14 ローズの正体
ローズはにっこりと微笑んだ。妖艶なデューイとは違うかわいらしい笑顔に妙に癒される。
だがその横を見るとローズを見てデレデレしているデューイ…。こう言うのをなんて言うんだっけなぁ…、あぁ『シスコン』だ!俺の妹がもし生きていたなら、俺もデューイみたいになっていたのかもしれねぇな・・・。
ローズは俺を見上げる。小柄で椅子に座っていてもだいぶ体格差を感じる。
「改めて自己紹介をもう一度…。私、ローズ・ヴァルデロス。今年15歳になります」
「ローズはね、さっきも言ったが正真正銘ヴァルデロスの血をひく直系のプリンセスだ。だけどね、僕もイエンツォおじい様もローズの王位継承権は辞退させるつもりでいるんだよ。もちろんローズもそのつもりなんだ。彼女が成人となる18歳になったらその手続きを進める。ただでさえこの国の王は重圧もすごいし責務もある…。それをローズに背負わせる気は僕にはないし、僕が国王になることに文句のあるものはいないだろ?」
デューイはそう言うとテーブルの上でローズの手を優しく包むように握った。ローズはデューイを見つめて、
「当たり前ですわ…魔力のない私には王位を継ぐ資格等ありませんから…」
「ちょ、ちょっとまて!!今『魔力がない』って言ったか?!」
俺は思わず立ち上がりその勢いで丸太の椅子が転がる。
「ヴァルデロスだぞ?!代々強力な魔力を受け継いできたヴァルデロス一族の…しかも直系だろう?…魔力がないって…」
ローズはコクコク頷く。デューイも確かコクコクと頷く癖があったな…。こういうところは兄妹同じ癖なのか?
「私には魔力はまったくありません。生まれた時からこれっぽっちも持ち合わせていません」
俺は拍子抜けした…、今までの常識が全て覆ったのだ。そしてヘナヘナと椅子に座り、
「マジか…」
んッ?!俺さっき椅子を転がしたよな?!なんで俺今、椅子に座ってんだ?
俺は慌てて自分の座っている椅子を見た。倒れていたはずの椅子はきちんともとに戻り俺はそれに座っている。よく見ると椅子に植物の蔓が絡み付いている。どうやらそのツルが椅子をもとに戻してくれたんだろう…。その蔓がゆっくりとほどけてゆくのを見ながら、
「これはローズの植物魔法じゃないのか?」
ローズはキョトンとして、
「植物さん達はお友達で色々助けて下さっていますが魔法ではありません」
かわいいなそのキョトン顔、琥珀色の瞳に吸い込まれそうだ…って違う!!今はかわいさに目をひかれる時じゃねぇ!
「植物魔法が使えている訳じゃないのに植物を操っているのか?」
するとローズは頬を膨らます。白い透き通るような肌だが頬はほんのりとピンクがかっている。柔らかそうなほっぺただな…思わずつつきたくなるがことはできるはずがない。そんなことしてしまったら隣のシスコンに殺される。
そして案の定デューイが愛おしそうにローズの頬をつついて
「こらこら、あんまりかわいい顔しないの!かわいい顔はお兄様にだけ見せろっていつも言っているだろう?」
ちょっとそこのシスコン野郎黙っていてくんねぇかな?これ以上俺が信頼して尊敬していた王子としてのデューイ像…、いや友として10年間そばにいたお前のイメージを壊さないでくれよ!!
ローズは少しふてくされた様子のまま、
「先ほども言いましたよね?植物さん達はお友達です!操ってなどいませんよ」
「じゃぁ魔法も使わずにこの植物達は自力で動いてるってことか?」
俺が聞き返すと急にデューイが真剣な顔になる。テーブルに肩肘をついて、
「いいかい、カデル。ここからは超極秘事項だ。もちろんローズは存在事態が極秘だかが君はここで見たものも知り得たことも全て他言してはならない。墓場まで持っていくんだ、いいね?」
俺はデューイの威圧感に押されるようにして
「わ…、分かってるよ…」
するとローズはデューイが握っていた手を空いている手で撫でながら
「お兄様、心配は入りません。カデル様は裏切る様な方ではありませんよ。審判の門でもそれは証明されているではないですか?それに私にはカデル様が綺麗な心の持ち主であることが分かっていますから…信じてください。」
『審判の門』…ヴァルデロス魔法アカデミーの門か…。邪な心の者は通さない門だ。
確かに邪な心は持ち合わせていないことは確かだな。『綺麗な心の持ち主』と言われるとちょっと気恥ずかしいが…。しかもローズとは会ってまだ数十分と言ったところでそんなに信用してくれるとは嬉しいじゃねぇか、逆にデューイは10年の付き合いなんだから俺のことをもう少し信じろよ!
デューイはまたローズに優しく微笑みかえし、
「分かっているよ、ローズ。僕はね、世界中の誰よりも君を信用しているんだ」
「お兄様…ッ♡」
…頼む、頼むから兄妹でラブラブするの止めてくれ!!見ている俺はとっても複雑な気持ちなんだ!今まで信頼し、命をかけて守ろうと誓っていたデューイがこんなデレデレのシスコン…、いやシスコンなことは別に悪いと言っているわけではない!だが最低限王子の品格だけは保ってくれ!人前では!!!
俺の願いが通じたのかデューイはまた真剣な表情に戻り、
「ローズは魔法が一切使えない。現代のの魔法社会では魔力を持たない人間など存在しないしどんな魔力の少ない人間だって簡単な生活魔法程度は使えるがローズは例外でそれさえないんだよ。彼女が使えるのは『神聖力』だ」
「し…神聖力だって?!!」
俺はまた叫んだ。俺は今日いったいあと何回叫べばいいんだ?神聖力…ってことは…、神聖力ってことは…!!
衝撃的過ぎて俺は自分でも口を情けねぇくらいパクパクさせる。言葉が出てこない…言葉を失うってこういうこと言うのか?
そんな俺の代わりにデューイはコクコクと頷いて告げた…、
「ローズはこの国、ヴァルデロス王国唯一の聖女だ」




