「……やっぱ変だな」


 朝よりもはっきりと違和感を覚えたが、それが何なのかは相変わらず説明できない。


 前を歩く人の背中を見ながら歩いていると、その距離が近づいたり離れたりしているように見えるのに、歩幅は変えていないはずだった。


 距離の感覚が揺れているのか、それとも相手の動きが変わっているのか分からないが、どちらにしても不自然なはずなのに、問題は起きていない。


 列に並んでいる人たちも同じで、並んでいる順番は保たれているのに、間隔だけが曖昧に変化しているように見える。


 長く見える瞬間と、短く感じる瞬間が交互に現れるが、待ち時間自体は普通に流れていた。


 「……よく分からん」


 考えるほど余計に分からなくなるため、青年は意識的に思考を切り上げた。


 そのとき、近くを歩いていた男が何もない場所で足を止め、少しだけ体を傾けてから再び歩き出した。


 転びそうになったようにも見えるが、実際には何もなかったはずで、周囲の人間も特に反応していない。


 青年はその場所を通ろうとして、同じようにわずかに足をずらした。


 避けた理由は分からないが、そこを踏むのはよくない気がした。


 視線を落として確認しても、地面には何もない。


 それでも、そのまま踏み込む気にはなれなかった。


 「……気持ち悪いな」


 小さく呟くが、声に出したところで何かが変わるわけでもない。


 周囲を見渡しても、同じ違和感を共有している様子はなく、それぞれが普通に歩いているように見える。


 ただ、よく見ると微妙に動きがずれていて、同じ方向に進んでいるはずなのに、完全には揃っていない。


 それでも衝突は起きず、全体としては滑らかに流れている。


 青年はその中に混ざりながら、自分も同じように動いていることに気づく。


 合わせているわけでもないのに、自然と噛み合っている。


 誰かが空を見上げた。


 つられて視線を上げると、雲の形がゆっくり変わっているようにも、一瞬で別の形に切り替わっているようにも見えた。


 どちらの見え方も同時に成立しているようで、どちらが正しいのか判断する意味がない。


 「……まあ、空は空か」


 そう言ってしまえば、それ以上考える必要はなくなる。


 青年は視線を戻し、そのまま歩き続けた。


 違和感は消えない。


 だが、強くなることもなく、ただずっとそこにあるだけで、生活の流れを止めることはなかった。


 結局、歩けている以上は問題ではないと判断するしかない。


 「……大丈夫だろ」


 自分に言い聞かせるように呟き、青年は通りの流れの中へと戻っていった。

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