6 目的は・・・
デューイがいたおかげで校舎内も迷うことなく手続きを済ますことができた。このアカデミーには選ばれた者しか入れないのだから俺が入学するからと言って両親が門をくぐれる訳ではない。
ヴァルデロス魔法アカデミーとヴァルデロス剣術アカデミーは国立のなかでも授業料が免除される珍しいアカデミーだ。学費免除で最高峰の教育を受けることができるのだから入学試験に合格した後に入学辞退をする者などいない。だから手続きは7歳のガキでも簡単にすませられる内容だった。証明写真を撮ってもらい入学許可証の受け取りにサインを書くだけだ。
「汚いサインだな…。卒業までにはもう少し読める字でサインを書けるようにするんだよ?」
横からデューイに諭されたが気にしない。
俺は平民だから家庭教師なんていないし教育を受けるのはこれからだ!サインが書けるだけましだろう?
入学許可証をもらい、あとは渡された書類に両親からサインをもらい期日までに提出すれば俺は晴れて来月からこのアカデミーの生徒になる。そこでふと気がついた。デューイはずっと俺の横にいてサポートしてくれているが入学手続きをしていたのは俺だけだ。
俺は入学許可証を握りしめたまま、
「デューイは手続きしないのか?」
するとデューイはにっこりと微笑み、
「あぁ、僕はもう終わっているから」
俺はまた呆れたように口を空けた。
確かにデューイはヴァルデロスの王子、つまりサラブレットだ。魔力量だって規格外に多いのは水晶玉を触らずとも分かることだしヴァルデロスの王子が不合格な訳はない。だが入学手続きが終わっているのになんでわざわざ水晶玉を触りに行ってたんだ?
「じゃぁなんで門の前で水晶玉に触ったんだよ?あれは入学資格を確認するための物だろう?入学手続きが終わっているなら必要ねぇだろ?」
するとデューイがばつが悪そうに微笑み、
「いや、入学はずいぶん前に決まっていてね。手続きも既に終えていたんだけど…、ここだけの話し水晶玉に触ったのは今日が初めてな訳ではないんだよ。実は何度か試しているんだ」
デューイはチラチラとまわりを見る。誰もいないことを確認すると少し恥ずかしそうに、
「実はね…僕、氷魔法が嫌いなんだよ。なにを隠そう究極の寒がりでね。叶うのであれば僕は炎魔法使いになりたかったんだ。それで何度か水晶玉に触りに言ったんだけど毎回青白く光るんだよ。そんなことを繰り返していたものだからさすがにお祖父様に『いい加減にしなさい』と叱られてしまってね。だから今日は城を抜け出して触りにきたってわけ。もちろんちゃんと列にもならんだよ?。結果は変わらず君のように燃えるような赤い光りにはならなかったけどね」
俺は驚きすぎて開いた口が塞がらなかった。
さっきまで大人顔負けの威圧感をかもし出し、子供とは思えない様な考えを俺に話していたのに怒られるまで何度も水晶玉を触りに来てさらに隠れてまた触りに来ていたと言うのか?
「自分とは違う属性の魔法は学べば習得可能だってきくが…さすがに氷魔法と炎魔法じゃ正反対すぎだろう?使うことだって難しいのに属性が変わる奇跡なんて起こらないことくらい俺にでも分かるぜ?それに寒がりなことこそ氷魔法使いの証拠だろう、氷魔法使いは冷気に包まれている訳だから」
するとデューイがいきなり俺の頬を両手で包む。
「冷てぇ!!!」
俺はデューイのあまりの冷たさに飛び上がりそうになった!しかしデューイは嬉しそうに、
「カデル、君は何て温かいんだ!本当に気に入ったよ!ねぇ君、僕の湯タンポになってくれないかい?」




