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配属先は犠牲聖女の護衛騎士  作者:
2 小さな聖女

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18 俺が選ばれた理由

 俺は大きく深呼吸をしてからドアノブをもう一度にぎり直す。扉ごと燃やしてしまうのは簡単だが他の物も燃えたら後が面倒だ。だからと言って扉を蹴り壊してしまったらローズを怖がらせてしまうかもしれない。

 扉を壊さないように手加減し、あまり恐怖を与えないように開く…それくらいの芸当、俺ができないわけねぇだろ?めんどくせぇけど…。

 俺はゆっくりっとドアノブをまわし始めた。力を込めればぎちぎちと何か抵抗を感じるがまわせないわけではない。

 向こうからドアノブが回らないように必死に抵抗しているような感覚…、ローズが言うように鍵ではないみたいだ。だがあんな華奢なローズが向こうで必死にドアノブを押さえているとも思えない。

 俺の腕の筋肉が盛り上がっているのが服の上からでもわかる…。鍛えといてよかったぜ。普通の人間なら回せなかっただろう。俺はドアノブをまわしきると一気に引いて扉を開いた!

 開いた瞬間にローズと目があった。またあの白いローブを着て、『げ?!』と言わんばかりの顔はひどく青白く感じ震えていた。そんなに怯えなくてもとって食ったりしねぇよ!!…俺は呆れたように、

「俺がそんなに恐いのかよ?」

だが俺がそう言った瞬間、温室から草木が一気に延びてローズを包む…。

「な、なんだ?!」

 繭玉ならぬ草玉か?!沢山の蔓と枝がローズを一瞬にして包み込むのを見て俺は思わず手を伸ばし、

「ちょ…、まてよ!」

しかし俺の声はむなしく部屋に響く。

 草玉はずいぶんと固く編み込まれてしまいリビングに鎮座している。俺はまた大きくため息をつき髪をガシガシかいた。

「まったく…、困った聖女様だな」

 俺は部屋に目をやった。小さなリビングキッチンはこの一瞬で隣の温室よりも草木に覆われていて、これじゃぁジャングルだ。これが魔法で操ったわけではなく神聖力によって自由に動けるようになった植物が自主的にやっているのが驚きだ。

 俺はまたさっきのドアノブの様に力ずくでこの草玉をこじ開けるか、あるいは燃やすかを考える。だが燃やしたらそのまま中のローズまで丸焼きにしてしまうので後者は却下だ。デューイの氷を溶かすのとは違ってここの植物はよく燃えそうだしな…。そうするとまた力ずくでこじ開けるしかない。

 俺は草玉に触れた。しかし草玉がギュッとさらにきつく絡みあったのを感じて俺はふと手を止めた。

 そう言えばローズは魔法使いじゃなかったことを思い出す。神聖力を使うやつを見るのが始めてだからどうしても忘れてしまうがローズは植物は友達であって操っていないと言っていた。と、言うことはドアノブを固定したのもこの草玉を作っているのも全部植物の意思ってことか?…植物達は俺からローズを守ろうとしているのかもしれない。

「俺なんかよりよっぽどこいつらの方が護衛じゃねぇか…」

 ローズとの関係性構築のためにはまずは植物達と仲良くなるところからかも知れねぇな。俺は一度手を下ろすことにした。

 だからと言ってこのままにするわけにもいかないので草玉に向かって出来るだけ優しく話しかけてみることにした。

 目指すは植物との和解だ!俺が敵ではなくお前らと同じローズを守りたい者の1人であることを植物に理解してもらおう。

「あのさ…、もしローズが俺に慣れてくれてちゃんと護衛させてくれたらローズは自由に外を歩けるようになるんだ。このままずっとこの部屋に閉じ込められてたらかわいそうだろ?」

 すると草玉を形成していた蔓や枝から大量のトゲが出現した…。

 おいおい…植物達はローブを外に出したくねぇのかよ。植物にとっても外に出るのはいいことだろう?光魔法で照らされてるって言ったって自然光には敵わねぇんだから。植物の癖に束縛が激しいんだよ!!

「めんどくせぇな…」

俺はシャツの首元のボタンを外した。

 気を遣ってばかりいるのも始めてだから本当に疲れる。さらに隣が温室なせいか暑くてイライラしてくる。護衛騎士として剣を振るい派手な炎魔法で戦うのを想像していたが、実際は植物にトゲを向けられて優しく話しかけて和解しようとしている…、俺はいったい何やってんだ?

 そこで俺は気がつく。炎魔法を使う俺は熱さに強い、だからあまり暑さは感じない体質だ。それなのに俺が暑くてイライラしている?いくら温室は湿度が高いと言っても炎ほど暑くないだろ?!

 俺は部屋を見渡す。今は草木が生い茂ってしまいジャングルの様だが元々の間取りを思い出しながら歩みを進める。一応、いつ植物達に攻撃されても平気な様に用心しながら…。

 最初に温室へと続く扉を確認しに行く。植物を避けて扉に触ってみるが熱は感じないし扉の隙間からも感じなかった。

 温室の熱や湿気は他の部屋に影響を及ぼさないようにしているのだろう。だからと言ってキッチンも異常はない…。ガスのつけ忘れや料理途中だったわけでもない様で安心する。

 と、すると他に熱が出るものと言えば暖炉だ!確かデューイ達と話をしていたテーブルの近くに暖炉があったはずだ。

 俺はまた用心しながら歩く。暖炉に近づくにつれ暑さが増し、自分が汗ばんでいるのを感じる。こんなに熱いと感じるのは久しぶりだぜ。

 暖炉のまわりは他の場所より植物が溢れていた。どうやらここを隠したいようだな?だが見せてもらうぜ?

 俺は草木を掻き分け暖炉の前まで来ると驚きで足を止めた。

 植物達がせっせと薪をくべて、大きな葉が扇のように風を送っている。植物にとっては薪を作るもの薪をくべて燃やすのも、風を送り炎を強くしてこの部屋に熱を送るのも全てが自殺行為のはずだ。

 魔法で操られているわけではない植物達が喜んでこんなことするわけがない…全てはローズの為なのか?ローズの為に暖炉で火をおこし、俺でさえ暑く感じる部屋にしている…?これは絶対に非常事態だろう?!

 俺は急いでローズが入っている草玉に向かった。俺の長い足なら大股ですぐにたどり着ける。

 まだトゲで俺を威嚇し続けている草玉に俺は迷いなく掴みかかり、

「おい!今すぐローズを出せ!お前らの主人は俺が温めてやる!俺の炎魔法はデューイの氷も溶かせるんだよ!」


 俺はなんで気がつかなかったんだ?!デューイは俺に『最高の湯タンポ』になれと言っていた。炎属性の俺が熱に対して耐性があるように、デューイが寒がりで湯タンポが必要な訳がないんだ。寒がりなのはローズで、俺と言う名の『湯タンポ』が必要なのは彼女だ!

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