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配属先は犠牲聖女の護衛騎士  作者:
1 護衛騎士誕生

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12/18

11 採用試験

 俺は誓いをたてたその日から休む暇がなかった。

 花嫁…じゃなくてデューイの求める最高の人材になるためのヴァルデロスのバックアップはすごかった。朝早くから城のキッチンで料理の仕込み、昼はヴァルデロス魔法アカデミーの授業を受けて授業が終わればヴァルデロス剣術アカデミーで個別に剣術を習い毎日筋肉をいじめぬいた。それが終わればまた夕方から城のキッチンへ行って料理を習う…。

 帰宅は毎日夜遅かったがイエンツォ様のバックアップはありがたいもので道中は城の馬車での移動だった。俺の睡眠時間はそれで確保できたし、城で作った料理は持ち帰って食べることもできたからいろんな意味で美味しかった。

 忙しくはあったが親父もお袋もこの優待遇に泣いて喜んだ。

 だが当の本人である俺は本当に必死だった。なにしろ剣を握るなんて始めてだったし母親の料理なんて手伝ったことはない。繊細さもないし器用でもない。そして俺の身体はなかなか筋肉がつかなかった。城の料理人が色々アドバイスしてくれて食事面から見直してトレーニングをしたがずっと細マッチョ止まりだった。

 だが諦めるわけにもいかない。デューイが期待してくれている、この国の唯一王子が俺に期待し、国王のイエンツォ様が投資をしてくれているのだ。その期待を裏切るわけにはいかなかった。

 そして17歳の冬、春になれば卒業となるこの年…。俺はヴァルデロス城で卒業前に採用試験に望んだ。今まで身に付けたものをイエンツォ様とデューイ、そして城の大臣連中の前で披露するのだ。はっきり言ってヴァルデロス魔法アカデミーの卒業試験より遥かに緊張した。


 最初に疲労したのはパワーだった。俺の体は相変わらずムキムキボディにはなっていなかったが190センチの高身長に成長しそれなりの筋肉はついた。厚い胸板に引き締まった体ははっきり言って女受けするんじゃないか?…まぁそんなことはいい、とにかく屈強なムキムキボディではないものの、俺は5人の男を抱えて走って見せた。

 次に疲労したのは剣術だった。近衛兵の剣士相手に苦戦はしたもののなんとか勝利をおさめたのだからこれは褒めてもらいたいくらいだ。なにせ近衛兵の剣士は元々剣術の才能に恵まれたヴァルデロス剣術アカデミーの卒業生なのだから。

 次はデューイの氷を溶かす炎魔法を披露した。これはプレッシャーがすごかった。なにデューイは実際に召使の1人を凍らせたのだ。もちろんその召使に害の無いようにイエンツォ様が氷にたいしての保護魔法をかけたが、俺はその召使が火傷しないように細心の注意を払って炎魔法でその氷を溶かさなければならなかった。

 と言っても、今の俺にとっては難しいことではない。俺の炎のコントロールは完璧だ!イエンツォ様の前と言う緊張感が少し邪魔はしたものの俺は召使を傷つけること無く、髪の毛1本焦がさずに召使を救い出した。

 そして最終審査はスイーツ作り…。ってこれが最終審査かよ!!!!って思ったがなぜかデューイもイエンツォ様も大臣連中も一番目を光らせていやがった!そんなに…毒もられるのか?!いや、三大欲求のひとつだし、飢え死には魔法じゃ防げねぇしな。わからなくもないけどよ…。

 俺はお題であるフルーツタルトを作った。食材は全て城で用意された最高の食材。俺は完璧なタルト生地を焼いてカットしたフルーツを綺麗に盛り付けた。フルーツは最高級なんだからおれはタルト生地を頑張ればいいのだ。

 俺は城のパティシエ顔負けの完璧なタルトを作った。今まで教えてくれていた城のパティシエも頷いていた出来映え…。完璧すぎだろ?!!!

