37 執着心
次の日から早速俺たちの生活は変わった。起きたらサンタのプレゼントが沢山届けられもみの木の根本は見えなくなっていた。
まず用意されたのは彼女の服だ。ローズがいつも着ている聖女の服を着て城を歩き回るのは目立ちすぎるし、だからと言って城のメイドに化ければ見慣れない顔のメイドではすぐにバレてしまうし、メイドの横に護衛騎士がいるのには無理がある。だからデューイの客人として招かれた令嬢に扮することにしようと昨日3人で話し合った。
…サンタ、お前本当に仕事が早いな!翌朝には一式が揃えられるのかよ!
白と緑を貴重としたドレスはローズが着ると森の妖精の様にかわいいだろう。だがデューイの客人の令嬢となれば妃候補と思われるのが当然で、そう言う令嬢はこぞってめかしこみ、一番目立とうと大きな宝石の付いたド派手なのジュエリーを付けてくる。妃候補でもなかった一般のアカデミーの生徒でさえ、デューイのお眼鏡にかなおうと誰よりも目立とうとしていた。
それに比べればローズに用意されたドレスは派手さに掛けていたし色も淡かった。ジュエリーも質素に見えたが、彼女が普段着ている白い質素な生地で作られている聖女のドレスと比べるとそれでも十分煌びやかに見える。
実際、ドレスとジュエリーを見たローズは「こんなに豪華なものなんて着れません!」と言ったくらいだった。贅沢を知らないお姫様はいつかティアラを付ける機会もあるはずだが…こんなに贅沢知らずで大丈夫だろうか?そもそもデューイの用意した本に使われている宝石だって不要な贅沢品だが、きっと彼女はあの本に付いている宝石が本物だと言うことに気付いていないのだろうな。
ローズは嫌がったが聖女のドレスで外に出るわけにもいかないし、大臣に扮して城中を歩き回るのはいつか大臣でないことに誰かが気付かれてしまうだろう。近衛兵のなかには俺のことを知っている者もいるから、俺が横にいて怪しまれないのはやはり護衛騎士としてデューイの客人を護衛するのを装うのが一番なのだ。
ローズは渋々と言った様子でドレスを手に取りながら、
「本当にこれを着ないとダメですか?」
となんども再確認をしてきた。聞くくせになかなか着てくれないローズに俺は何度も安心させるように優しく説明して
やった。
「このドレスは聖女という存在をカモフラージュするものでもあるんだ。こんなドレスを着ている聖女がいるだなんて誰も思わないだろ?
それとも赤いドレスの方がよかったか?お前の白い肌に映えるだろうな、真っ赤なドレスにビジューをちりばめてもらうか?それともフリルかリボンの方が好みか?それからネックレスももっとボリュームのある宝石が付いているものに替えよう。それから――」
俺の説得が通じたのか雪菜は何度かの押し問答の末、やっとドレスをもって自分の部屋に入ってくれた。本当であればメイドがドレスを着させてヘアセットまでをするがこの部屋にはメイドなんていない。だからと言って嫁入り前のプリンセスの着替えを俺が手伝うわけにもいかないし、そもそも俺はドレスの着せかたなんて知らない。そう言うのは蔓が適任だ!いつも彼女の着替えを手伝いヘアセットもしていたんだからなんとかしてくれるだろう。
だが初めてのことだから時間はかかるだろうと思って俺はりビングでゆっくりとコーヒーを飲みながら待つことにした。
ローズはいつもハーブティーを飲んでいた。コーヒーはサンタにお願いしてもらったものだが、ローズはそもそもコーヒーの存在を知らなかったらしい。他にも紅茶も飲んだことはないと言っていた。飲み物は見ずと、温室で取れたハーブでいれるハーブティーや果実を絞ったジュースのみだ。俺が淹れるコーヒーの香りにひかれてローズもコーヒーを飲んだがハーブティーに慣れている彼女には味の濃い苦い飲み物で顔をしかめていた。
俺がゆっくりとコーヒーを楽しんでいるとローズの部屋から白兎と氷狐の声が聞こえた。どうやら蔓と一緒にローズの着替えを手伝っているようだ。蔓がローズの着替えに慣れていると言ってもコルセットやドレスは彼らにとっては初めてだ。人前に出せるレベルで部屋から出てきてくれることを祈るしかない。
白兎と氷狐のあ〜でもないこうでもないと言う声と「え〜、それもしなきゃダメなの〜」と言うローズの声をBGMがわりに俺は優雅にコーヒータイムを楽しんだ。今後はこう言う日々が続くのだろうか。
植物を愛でたり本を読むゆったりとした生活は少しの間お預けになるだろうか?疲れはてて祈りの時間が少なくなることもあるだろうか…?俺との時間は?俺と話す時間も減るのか?かわいい笑顔を見る時間が減り、護衛騎士として気を張る時間が増えてゆくのだろうか?
そこまで考えてハッとする。やっぱり俺はローズに執着し始めている。2人っきりのこの生活が執着心を倍増させているんだろう。外出することによってこの執着心が和らぐだろうか?ローズを守る上では邪魔な感情だ。




