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配属先は犠牲聖女の護衛騎士  作者:
2 小さな聖女

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20/22

19 俺が温めてやる

 鋭いトゲが俺の手に刺さる。くそ…地味にいてぇ…。だが俺は出来るだけ落ち着いて植物に話しかけた。

「今までお前らがローズを守ってくれてたんだろ?これからは俺も仲間に入れてくれ。俺は魔法も使えるし損はさせねぇよ…。

 もし俺がローズを傷つけたらその時はトゲで刺そうが毒をもろうが好きにしろ」

植物の反応をまつ。俺の勘違いならそれでもいいからローズの無事を確認したい!

 俺の言葉が植物に通じたのか固く絡み合っていた草玉がゆっくりとほどけていっくのを感じて俺は植物から手を離した。俺の思いが植物に伝わっみたいでよかった…。

 ゆっくりと草玉に穴が空いてゆき中が見えるようになってくると草玉の中でぐったりと倒れているローズが目には入り、俺はあわててまだ開ききっていない穴に体を滑り込ますようにして入った。

 ローズを抱き上げると氷のように冷たく、薄く開いた琥珀色の瞳は焦点が定まっていない。呼吸は浅く白い息を吐いている。

 だいぶ厚手のローブだったんだな…これは完全に防寒用だ。しかし俺の熱を流し込むときは逆に邪魔だ。

「こんな暑い部屋で凍死なんてさせるかよ…」

 俺はそう言うとローズのローブを脱がした。首もとからのぞく真っ白な透き通るような肌…だが綺麗と言うより凍っていいるような不安になるような青白さだ。

 ローズの頬に触れてみると氷のように冷たい彼女の肌からは微かにデューイの魔法の痕跡を感んじた。一番冷たさを感じるのは頬と手か…、デューイの魔法の痕跡もその2ヵ所が一番強く感じる。

 魔法が使えない彼女は魔法に対する耐性がまったくないのかもしれない。始めてデューイに抱きつかれた時に冷たくて炎属性の俺でさえ凍ってしまったことを思い出す。あの時はデューイがわざとしたことだが、デューイが魔法を使わず触れただけでもローズは凍りついてしまうのだろう。

「少し我慢しろよ…」

 俺はゆっくりと炎の熱をローズに送り込んでいった。普通の人間より魔法の影響を受けやすいのであれば一気に熱を流し込んでしまうのは危険だ。ゆっくりと慎重に流し込み様子を見るために彼女の頬や手、足に触れて体温を確かめる。

 だが彼女のドレスの裾を少しめくったり彼女の手を軽く握っただけで植物達が俺にトゲを向けてきやがる。下心なんてねぇよ!

 俺は虚ろな瞳のローズを見下ろして、

「護衛騎士顔負けだな…。だが今度からは俺にも心配させろよ?植物には出来ないことも俺が全部解決してやる…」

 ローズの青白い頬が少しずつ熱を帯び始め消えてしまいそうだった小さな呼吸は安定してきた。震えていた小さな体も震えが止まり焦点が合わなかった瞳も俺を見つめて意識がはっきりしてきたようだ。

 ローズは小さな声で、

「カデル…様…」

と、呟いた。

 ローズの声に安心したかのように植物達はするすると隣の温室へと戻ってゆく。あんなに狭いドアの隙間からよくこんなに大量の植物達が押し寄せてこれたと感心したが、よく見ると床やテーブル、そして丸太の椅子等の木製の物からも蔓や枝がのびていた様だ。加工されたとしても植物は植物と言うことか?

 最後に植物達はローズの髪についていたしおれた小花を抜いて新しい花を差して去っていった…。プレゼントか何かか?随分と尽くしてくれる植物達じゃねぇか!

 お袋の植物魔法とは違うな…。

 植物魔法はなにもないところから植物を出現させれるし攻撃や捕獲、盾にするが神聖力は元々ある植物が助けてくれる。

 魔法は術者が気を失えば使えなくなるが神聖力によって自由を手に入れた植物は動き続ける様だな。

 植物達がいなくなった部屋は元通りの質素な部屋に戻ると俺は暖炉に向かって手をかざし暖炉の炎を消した。こんなくそ暑い部屋にいたら逆に体をこわしちまう。デューイの作った窓は羽目殺しで開くことが出来ないし空気の入れ換えが出来ないのはこの部屋の欠点だな。

 俺はローズを軽々と抱き上げるとソファに寝かせる。女の子ってこんなに軽いのか、それともローズが特別軽いのか…?

「カデル様…、この事は…お兄様には…ハァハァ…どうか…内密に…」

 俺はソファでぐったりしているローズを見下ろして呆れたようにため息を付いた。

「おいおい、息も絶え絶えの状態で言うのがそれかよ?」

 俺は呆れながらもキッチンに向かって手を伸ばす。魔法で食器棚からカップを出してお湯を沸かしてお茶を淹れた。お茶と言ってもこの部屋にはハーブティーしかない。ハーブティーの淹れ方はよくわからないから適当だ。

 カップがふわふわと浮遊しながら俺の手におさまると、

「飲めるか?」

ローズはコクコクと頷いた。

 俺はローズの背中を支えるようにして起こしてやる。ローズにカップを手渡すと彼女は両手でカップを包み込み、

「魔法って…便利なんですね」

と呟く。

 俺が今やったのは簡単な生活魔法だ。魔法を少し習えば魔力の少ないものでも出来る簡単な浮遊魔法だが魔力の無いローズはこんなことさえ出来ないんだろうな。

「お前もしかして俺のことを避けてたのってデューイにチクられたくないからか?」

 ローズはコクコクと頷くとハーブティーを一口飲んだ。『ハァ…』と吐き出した息が白くないのを確認すると俺は安堵した。デューイの氷は肺まで凍らす…、凍らされた時は死ぬほど苦しいんだ。

「お兄様に触れられるといつもこうなるんです。ひどい時は溶かすのに何日もかかるんですけれど…お兄様にそれを伝えてしまったらお兄様を傷つけてしまうから…」

 おい、シスコン野郎!お前が一番危険人物じゃねぇかよ!!

 俺は頭をガシガシかいて、

「安心しろよ!俺は最高の湯タンポだ。いつでも俺がデューイの氷を溶かしてやるよ!」

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