火の弾
きっかけは一人の死だった。
殺した奴らにとっては何てことない雑魚だった。
しかし、殺された側にとっては愛すべき同胞だ。
それも、平和を信じ、武器を持たない愚かな人間だった。それでいて、国ではしっかりとした立場があった。何せ、未知の大陸に棲む人間と初めての交渉を任されるくらいなのだから。
やはり、机上の空論だった。いや、机上ですら矛盾していた。
報復は早かった。その攻撃は速かった。
空が一瞬暗くなった。
そして、未知の大陸に棲むほぼ全ての人間は死んだ。
メテオだ。
圧倒的な威力、目視不可能な射程距離、回避不可能な速度。
国が誇る最強最大の魔術だけで決着した。
誰もが愚かな蛮族だと嗤い、同胞の死を悔やんだ。
もはや既知となりつつある大陸から、何かが飛翔した。
使い魔である鳥の目を介して情報を得た。
あれは人間だ。
人間が足から魔力を噴出させて飛んでいる。
どうやら敵は未知であるようだ。
メテオよりも速い。それに、敵は既にこちらの大陸に侵入している。
最適の選択肢、サンダーライトニングを使用。
その飛翔体は、あろうことか手から魔力を放出させ雷を打ち払った。
ろくな対処もできないまま、結界は破られ、いくつもの街がクレーターになった。
「貴様で最後か」
洞窟の中。異常な嗅覚によって発見される。
「どうやら、そのようだな」
王も民もなく、ただの人間がそこにいた。
「喰らえ、ファイアーボール」
まるで狙いが合っていない。
避けるまでもなく外れた。
「死ね」
魔力の放出によって粉微塵に消し飛んだ。
「うぐっ」
人類最強は苦しみ始めた。
呼吸ができないのだ。
天上は吹き飛ばし、脱出する。
しかし、呼吸はできない。
魔術を発展させた国は、植物を減らし、代わりに二酸化炭素を酸素と炭素に還元する魔術を多様した。
別の大陸の植物はメテオでほとんど死に、海の植物だけでは十分な酸素を供給できない。
個人技を芸術と呼べる領域まで押し上げる方向に発展させた国では、何が起こっているかわからない。
やがて、最後の人間が倒れた。
〈終〉




