28 朝早く起きるなんて酷すぎます
俺は少しだけ考えてから、
「まぁ…、もういいや。ある意味違う話で面白かったよ」
と答えるにとどめた。
外の世界とほとんど関わらないような生活をしているのだから、悪い刺激をローズに与えたくない兄心の結果なのだろう。
それにしても、サンタはデューイやイエンツォ様の許可を得ているものをローズに届けている訳か…。
もしかしたらサンタはデューイかイエンツォ様自身の可能性はある。しかしそれなら新しい本と言って渡せばいいだけだから、それが出来ない人物と言うことでやはり別人なのだろう。
とにかくサンタについては何者なのか護衛騎士としては確認したい。だがローズは知らなそうなので後でデューイに後で確認するとしよう。
ローズは琥珀色のキラキラした目で俺を見つめている。『感想を早く教えて!』と目が訴えてくる。だが感想と言っても難しい…、ツッコミたいストーリー過ぎる!もう原作とは別物の話しと思おう。
「まぁ面白かったけどよ。こういう本何冊も持っているのか?」
ローズはコクコク頷いた。
「はい。お兄様はたくさんの本を持ってきてくださいます。よかったらいつでもお貸ししますよ?」
「へぇ…じゃぁ今度、どんな本があるのか見せてくれよ?」
俺がそう言うとローズは一瞬驚いた表情を見せてから自室の扉を見つめた。その表情は『他人を部屋に入れたくない』と物語っていた。
確かに他人の…、しかも異性を部屋に入れるなんて年頃の女の子は嫌なんだろうな。初日にもローズはそう言っていたし…。だが護衛としては自室が出入り禁止なのはあまり良くない、例えセキュリティがしっかりしていたとしてもその考えを変えるつもりはない。
俺は優しく微笑んで見せる。俺には下心と他意がないと言うことを態度で証明するように優しく語りかけた。
「あぁ、別に部屋に入れてくれって言っているわけではないんだ。ただその本、どれも大きくて分厚い、それに本物の宝石が無駄に使われているから重たいだろ?小さなお前が運ぶのは大変――」
「大丈夫です!私こう見えて力持ちなんです!」
俺が言い終わるよりも先にローズは俺の申し出を却下した。
クソッ、まだこの話を切り出すのは早かったか…。
ローズはまるで狼を目の前にした子ウサギのようにビクビク震えながら無い牙で必死に威嚇しているように俺を見上げる。』そんなかわいい顔で威嚇されてもお兄さん全然怖くないんだけど?』と心のなかで苦笑しながら、俺は両手を軽く上げて降参ポーズをとって見せる。
「わかったわかった…。別に部屋に入れてくれって話をしたかった訳じゃないんだけどな。
じゃぁまた明日、ローズの好きな本を貸してくれよ?楽しみにしてるからよ?
でも忘れるな、朝はちゃんと早起きして3食しっかり食べるんだぞ?」
次の日の朝。
俺の起床は早い。日の出とともに目を覚まし、部屋なかで軽いストレッチ、筋力作りと真剣を使った素振りをする。
炎魔法は室内でのトレーニングは色々と燃やしてしまうので難しい。部屋のなかで魔法のトレーニングとなるとコントロール強化の練習が中心となり魔力強化練習が出来ない偏りはできてしまうが、最低でも体はなまらないように努力している。
そして軽くシャワーを浴びて朝食作るのが朝の俺のルーティンだ。いつもは俺一人分だが今日はローズの分も作る。もちろんローズが約束通り早起きしてくることはこれっぽっちも期待していない、できないに決まっているから。もちろん起きてもらうがな…。
俺は朝食の準備を終えてテーブルに並べた。いつもこれくらいの時間になると蔓がローズを起こそうと温室から床を這ってくる、もちろん今日も…。
いつもは見ているだけだが、今日からは口出しをさせてもらう!
俺はローズの部屋に入ってゆこうとする蔓を踏みつけて動きを止める。蔓の先が驚いたように振り向く…。
振り向くって…お前には目でもあるのか?!まぁそんなことはどうでもいい、俺は嚇しをかけるように威圧感を込めて見下ろし、
「たたき起こせないなら引きずってでも俺の前に連れてこい!5分だ…5分だけまってやる」
と低い声で恐ろしいほど優しく言ってやった。蔓が震えているのが足元から伝わってくる。
俺が足をどけてやると蔓はスルスルとローズの部屋の中へと入って行った。
あぁ…、はじめの頃はあんなに仲良くやろうと思っていたのに結局こうなってしまったな。蔓を支配下に置くだなんて…。
俺はドアのすぐ横で壁に寄りかかる。中からはいつものように『あと5分…』とローズの眠たそうな声が聞こえる。だがいつもと違い今日は蔓が5分またないことだ。蔓が必死に起こそうとしているのかローズの『お願い…寝かして…』と言う声が聞こえてくる。
俺は思わず口角を上げてしまった。蔓…なかなか頑張ってくれているじゃねぇか。俺は蔓が起こせるなんて思っていねぇ。ただ部屋の外まで引きずってきてくれるだけで十分だ。
俺は腕を組んで目を閉じる。ローズを引きずる音があと少しで聞こえてくるような気がして内心ワクワクして耳をすました。だがまてど暮らせどローズを引きずる音が聞こえてこない。それどころかローズの眠たそうな声さえ聞こえなくなってしまった。
俺はため息をついてもたれていた壁から背中を離し蔓を引き戻そうと手をのばした。また嚇しをかけてやろうと思ったのだ。
だがその手元に小さな白い物体がピョコンと飛び出してきて俺は思わず手を止めた。
「ん?お前は…?」




