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配属先は犠牲聖女の護衛騎士  作者:
4 聖女を愛すると言うこと

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44 次はポルト様が心配です…心配がつきません

 素性のよく分からない令嬢のはずなのにポルトはとても嬉しそうだった。さすがにイエンツォ様とデューイで何かしらの身分工作は行っていたはずだがまさか一目見ただけでこんなにポルトが気に入るとは思っていなかった。

 ローズの可愛らしさか、それとも神聖力がポルトに安心感を与えているのか…、俺には分からないが王族の血を引くものが持つ気品?を執事であるポルトは感じ取っているのか…?とにかく『私はあなたのことが気に入りました!』と顔に書いてあるかのような嬉しそうな笑顔をポルトは見せた。

 だが元々人と接することに慣れていないローズがこんなに見つめられて耐えられるわけがない。自己紹介をしたまではいいがそのまま固まっている。

「ポルト、ローズ嬢が恐がっているじゃないか。まったく困ったやつだな…」

 デューイが助け船を出すようにポルトとローズの間に割って入りローズの手を取った。

 こういう時に助け船を出す立場にいないのを悔やむ…。今のローズはデューイの妃候補だ。デューイに花を持たせてやらなくてはならないし護衛騎士は盾となる存在だ…あまりでしゃばりすぎも良くない。

 しかしさっきまで喜んでいたポルトが今度は我慢できないと言わんばかりに目を潤ませ始めた。

 ―――おいおい、ポルト!今日のお前は情緒不安定だな?!何時も冷静なお前らしくない。

 ポルトは目頭をおさえる。驚いている俺とデューイとは違いローズはすぐさまポルトの手を取った。さっきまではポルトの勢いに負けていたのに、やはり聖女と言うのは根っからの心配性でありお人好しなのだろうか?

 ローズはただでさえ小さいのにさらに身を屈めてポルトの顔を覗き込むとデューイから手を離してポルトの手を取った。ローズの小さな手は先程のデューイの時程は光は放っていない。恐らくポルトに与える神聖力は彼に気付かれないように最小限にコントロールしているのだろう。だとしても人前で神聖力を使うなんて軽率な行動だ。仮にポルトに気付かれたとしても光魔法とでも言えばいいのだが、だといても初日から使うのは避けてほしかった。

 俺とデューイの考えなどどこ吹く風で、ローズは優しくポルトに語りかけた。

「ポルト様どうしてそんなに悲しそうなのですか?」

 悲しそう?俺にはデューイに妃候補が見つかった喜びや安堵の涙に見えるんだが?ローズは『涙=悲しみ』と思っているのだろうか?

 しかしポルトはハンカチをとりだしながら、

「また、お見苦しいところを…。

 ローズ様のそのお召し物…それはヴァルデロス北部の名産品であるシルクで作られております。ルーク様の生まれ育った地域の名産品でございます。そしてその淡い緑色はルーク様がお好きなお色でした」

「私のせいでルーク様を思い出してしまいましたか?」

 亡くなってずいぶんたつがマリア様もルーク様も未だに国民に愛され続けている。俺のようにあまり記憶のない年代とは違いポルト程の年齢の者のなかには思い出せば辛くなる者も多いだろう。しかもポルトは城で働く人間だ。直接接することがあったかは分からないが一般人よりも近くで2人を見ていたことには違いはないだろう。

 …俺は舌打ちしたい気分を必死にこらえた。

 ―――くそ、しくじったな…。

 俺にとっては一番恐れていたことだ。ローズはマリア様とルーク様の死を自分のせいだと思っている。2人の死を思いだし悲しむ人を見ればローズの傷はさらに深くなるだろう。

 しかしポルトは顔をあげるとまた微笑んだ。

「確かに悲しく込み上げてくるものはございます。ですがそれ以上に嬉しく思っております。ルーク様の愛用されていらっしゃった物を身にまとわれたご令嬢がデューイ様のお側にいらっしゃるのですから…」

 ポルトの言葉を聞きながらローズの表情を中止する。ポルトの言葉をローズはどう受け止めたのだろうか…、まだ自分のことを責めるのだろうか?

 今すぐローズを抱き締めて『自分を責めるな』と言ってやりたい。例え真実を知ったとしても誰もローズを責めないと伝えてやりたい。ポルトの涙は悲しみだけの涙ではないと…。

 しかし今の俺はなにもしてやれない。今の俺はまわりに注意を払いローズを危険から守るのが責務なのだ。ローズを気にしながらも俺はまわりを警戒するだけの護衛に徹しなければならない。

「今日のお前は騒がしいな。少し暇をやろうか?」

 デューイはそう言ってローズの手をポルトから奪い歩き出した。デューイも神聖力でポルトを癒し続けていたローズを早く彼から引き離したかったのだろう。このままほっといたらローズの癒しの力でポルトがほだされてしまうところだった。

 俺は黙って2人の後に続こうとした。だがポルトの独り言に俺は一瞬だけ足を止めた。

「こんなに素晴らしい日がくるなんて…」

 ―――たかが妃候補にずいぶんと感激するんだな。

 ルーク様の人気も高かったとは聞いてはいたが城で働く者にとってはさらに特別な存在だったのだろう。そしてルーク様の所縁の品を見にまとった令嬢が妃候補として現れたことにさらに運命を感じる程に。サンタはそれも計算の上でこのドレスをローズにプレゼントしたのだろうか。

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