7 最高の湯タンポに
「はぁ?!湯タンポだと?!」
俺は思わず大きな声をだした。
王子相手にこの言葉遣い、そしてこの態度…まわりの大人は良い顔をしなかった。しかし俺はそんなもので物怖じするような性格じゃない。
「俺は水晶玉をあんなに光らせたんだぞ?魔力の保有量はけた外れなはずだぜ?…さっきまで知らなかったけどよぉ…」
このアカデミーの卒業生の就職先は近衛騎士団等や国家運営に携わると相場は決まっている。俺は入学したからには近衛騎士団か王族の護衛に就きたいんだ!湯タンポじゃねぇ!
「俺はなぁ湯タンポじゃなくて近衛騎士団とか王族の護衛になりたくてこのアカデミーの試験を受けにきたんだよ!なるんならお前の湯タンポじゃなくて護衛騎士にしてくれよ!」
俺の言葉にデューイは目を見開く。
「僕の方が強いのに君は僕の護衛をするのかい?」
俺はさらに頭に血が上る。
「俺は炎属性なんだぞ?いくらお前の方が魔力量が強くて強力な魔法が使えるとしても氷属性のお前が俺に勝てるはずなんてないだろう?それにお前はこの国の王子なんだから護衛は必要だろう?人生なにが起こるか分からないんだから安心して背中を預けられる護衛は必要なはずだ!」
ここまで言って俺は後悔した。
せっかく王族のコネができたと言うのに王子に向かって『お前』と呼び、ヴァルデロスの直系に『俺の方が強い』宣言をしてしまった。しかしデューイはそんなことは気にしていないようだ。気が立っているガキの俺をなだめるように
「護衛をしたいならこのアカデミーにいる間に僕の求める人材になってくれるんだよね?」
「当たり前だろ?卒業までの10年間でお前の望むような護衛騎士になってやるよ!」
するとデューイは満足そうに微笑み、
「じゃぁまずは最高の湯タンポになってくれないかい?僕の氷を溶かせるような炎魔法が使えるようになるのを期待しているよ」
そう言うと、デューイは少したずらな笑みをうかべてから俺の首に腕をまわして抱きついた。
「冷てぇ!!」
すごい冷気だ…。
俺の手足は一気に凍りついた。俺はまだ魔法の使い方はよく知らない…だから反撃もできない。だがそんなことは関係ねぇ、たとえ魔法の使い方を覚えたとしてもこの氷を溶かすことができるとは到底思えない…そう思わせるほどの強い魔力をデューイから感じた。
俺の息は白く凍りつき始めていた。俺はカスれる声で
「や…め…ろ…」
するとデューイは俺からスッと離れた。
俺はもう声を出すこともできず白い息をはき続ける。立つ力もないのに足が凍っていて膝をつくこともできなかった。肺まで凍りついてしまったのか呼吸するだけで胸が痛む。
しかしデューイがパチンと指を鳴らすと一気に氷が溶けた。俺はふらふらと崩れ落ち、やっと膝を地につくことができた。デューイは俺を見下ろして
「僕が安心して背中を預けられる護衛騎士になりたいのであればまずは僕の氷魔法に負けない立派な最高の湯タンポになりたまえ。そしてこのアカデミーで学ぶ間に俺の望むスキルを身に付けた護衛騎士になってもらおうか?」




