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配属先は犠牲聖女の護衛騎士  作者:
3 不健康聖女
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25/31

24 不健康聖女の1日

 3日ほどで熱が下がると、始めのドタバタが嘘のように静かすぎる毎日が始まった。

 ローズの起床は遅かった。時間に追われることのないスローライフだからか毎日昼過ぎに蔓にたたき起こされてやっと起きる状態だ。低血圧らしく何度も部屋から『今起きるから…』と声が聞こえては静になりまた蔓に叩き起こされるのを繰り返す。

 起きるとそのまま蔓に連行されるように温室へ向かい、植物達と(ひる)の挨拶をしながら植物をひとつひとつ愛でる。そうしている間に彼女の栗色の髪が蔓によって毎日かわいくセットされてゆく。この調子だと服も植物達に着させてもらっているのかもしれない…。

 しかしローズが来ると植物達が色めき合っているのが俺にも分かる。ローズが触れた植物達はみな生き生きと花を開花させ濃く色づき、沢山の実を実らせてゆく。構ってほしくてローズのドレスの裾を枝で引っ掻けたり実らせたフルーツを渡したり、蔓によってヘアセットが終わると我先にと髪に花を飾ったり…。とにかくみんなローズが大好きだ。

 そうして長い時間をかけて温室を一周すると植物達からのプレゼント(みつぎもの)をたくさん抱えて戻ってきて俺にそれを手渡す。俺はそれを使って昼飯を作るがローズは口を付けなかった。それは俺の料理が嫌なのではなく、温室を一周する間にたくさんのフルーツを食べさせられてお腹いっぱいになってしまっているせいだと本人は言っている。『採用試験の時のタルトは最高に美味しかった』とも…。

 俺が昼飯を食べている間、彼女は本を読んでいる。どうやら彼女は読書が趣味な様で毎日必ず一冊本を読む。その本はどれもみたことのない大きな分厚い本でローズの部屋にから持ってきた本のようだ。表紙にはキラキラとした宝飾がされていていかにも重そうだ。

 ローズは本を机に置きページをめくり本に没頭するが、その間も植物達の()()()は止まらない。ハーブティーを準備したり、時折目を休めるように促したり…。

 本を読み終わると窓から外を眺めていたがこれは新しい日課だ。デューイが作ったばかりの窓はもう冷気を発することもなくなり、俺の結界を解いてもローズが凍ることはなくなった。

 はめ殺しの窓に手を添えてヴァルデロスの国を見下ろす彼女はいつも悲しそうな顔をしていた。本当は見るだけでなく実際に歩いて触れて感じたいのだろう。

 夕方になるとまた温室に戻り植物を愛で、朝イチ(昼イチ)にやったことを繰り返す。もちろん俺の作った夕飯にはまた手を付けられないほどフルーツをたっぷりと食べる。

 そしてローズが風呂に入っている間に蔓がホットミルクやココアなどの甘い飲み物を準備する。なぜか眠る前は糖分がほしくなるのかおれの作ったケーキや焼き菓子を必ず食べたいと言う。出来れば甘いものを食べるのであれば寝る直前ではなく昼間にしろとは何度も注意したがこれだけはどうしてもはずせないらしい。

 そしてさんざん甘いものを食べた直後に7時前には自室に戻り、さっさと寝てしまうらしい。1日のほとんどを睡眠で過ごしている状態だ。

 植物達にとってローズは、手のかかる娘?尽くして貢ぎたい彼女?…とにかくダメ人間を作っているようにしか見えないがこの15年間の物心が付いた時からこの堕落した不健康な生活らしい。俺は心のなかで『普通のプリンセスであればもっと贅沢な暮らしをしているはずだ。執事やメイドの代わりを植物達がしているだけだ…』と心に言い聞かせてなんと我慢していた。

 …が、数日で俺の堪忍袋の緒は切れた。


 その日はとくにローズは起きるのが遅かった。蔓に強制的に起こされたローズの髪はボサボサのポヤポヤで絶対に前が見えていない状態だ。歩いていると言うより蔓になんとか支えてもらって引きずられ温室に向かわされていた。

 温室に入ると床にぺったりと座って重たそうな目蓋が何度も閉じる。蔓が何度も肩を揺らして小枝が頬をつつき起こそうとする。俺は壁に寄りかかりそれを眺めていたが蔓が起こすのを諦めたかのように起こすのをやめて強制的にローズの口にイチゴを放り込み食事をさせ始めたのを見て俺はついに我慢できなくなった。

 俺は半分…いや八割がた眠っているローズのウエストに腕を通しながら、

「おい、おまえいい加減にしろよ」

 俺はどすの聞いた声で言いながらひょいっとローズを肩に担ぎ上げた。熱を出したときに何度か彼女を抱き上げたがこの軽さにはやっぱり慣れない。

 百歩ゆずってプリンセスで聖女で国の保護対象だからそれなりに優遇されるのは分かるがこの生活は堕落しすぎで不健康すぎだ。蔓や植物達が俺を止めようとするがそんなの関係ねぇ!俺がこいつを叩き直してやる!

「もう見てられねぇんだよ!まずは普通の生活をおくれ!朝起きて3食の食事をとるんだ。限られた空間でも運動はしろ!ストレッチくらいなら出来るだろう?」

 俺はローズを椅子に座らせるとローズを救いだそうとする蔓を睨み付けて、

「てめぇらも甘やかしてんじゃねぇよ!早く野菜持ってこい!じゃねぇと温室内全焼させるぞ!」

と脅した。炎魔法使いは植物の天敵

なことくらいこっちは始めっから気付いてんだよ!


 蔓達が準備した野菜でサラダを作りベーコンを焼く。目玉焼きも作ってトーストも準備した。何度かローズに目をやったが完全に机に突っ伏して眠ってしまっている。

 あぁ…、本当にこの国唯一のプリンセスで聖女なのか?肩書きは完璧なのにこんなんじゃただの怠け者だ。

 俺は食事を準備し終えるとテーブルに並べると、ローズの背後から両肩を引いて体を起こさせると、

「おい、起きろ!食事をとるんだ!これ前部食えよ!!」

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