 俺はホールのタルトを切り分けてイエンツォ様とデューイ、そして大臣連中に出した。大臣連中は食べ瞬間に口々に「なんと美味しいタルトなんだ!」と絶賛した。イエンツォ様は甘いものがあまり得意ではないらしいがそれでも数口食べると頷いてくれていた。デューイも頷いてくれていると言うことはこれはもう合格間違いなしだろ?

 合格と言われた訳でもないのに俺の口角は少しだけ上がっていた。合格を確信した笑みではなく達成感からくる笑みだった。この5年、自分で自分を褒めたいくらい本当によく頑張った!そして最高の結果を残せたと思う。しかしそんな俺に大臣連中の中からの声が飛ぶ…。

「このタルトは確かに美味しいですが、それは元々フルーツが美味しいからですよね?」

「はぁぁ?!!」

 有終の美に浸っていた俺は思わず素が出てしまった。やべぇやべぇ…イエンツォ様の前だった。普段デューイともフランクに話しているせいか礼儀がなっていないのも言葉遣いが悪いのも自覚しているがここは猫を被らなくてはならない場所だ。俺は小さく咳払いをいて、

「俺としては完璧なタルト生地を作ったつもりだったんだが、確かにフルーツは最高級のものだから反論ができないな。よかったら他になにか作ろうか?」

 俺がそう言うとまた同じ声が聞こえた。若い女の子だ…

「ではアップルパイを作ってください。パイ生地は難しいですからね、判断材料になります」

 俺は声の主を探した。声の主は白いローブ姿でフードをを深く被った小柄な女だった。フードのせいで顔は見えないが大きなローブに身を包む者は魔女か研究者なことが多い。しかも一番下の席に座っていると言うことは位の低い大臣なんだろう。声も若いしかわいらしい…大臣なりたてか?王も王子も他の大臣連中も俺の作ったタルトに納得してるって言うのに一番下っ端の大臣がケチをつけるとはな!

 だがこれは採用試験だ。しかもデューイの側近か護衛騎士としての採用なのだから大臣の1人でも不合格を出したら採用されない可能性だってある。俺は腕をまくって

「わかった!アップルパイだな…。すぐ作るから待っててくれ!」

俺はそう言うと用意された食材の中からリンゴを手にした。沢山用意されたリンゴの中からアップルパイに一番適したリンゴを選ぶ…、そんなこと今の俺にとっては朝飯前だ!

 だがそんな俺に向かってまたあのかわいらしい声が飛んできた。

「あとパンケーキも!シロップを沢山かけてくださいね!それからチュロスも!シナモンシュガーたっぷり!それからて」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれよ!おまぇそれ食いてぇだけだろ?!」

 俺が思わず注文を遮ると一気に静まり返った。やべぇ…また言葉遣いを間違えちまった。するとローブを被った大臣は腕を組んで頬を膨らまし、

「全部作ってくれなかったら私は合格を出しません!!」

 俺はたじろぐ…。マジか?!まるで子どもみたいなことを言いやがって!!作るのか??本当に?

 俺は助けを求めるようにデューイに目をやる。だがデューイはにこやかに微笑み『作れ』と顎をしゃくる。デューイ…、おまえ絶対この状況を楽しんでるだろ?!!!俺は髪をガシガシかいて

「わかったよ!なんでも作ってやるよ!」

 俺は捨てぜりふを吐くようにして調理に戻った。アップルパイとパンケーキとチュロスだぁ?!ついでにプリンアラモードもつけてやるよ!!


 そして採用試験は文句のつけようがない結果に終わった。俺は注文されたスイーツを完璧に作ったのだ。甘すぎるスイーツの山にあの女の大臣以外は胃もたれし手がと待っていたが、女の大臣は完食していた。

 もちろん翌日にはデューイから合格を告げられ、俺ははれて卒業と共に家を出て城で働くこととなった。採用通知書には『王族護衛騎士兼料理人』の記載…。デューイの望む人材になれたってことだろうが、別に料理人とわざわざ書かなくてもいい。護衛騎士の仕事の傍ら料理はしてやるから…護衛騎士の記載だけでいいだろ?これじゃぁ両方メインじゃねぇか!!!

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