40 謎の令嬢
俺とデューイのやり取りを見ながらローズはおどおどしている。俺と出会う前の2人は恐らく会えば仲良く…、きっとおそらくいや、絶対に兄妹とは思えないほどイチャイチャ過ごしていたんだろうが、ローズ自身その後にくる冷えに耐えることを強いられていた。だからと言って唯一会えると人と言っていい人物で肉親であるデューイを避けるわけにいかなかったからいつも全力で甘えることにしていたのだろう。
だが俺がそばにいるようになってからは違う。話をしたり一緒に食事をする、それだけでもローズにとっては人と接する喜びを感じたはずだ。俺と違ってそれは恋心ではないのが残念なところだが、俺によってローズの考えは確実に変わってきているだろう。
最近では凍えることも殆どなくなった。昨日おデューイのせいで体はすこし冷えたが早めに俺が対処したし、あまりデューイが触らないように気を配った。だから昨日は彼女にとって始めて体に負担がなかっのだと思う。デューイが帰った後も普段と変わらず過ごせていた。
出会った頃であれば『お兄様♡!』と抱きついていただろうがそれもせずに俺が制止すれば必要以上の接触はしない、俺がデューイに触るなと言っても『そんなこと言わないで下さい!』と否定しないのは、俺の指示にしたがっていた方がからのだ負担が少ないから、そしてそれだけの関係を築けている証拠だろう。だれだって好き好んで凍えたい奴などいないし、デューイに固執する理由も薄れてきているのだ。
だからと言って最愛の兄をむげにもできないからだろう、ローズは話題を変えるように、
「ところでお兄様、お城の中を歩くのですよね?具体的にはどこを歩けばいいのでしょうか?」
俺のせいで抱き締められずにいた愛妹が問いかけるとデューイは嬉しそうに微笑みローズの手を取ると自分の腕に絡ませる。
「今日は初日だからね。カデルも城のなかはあまり歩いたことはないだろう?だから今日はお兄様が案内して上げるよ」
そう言ってデューイがローズをエスコートし歩き始めたのを見て俺はすぐに2人の前に立ちふさがった。そしてデューイを見下ろすと、
「何度も言っているだろ?おまえが触るとローズが凍えちまうんだよ?少しは護衛騎士の言うこと聞けよ?」
しかし今回のデューイは引く気はない様子で堂々と胸を張り、
「いいか?ローズは僕の婚約者候補としてこの城を歩くことになるんだぞ?まず初日は僕がエスコートしない訳にいかないだろう?」
「よく言うよ。他の令嬢のエスコートをしているところなんて見たことねぇぞ?
しかたねぇな、だが条件がある。多めに休憩を挟んでもらおう。少しからだが弱い令嬢と周知させておけばローズを温める時間をとりやすいだろう?それからたまに俺と交代しろ!お前と腕を組むだけでも十分冷えるんだよ!
これは護衛騎士として引ける最低ラインの譲歩だ」
するとデューイはクスリと微笑む…。アカデミーの学生の頃は毎日見ていたデューイの妖艶な笑顔…。どんな女子生徒よりも美しくて、一度見れば恋に落ちてしまうとまで言われていた微笑みだが、今は俺の意識が変わったせいか見ていると腹が立ってしょうがない。今の俺にとってはローズを傷つける最危険人物だ!しかしデューイに敵意を向けるわけにもいかないので俺は髪をガシガシかいて、
「俺に色気を振り撒くのはやめろよ…」
と言いながら顔を隠す。これで照れ隠しをしているように見えただろうか?
デューイは満足そうに歩き出す。だが俺が気になったのはローズの表情だ。ローズの顔が浮かない。凍えるのが心配なのか、城内を歩くことが不安なのか?それとも俺のテリトリーから出ないように細心の注意を払っているのか?もしエスコートするのがデューイではなく俺だと安心してくれるのだろうか…そんな想像をするだけで心臓の鼓動が早くなる。
いやいや、まずは集中だ!色恋よりも護衛だ!俺に必要なのは集中力だな。
そう反省しながら俺は二人の後について歩き始めた。
当たり前のことだがこの城の警備は万全だ。廊下を歩いていると近衛兵の連中とすれ違う。皆、デューイが連れている令嬢を見ては会釈をして行くが内心は冷静ではないだろう。
なにせ天使のように愛らしく、美しい少女をデューイが連れているのだ。アカデミーにいた頃も舞踏会やパーティー、式典でさえ誰も女性を連れて歩かなかったやつがそれはそれは幸せそうにエスコートをしているのだ。
この作戦は失敗だったな…。きっと明日には城中どころか国中が『謎の令嬢』の話題で持ちきりになるぞ?




