5ファンタジー日本大戦
「ん?揺れた」
それも大きな地震だ。
ダンジョンが出来るにしては大きすぎる。津波がくるかもしれない。
そう思ってスマホを確認したら、見慣れた動画配信者が緊急でライブ配信をしていた。
その男は人一倍承認欲求が強い。だからダンジョン配信などという危険なことを平然とやっている。しかし、ダンジョン配信をする時は毎回告知をしている。
しかも、ダンジョン外で空を飛んでいる。日本最強だから逮捕することなんてできないが、法律を守る程度の人類に対する仲間意識は持っていたはずだ。
地震と並び、非日常が動画の没入感を深くしていく。
『今、緊急で動画を回している!大変だ、皆!日本以外の大陸が消えて、日本が5つに増えてやがる!』
何言ってんだこいつ。
言葉だけなら称賛を欲しがるバカの戯れ言だと聞き流したが、映像は本物だった。
『お隣から順に確認していくぜ!』
自分達が住んでいる日本は最も東にあるようだ。
日本最強は1秒にも満たない速さで隣に出現した日本の上空に移動した。
『なんだこれは………』
異様な光景だった。
麻薬でもやっているかのように「アー」とか「ウー」とか唸っている。
下半身を失い、出血多量でいつ死んでもおかしくないのに、平然と動き回っている。
これは、まるで、
『ゾンビ』
日本最強は一瞬でスキルを発動させ、ゾンビで溢れる日本を結界で覆った。
もしかしたら生存者がいるかもしれないが、彼の判断は的確だろう。
『次に行く』
日本最強は落ち込んでいた。
あんなのが4つも増えたと考えるとかなり絶望的だ。
『止まっている?あれは、戦闘しているな』
ちょうど真ん中にある日本も異質だった。
時間が停止したかのように人間も動物も何もかもが動かない。
ここに侵入するのは危険だと思うが、まあ日本最強だから大丈夫だろう。
あいつが負けるとは思えない。
移動すると、そこでは煌びやかな格好をした3人の少女と角が生えた蛮族のような格好をしたオッサンが戦っていた。
日本最強はスキルを使い、4人を拘束した。
動画からは驚愕した表情が見て取れる。
『こんにちは。どうして戦っているのか教えもらえるかな』
『これは!?』
『貴様、何故動ける。魔法少女以外が動き回れるなどありえない』
『ん?魔法少女。つまり、あんたは侵略者みたいな感じかな?』
『そうよ!そいつが敵よ!』
『そうだな。否定することもない。私が………』
角の生えたオッサンは気絶した。
おそらく威圧のスキルだろう。
『何か日本が5つに増えてるんだけど、何か知ってる?』
結論から言って、魔法少女は世界の変化についた何も知らなかった。
地震が起こったとは思ったが、戦っているためそれどころではなかったようだ。
角の生えたオッサンは魔族。人類を食べる敵らしい。魔法少女はそんな奴等と戦える唯一の存在だとか。
ただまあ、ダンジョンで鍛えれば普通に勝てそうではある。
『次、行くか』
4つ目の日本は、一目見ただけで面白いと言える点はなかった。ダンジョンもゾンビも魔法少女もいない、つまらない世界だ。
動画の先では何人もの女性が日本最強を見ている。
何か大きな違和感があった。
日本最強は降りて、こちらを見ている女性の一人に声をかけた。
やはり、日本が増えた理由は分からなかった。
そして、この日本の特徴がわかった。
この日本は男女比が壊れている。
男が少なく、女が多い。
空を飛んでいることもそうだが、男であることに強い注目が集まったようだ。
もしかしたら、ダンジョンがある日本に住む全ての男は、空を飛べると勘違いしたかもしれない。
10分ほど動画は中断された。
何をしているのな、ナニを挿入れているのかは言うまでもないことである。
『さあ、次で最後だ!』
日本最強は元気になっていた。
最後の日本は人がいない。
ダンジョンもゾンビも魔法少女も女性も何もない。
建物も崩壊している。
戦争で滅んだ世界なのだろうか。
『ん?あれはなんだ?』
動画では分からないが、日本最強は何かに気付いた。
動画が捉えた最後の映像は、巨大な口の中にいるかのようなものだった。
ありえない。信じたくない。しかし、死んだ。そうとしか思えない。
なんだ、これは。あれでも日本で一番強い男なのに。
全ての日本人が束になっても勝てないのに。
空を、飛んでいた。
あの歯の形状。
間違いない。この世界で一番強いのは、サメだ。
〈終〉




