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配属先は犠牲聖女の護衛騎士  作者:
3 不健康聖女
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23/27

22 助けてやりたくて

 疲れたのは初日だけじゃなかった。

 次の日の夜にローズが高熱を出したのだ。

 植物達がフルーツを用意してくれたが何も口にできず、強制的に水を飲ましながら、

「まいったな…」

 俺も家族も熱で苦しんだことはない。熱が出ればヒーラーが治してくれるからだ。他国には聖水で治したりしている国もあるがヴァルデロスは魔法が発展している国だから基本的にみんなヒーラーに頼む。

 ヒーラーに頼めば高熱はすぐおさまり楽になる。完治までには少し時間はかかるが苦しさはすぐに取り除ける。

 だがここにはヒーラーいない。もちろん近衛騎士団には優秀なヒーラーが数多く在籍しているが、この部屋には入ることができない。

 さすがにずっとソファに寝かしておくわけにもいかないので部屋まで連れていってやろうとしたがどうしても俺をいれたくないのか、ぐったりしているくせにローズはそれを拒む。

 俺は頭をガシガシかきながらソファの上でぐったりしているローズを見おろし、

「今まで熱を出していたらどうしてたんだよ」

と問いかけた。

 ローズは顔を真っ赤にさせて苦しそうに息をし、少し呼吸を整えてから驚くほどか細い声で、

「寝てました…」

 俺は大きくため息をついた。デューイなら氷魔法で熱を下げることもできただろうか?いや、魔法を直接受けなくても凍りついてしまっていたんだ魔法で冷やされた瞬間に凍死しちまうな。

 もしかしたら俺の魔法を受けすぎたのか?俺が触りすぎたのかも知れない、とも思ったがそれは魔力をコントロールしながら触っていたから影響はないはずだ。実査しに確認してみたがローズの体に俺の魔力の痕跡は感じられなかった。

 額においた濡れタオルを交換しながら、

「看病なんてしたことねぇんだよな…。こういう時はどうしたらいいんだ?」

と呟く。

 だがこの部屋で俺の問いかけに答えてくれる者などいない…、と思ったが俺の横を細い植物の蔓がスルスルと這ってゆく。

 なんだ?今度は何をしでかそうとしているんだ?

 蔓はローズの部屋の扉を開けて中へ入ってゆく。俺は入ることを許してもらえないが蔓は入る許可があるらしいな…。これが信頼関係の差か、それとも人間と植物の差か?

 一応礼儀として部屋の中は見ないように背を向けたが、今度はズルズルとなにかを引きずる音がする。さすがに気になり振り向くと蔓は一冊の本を引きずっていた。

 俺が本に歩み寄ると蔓が差し出すように本を少し持ち上げる。

「俺に読めってことだな?えっと…『医学書』…?!おいおい待てよ!医学なんて魔法が弱い国でしか使われてねぇぞ?なんでこんな本がヴァルデロスにあるんだよ?」

 他の国では魔力が弱い人種しかいない国もある。聖水もあればいいが高値で取引されているから、医学やら科学っていうのが進歩しているらしい。しかしヴァルデロスには必要のないもの…、まぁ若干一名を除いては!

 仕方ない。今はとにかくこの『医学』とやらに頼るしかねぇな。

 俺は目次を開いて『発熱時の対処法』を読む。


[ 発熱時の対処法 ]

1,十分な睡眠をとる

2,水分補給をさせる

3,安静にする

4,冷やす


 俺は天を仰いだ。魔法が使えないって大変なんだな。もっと一瞬にして熱を消す方法ってねぇのか?!魔法なら短時間ですぐ治せんだよ!こんな辛そうな姿を長時間見てるのはさすがに…

「まってろよアイリス…、今治してやるからな」

 俺は必死にページをめくった。本当であればば『医者』が判断をして『薬』と言うものを処方してくれるらしいがあいにく『医者』なんて見たこともねぇ。

 俺は頭をガシガシかきあからさまにイライラした状態で、本を持ってきた蔓に、

「おい、『解熱剤』ってのはねぇのか?じゃなきゃ『風邪薬』とか?」

 すると蔓は情けなくしょげるように垂れる。俺は本を床に叩きつけるように投げ捨てて、

「使えねぇな!!」

と叫んだ。

 しかしその本は床に落ちる前に蔓がキャッチした。蔓は器用に葉を使いペラペラとページをめくるとあるページを開いて俺に差し出した。


[熱を無理に下げる必要はない]

ウイルスなどの病原体の増殖・活動を抑えて体の免疫を活性化させたりする働きがあるため、熱が出ても無理に熱を下げる必要はない。解熱剤を使用しても完治までの時間に大差がないことの方が多い。


 俺ハッとしてばつが悪そうに蔓を見る。イライラしすぎて髪をかきむしりボサボサになってしまった髪を書き上げて、

「すまない…、俺が一番冷静じゃなかったな」

と苦笑いして見せた。

 蔓はローズを助ける手助けをするためじゃなく、俺に『落ち着け』と言いたくてこの本を持ってきたのか…。植物に諭されるとは情けないな。

 俺は冷たい濡れタオルで彼女の頬を拭ってやる。大分汗をかいている。この本によると汗をかくことは体温を下げさせる効果があるようだから汗をかくのはいいことだ。辛そうに見えるが今は見守ってやるしかない。

「欲しいものがあったら言うんだぞ。なんでも作ってやるから」

 するとローズはすこしだけ目を開いて、

「飲み物を…」

と、またか細い声で呟く。

 俺はさっき強制的に飲ませた水の入ったグラスをとろうとするが後ろから肩を叩かれて振り向く。振り向くと蔓がグラスを差し出してきた。氷の入ったグラスには薄い黄色い液体が入っていた。

 また得体の知れないものをもってきたな…。

 匂いを嗅いでみる。ほのかに香る草の香り。昨日飲んだハーブティーとは香りも色も違うがこれもハーブティーの一種なんだろう。だが得体の知れない物を飲ますのは勇気がいる。俺は蔓に向かって、

「これ本当に飲ませて大丈夫なんだろうな?」

と聞くと、蔓は上下にコクコク頷いているようにと動く。

 まったく…器用なこった、ローズみたいに頷きやがって…。

 俺はソファに腰かけてローズを抱き起こすと彼女の口元にグラスをあてながら、

「飲めるか?」

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