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第25話 これっくらいの、おべんとばこにっ、の続きを忘れた父2

「ハルアキさんの、カノジョ? え、このお弁当ってこよりちゃんが作ったんじゃ……」


「いや、これはその、違くてですね、多分、いつもより早く起きたからこよりも本調子じゃなかったというか寝ぼけてたというか、それで――」


 疑問を投げてきた柏木さんに、俺はジェスチャーを交えてなんとか言い抜けようとしたが、


「――松田さん、彼女できたんすかッ⁉」


 水野のバカでかい大声によって搔き消されてしまう。


「あんだとッ⁉ あの女っ気が一切なかった松田に彼女ができただぁ⁉ おめっとう!」


「なぁんだ松田ッち、作る気ないとか言ってたくせに、やることやってたんじゃん。ま、末永くお幸せにね~」


「ど、どもです」


 水野の発言に反応して他の人らも集まってきた。気付けば事務所内はお祝いムードに包まれている。皆、良い人すぎんだろチキショウ!


「――どうしたんです? 皆で一ヵ所に集まって騒いじゃって」


「あ、お疲れっす、茶ノちゃのまえさん」


「お疲れ様です水野君」


 もう一人参戦。皆が送る視線の先にいるのは男がほとんどのこの現場で唯一の女性、紅一点の茶ノちゃのまえ夕涼ゆずみさんだ。


 彼女は微笑を浮かべながら近づいてくる。


「それで、なに話してたんですか?」


「これっすよこれこれ、松田さんの弁当見てくださいってば!」


「松田さんの、お弁当? それがそんなに面白いんです?」


「いいからいいから、ささ!」


 水野は論より証拠と横にずれ、茶ノ前さんに譲った。


「わぁ! 松田さん、お料理できたんですね! どれもすごくおいし――」


 茶ノ前さんの視線がある一点で止まる。


「………………」


 やめてくれええええ! そんなじっくり読まんでくれええええ!


 明らか安住さんのメッセージを黙読もくどくしてるであろう茶ノ前さんに俺の心の声が届いたのだろうか、彼女はクスっと笑った。


「あらあら、まぁ……」


「ヤバくないすか?」


「ええ、ヤバいですね。こんなことで盛り上がれる水野君たちが」


「…………え?」


「だから――〝松田さんに彼女ができた如き〟で盛り上がれるのはさすがにヤバい、と、申したんです」


 茶ノ前さんの声音は普段通り穏やか、けれど言い方が決定的に違い、とげが含まれていた。


「さ、皆さん! こんなとこでたむろってないで、午後の業務のためにさっさと英気えいきを養ってくださいね。ほらほら、早く」


 急かす彼女に他の人ら、隣の席を確保していた柏木さんと水野までもが素直に従い離れていく。


「松田さん。彼女ができたくらいで、いちいち自慢しないでくださいね?」


 去り際、茶ノ前さんはこっちを見ずにそう言った。


「いや、そんなこと俺はしてな――」


「自慢、しないでくださいね?」


「あ……はい」


 有無を言わさぬとでもいうのだろうか。俺は茶ノ前さんに気圧され、事実とは違うのにそうだと認めてしまった。


 茶ノ前さんはなにをあんなにイラついてたんだろう。あれか、レディースデイか? ……ていうか、あれ?


 彼女が去った後、俺は一人席に着き、そしてハッとする。


 おはしが、入ってないんだけど。

ここまで拝読いただきありがとうございます_(._.)_

この作品が面白い、続き気になるな~、と思っていただけたら幸いです(*´▽`*)

よろしければ、ブクマ、☆☆☆☆☆→★★★★★、お願いいたします(o・ω・o)

モチベアップに繋がりますので、何卒_(._.)_

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