5 子供のくせに
「じゃぁ、『審判の門』を通ることができないと言うことは国にとって悪影響を及ぼす可能性がある魔法使いになる可能性があるから、門前払いをするってことか…。ってことはこの門通れなかったやつ最悪じゃん!!」
俺は少しおどけてみせる。
一応俺は善人な人間と判定されたと言うことが少し恥ずかしかったのだ。しかしデューイは腕を組んで、
「そうとも限らないよ。人間なんて色々な影響で変わる生き物だ。性格ってのは産まれ持ったっものよりその後の出会いや経験によって大きく変わるものだよ。特に僕たちのような子供はいい出会いがあるかないかでは大分違うだろう。審判の門がさす『邪』とは深い意味があるんだと僕は思うよ。だからこの門をくぐれないからと言ってその人の人格を全て否定してしまうのは違うと思う」
俺は髪をガシガシかいた。
デューイの話しはよく分からない。難しいことは面倒だし考えたくない、それに俺には関係のないことだ。
「とにかく第二関門は突破できたってことだろ?なら次の試験に向かおうぜ!」
俺の言葉にデューイはコクコクと頷いて先導するように歩き始めた。
門から校舎までは少し距離がありそうだ。一度も入ったことはないし敷地内に何があるかも分からないから俺はデューイの数歩あとを歩くことにした。用心深いだけだ…臆病なわけでは断じてない!!
「あぁ、それから…入学試験ね、試験はこれでおしまいだよ?」
デューイは振り返りもせずにあっけらかんと言った。
『は?!これで終わりだと?』あの難関で知られているヴァルデロス魔法アカデミーの入学試験がこんなにあっさりと終わるものなのか?
デューイは急に立ち止まり俺を見上げた。俺よりも小柄で細身、美少女と見間違う容姿のくせになぜかものすごい威圧感を感じる。校舎へ向かう道は緑に溢れ、本当であればその光景は癒しを感じる筈なのに俺はそんなものを全く感じなかった。
「このアカデミーは何を重視しているか君には分かるかい?」
俺は息をのみ背中に汗が伝うのを感じた。
まるで面接官を前にしているような感覚がする…。答えを間違えたら一瞬にして氷漬けにされてしまいそうだ。さっきまではフランクに話しかけてくれていたのになんで人が変わったかのように質問をしてくるんだ?
俺は困ったように髪をガシガシかきながら、
「質を見てるんだろう?魔力量と邪なものを排除してるんだから」
デューイは少し俺を見つめてからさらに真剣な瞳で俺を見つめる。
お前本当に本当に七歳か?その威圧感、俺の親父より怖え〜ぞ?
「君はこの国の弱点は分かるかい?」
完璧すぎる王族に守られ、平和で富みに溢れる夢の国のヴァルデロスの弱点だと?おいおい、七歳の子供に難しい質問をそんな恐ろしいほど真剣な顔でするなよ!お前王族なんだから普通の子供ならチビるぞ!!
だがな…、俺も普通のお気楽なガキじゃねぇんだよ!演技で『お気楽な少年』を装ってはいたがこれでも超真剣ににこのアカデミーの入学を志願してやって来てんだ!
「この国の弱点だぁ?そんなの王族に頼りすぎなことに決まってんだろ?!王族が…特に直系が途絶えたらこの国は他の国から一気に攻め込まれる!」
ここまで一気にまくし立てて俺は一息付くように息を吐く。
デューイは俺の次の言葉を静かに待っている。俺の話がまだ途中だってことを分かっていやがるようだな?
「だがな…この国の弱点は王族に頼りきりなだけじゃねぇ。魔法に頼りすぎなところだ」
俺の言葉にデューイの表情から威圧感が一気に失われた。
キョトンとした驚きの顔…さっきまでの威圧感を放っていた男とは思えねぇかわいすぎるキョトン顔だ。
「魔法で瘴気は浄化できねぇ。この国は魔法に頼りすぎちまったせいで闇や瘴気を浄化する聖女が不在だ。この国は幸いにも島国で他国からの闇や瘴気がくることは少ない。だからこそ闇や瘴気がひとたびこの国に上陸すればパンデミック状態だ」
俺がそこまで言うとデューイは満足そうに微笑む…不覚にもやはりかわいいと思ってしまう。怖かったり妖艶だったりかわいかったり…そう言うスキルを持ち合わせてんじゃねぇよ!!真剣な話してるのに気が散るんだよ!!俺をドキドキさせんじゃねぇよ!
「なるほどね…、じゃぁ君には分かるはずだよ。なぜ『審判の門』が邪な者を通さないのか?」
俺は腕を組んで胸を張る。
デューイが穏やかな雰囲気になったことで俺の答えが正解なことはもう分かっていた。だから落ち着いて堂々と答えを伝える。
「ヴァルデロスは最低でも闇と瘴気を自国で発生させるわけにはいかない。邪な心は闇を産み瘴気となる。お前がさっき言った理由で改心したとしても、変わらない可能性もある。だから邪な心を持つものは他のアカデミーでそれを構成させるプログラムを受けさせ授業内容の質をこのアカデミーよりわざと下げるんだ。その間に邪な心を持たない者がこの国で最高の高等教育を受けるんだ。そこで必ず力の差が生まれる。邪な心を持った者が公正できずに成長したとしてもこのアカデミーの卒業生には敵わない…。邪な心が闇に変わる前に手を打つんだ。そうやって教育に格差を付けることがこの国の防衛を兼ねている…そうだろう?」
俺がそこまで言うとデューイはクスクス笑って、
「なるほどね、その考えは実に面白い。半分正解だよ。ちなみにここの生徒は毎日『審判の門』を通ることになるからね。邪な心をもったらこのアカデミーから去らなければならない。毎日入学試験があるようなものだね」
俺は眉間にシワを寄せて目を細める。『半分正解』だと?半分間違っているのか?…どこが?
しかしデューイはこれ以上この話を続けるつもりは無いようだ。また校舎に向かって歩き出した。俺の回答はどうやら半分は間違っていたもののデューイにとっては満足のいく回答だったらしい。
七歳のガキにしては十分すぎる回答だってことか?




