33 奇跡の夜の真相
「ローズがこの国を守ってる?そんな必要ねぇだろう?この国はヴァルデロス国王や王族の魔法で守られてるんだ」
俺が言うと氷狐は鼻で笑いやがった。
「だから平和ボケしてるやつはダメなんだよ。確かに王族がこの国を魔法で守っているのは事実だ。だがお前もそうだが魔法には属性があるだろ?デューイの氷魔法がこの国の大地を豊かにしてくれると思うか?
この国の大地が豊かなのは全部神聖力のおかげなんだよ。闇も瘴気も病も全て浄化してこの国に平和をもたらしているのはローズだ」
神聖力によってこの国が守られてるだぁ?王族の魔法に守られていることが常識のこの国でそんな話し…おとぎ話より信じられねぇよ。
だが確かに魔法には属性がある。生活魔法程度の簡単な魔法はみんな使えるが、基本的にはみんな自分の属性魔法を使う。確かに氷属性のデューイが大地を豊かにするような植物魔法や光魔法を使えるかと聞かれたら答えNOだ。
ローズはクションに座ったまま氷狐の頭を優しく撫でてやる。すこしイラついていた様子だった氷狐が別人ならぬ別狐の様に蕩けるようにローズに甘えている。
ローズは氷狐を撫でながらも俺には真剣な眼差しをおくってきた。
「王族の…しかも王位継承権のある直系の者にしか知られていないことですがヴァルデロスは世界で最初の聖女が生まれた国だと言われています。その聖女の力はとても強かったそうで彼女の死後もその恩恵によってこの国は発展し平和と富を維持し続けてきました。
でもそれはずっと維持できないもの…長い月日の流れの中でついに彼女の恩恵はつき、15年前の瘴気の発生が起こってしまったのです。そしてそれは止められなかった。この国には聖女がいなかったから」
「15年前…。まさかとは思っていたが『奇跡の夜』はローズの仕業なのか?俺は見てたんだよ。あの光を…あの『奇跡』を!」
俺はずっと聞きたかったことを口にした。
ローズが15歳だと聞いた時点で、もしやとは思っていた。『奇跡の夜』はずっとマリア様とルーク様が関わっているとされてきたが、実際に瘴気を消す魔法が存在するのか、そしてその方法は謎だった。
だがローズが聖女ならばあの光の粒子を発生させたのは彼女なのではないかと俺はすぐに考えついた。だがそれを今まで問いただすことは出来なかった。意思をもってそれを行った年齢ではなかったのは確かだ。そしてマリア様とルーク様が命を落とされた事実…、真相を知る勇気が出なかったのだ。
ローズはうつむいていた。彼女の態度が物語っている。俺の予想は正しいことを。だからこそ聞いてはいけなかった気がした。それでも質問したのはこの部屋に通されたのはこの話をするためでもあったのではないかと思ったからだ。
「あれは…『奇跡』ではありません。あの日、私はお父様とお母様を殺してしまったのですから」
今…何て…?
沈黙が流れた。きっとそれは数秒だったはずだ。息をするのさえ忘れてしまうほどローズの言葉は衝撃的だった。なんて答えれば言い?予感はしていたものの返す言葉が見つけられない。
「君たちが『奇跡の夜』と呼んでいるあの夜、まだ赤ん坊だったローズは神聖力を暴走さたんだ。
カデル殿が見た光の粒子はローズが発してしまった神聖力だ。一晩で国ひとつをまるごと浄化してしまうほどの力だ、赤ん坊のローズの体が耐えられるはずはない。
ローズは自分自身の神聖力に耐えきれずに死ぬところだったんだ。それをローズの両親が助けたんだよ。命と引き換えにね。
でもローズはいつまた神聖力を暴走させるか分からない状態だった。しかもこの国には聖女も神聖力も知識は素人以下だろ?
聖獣界は大騒ぎだったよ…。だから僕が契約を結びローズを聖女として育てることにしたんだ。
いつまた暴走しても大丈夫なようにここに閉じ込めて、ちゃと神聖力をコントロール出来るようになるまでここで家族とも出来るだけ会わせないようにして育てた。」
慰めるように言い聞かせるように話す白兎は俺じゃなくローズに話しかけているように見えた。
「ま、まてよ…。それならローズが殺した訳じゃねぇだろ?マリア様達はローズを守るために――」
俺はそれ以上なにも言えなかった。きっと白兎も氷狐も今まで同じことばを何度もローズに伝えてきただろう。だがローズに何を言っても彼女の気持ちは変わらなかった…だからさっきローズは言ったのだ『自分が殺した』と…。
『自分を助けるために両親は死んだ。自分を助けなければ両親は死ななかった』
ローズは15年間この閉ざされた塔のなかでそう思って生きてきたんだ。




