10 必須スキル
「それでね、僕が求めるスキルをあと5年で出来るだけ…、可能なら全て身に付けてほしい。必要であれば選択授業や部活動を活用してくれ、君が望むなら専属講師をつけてもいい。もちろんそれにかかる費用はヴァルデロスの現国王イエンツォおじい様が負担する」
おれは、デューイの言葉に俺は驚きすぎて腰を抜かしそうになった。
いや腰は抜かさなかったが実際魔力が少し漏れて顔付近で小さな火花が散った。やべぇ、驚きすぎて魔力が漏れちまったぜ。危うく芝生を焦がすところだったぜ…。
「い、い、い、い、い、い、イエンツォ様が?!平民の俺なんかに?」
デューイは俺の反応を見てキョトンとする。久しぶりに見たぞ!そのかわいすぎるキョトン顔!!最近無駄に妖艶さに磨きがかかっていたから忘れていたがそんなかわいい顔まだできたのかよ!!
「おや?不思議がるようなこともないだろう?君は12歳の時点で近衛兵の採用試験合格ライン程の実力はあるよ。まだまだコントロールに課題はあるが、魔力量が多いからコントロールを覚えるにはその分時間はかかるだろう。だけれどそれは卒業までに身に付くはずだ。これほどまでの逸材を探すのも難しい話だよ。だからヴァルデロスがバックアップするのは当たり前のことさ。君自信も近衛兵士か護衛騎士を望んでいたんだろ?ならばイエンツォおじい様にとっては当たり前の投資だよ。」
「そ…そうだけどよぉ。まだ卒業もしていねぇこんな子どもに...いいのか?」
「卒業してからでは遅いんだよ。君は卒業と共に護衛任務についてもらいたいと僕は考えている。もちろんイエンツォおじい様もそれは了承している。形式上採用試験は実施されるがそれに向けて必要スキルを身に付けてほしい」
俺は頭をガシガシかく。
俺にとっては願ってもない申し出だ。断る理由はない。だが…こう言う大事な話ってこんな芝生の上で話すようなことなのか?
「も…もちろんその話は受ける!だがな…」
俺はデューイに顔を近づける。
デューイは俺と比べると小柄だ。だからこそ女のような色気があるんだろう。座っていても俺はデューイを見下ろすかたちになった。
「そう言う話はちゃんとした場所で伝えろよ!芝生の上じゃなくて」
デューイはまたキョトンとする。
風になびくブルーを帯びた銀色の長い髪を耳にかけてデューイは上目遣いで
「それじゃぁ…まるでプロポーズみたいじゃないか…」
「なッ!!!!」
俺は顔が真っ赤になるのを感じた。
そんなかわいい上目遣いて『プロポーズ』とか言うから俺達が付き合っているって噂が流れるんだろうが!!!!!
デューイはクスクスと笑うと
「さて、冗談はこれくらいにしよう。別に場所なんてどうでもいいだろう?それにだれかに聞かれて困る話ではないんだよ。僕が君に身に付けて欲しいスキルはいたって普通のことで極秘事項でもなんでもない」
俺は落ち着くために何度か深呼吸をした。
俺はもしかしたら普通の恋愛はできないかもしれない。こんなにかわいくて綺麗で気心の知れた無駄に色気のある男が隣にいたら女にドキドキとすることなんてなさそうだ。
「わ〜たよ!!それで?俺は何をすればいいんだ?」
俺がふてくされたようにそう言うとデューイは満足した様子で微笑み、
「一つ目はもちろん、僕の氷を溶かす炎魔法を習得すること。だがただ溶かすだけじゃダメだ。溶かした拍子に火災や人に火傷を負わせてしまっては意味がないから、そこのコントロールはできるようになってもらいたい。この条件は卒業までに必ず習得してくれ」
俺は腕を組むと頷いた。
俺は今までデューイの氷を溶かすことしか考えていなかったが確かにデューイの氷を溶かして人を傷つけてしまっては意味がない。この必須条件はなかなか難解だ。
「2つ目は魔力だけでなく剣術も身に付けて欲しい。僕も幼少の時から剣術は身に付けている。魔力切れや魔法が使えない環境は存在するし君のように炎魔法を使う者は発火性のガスが充満している環境下での魔法の使用はまわりの人間を危険にさらすし、君自身にとってもよくない。だから魔法ばかりにたよらず剣術も習得してくれ。それと平行して体も鍛えてほしい。僕と一緒に行動すれば人命救助をする場面も多いだろう。力はあるに越したことはない」
「なるほど…、確かにそうだな。1人や2人…いや5人だって軽々と担げるぐらいパワーをつけてやるよ!」
俺は右腕の袖をまくり力こぶを見せた。
魔法のことばかり考えていた俺の腕は細くて力こぶなんて無いに等しい。12歳の少年らしいといっていい体つきだが卒業する頃には筋肉ムキムキになってやるぜ!!デューイは満足そうに微笑むと、
「頼もしいね。…それから最後にもうひとつ…これが一番大事なんだけどね。料理を覚えてくれ!特にスイーツだ!タルトにアップルパイ、マカロンと…」
「ちょちょちょちょちょちょ、ちょっとまて!!」
俺は慌ててデューイの話を止めた。
料理?!スイーツ??屈強なムキムキボディになって料理をする俺を想像する。…護衛騎士に必要なのか?!
「本気で言ってるのか?俺に…スイーツ作れってか?!」
俺は思わずデューイの両肩を掴んでデューイの目を見つめた。
ブルーサファイアの瞳が俺に訴えてくる『本気』だと…。
「僕に毒をもろうとする不届き者はいるんだよ。王子として他国に出向くさいに一番困るのは食事なんだ。しかし君が料理を覚えてくれればその心配は無くなる。君は炎魔法も使えるから料理をするに困らないだろう?」
「『湯タンポ』の次は俺を『コンロ』代わりにする気かよ!!」
「スイーツが好きなんだよ!!特にフルーツをふんだんに使ったタルトには目がない!
スイーツ男子なんて今の時代、珍しくないだろう?もちろんスイーツだけじゃなくて栄養のある食事も作れるようになってくれ。肉や魚もいいが出来るだけ野菜を多く使って欲しい。朝は野菜スープを毎朝飲んでいるんだ。栄養もさることながら美容のことも考えてくれよ?コラーゲンとか…、僕はあんまり詳しくないんだけどね、美容には気を使って欲しいんだ」
言っちゃったよ…『美容には気を使え』って…もうそれは自分が綺麗なことを自覚している発言だろう?癪に障るが、理解できない内容じゃない。毒は優秀なヒーラーがいれば毒消し可能だが四六時中一緒にいるのは難しいだろうし、毒を体内にいれる食事は無いに越したことはない。
「わ、わかったよ。料理…覚えればいいんだろ?」
かくして俺は完璧にコントロールされた魔法を使いこなしムキムキボディの最高のシェフ?パティシエ?になる決意をした。そんな俺にデューイは冗談交じりに、
「あ、それからこれは必須じゃないけど掃除は最低限できるようにね。汚いのはあんまり好きじゃないから」
えっと…、俺がなるのって護衛騎士?シェフ?それとも召使?…もしかして俺がこれからするのって花嫁修行?




