第1話「日常」
朝。
青年は目を覚ました。
天井が見える。
見慣れた部屋。
特に変わったところはない。
……はずだった。
「……ん」
少しだけ違和感がある。
何かが、ずれているような。
でも。
どこが、とは言えない。
考える。
分からない。
「……気のせいか」
それで終わる。
体を起こす。
床に足をつける。
冷たい。
普通だ。
問題はない。
顔を洗う。
水の感触。
いつも通り。
少しだけ、遅れて感じる気がした。
「……?」
一瞬だけ止まる。
だが。
すぐに流れる。
気にするほどでもない。
外に出る。
通り。
人が歩いている。
多い。
……少ない?
一瞬だけ、判断が揺れる。
でも。
すぐに決まる。
「……まあいいか」
歩き出す。
人の間を抜ける。
ぶつからない。
自然に避ける。
相手も同じように動く。
違和感はない。
ただ。
時々。
何もない場所を避ける。
理由は分からない。
見ても、何もない。
それでも。
通りにくい気がする。
「……なんだこれ」
小さく呟く。
誰も気にしていない。
そのまま通る。
信号の前で止まる。
赤。
青。
一瞬、よく分からなくなる。
どっちでもいい気がする。
でも。
体が勝手に動く。
問題なく渡れる。
危なくない。
「……まあ、大丈夫か」
前から人が来る。
すれ違う。
その瞬間。
目が合う。
知らない相手。
なのに。
「……あれ?」
何か、引っかかる。
思い出せない。
理由もない。
振り返る。
もういない。
人の中に紛れている。
「……変なの」
それだけ。
歩き続ける。
止まらない。
少しだけ違う。
でも。
困らない。
生活は続く。
だから。
問題ない。
通りは流れる。
人は歩く。
止まらない。
理由は分からないまま。
それでも。
ちゃんと進む。
「……普通だな」




