38話 ジオ 秘密合議と仲間割れ
ローテではニーニャ回ですが。作者は今、パンツの話をしたくないのです!
全ヨーロッパ女性を虜にした絹の下着が、脱げずにもだえるニーニャ。ハァハァ・・・
秘密合議が、開かれた。クンストマイスター、カスパル、リーンハルト、ツェメントの他、高弟が数名。そこで今後の方針が決定された後、僕が呼ばれた。
「修道院秘密合議により決した次期クンストマイスター、ジオカトロ・ジオルケラーだ。皆の者、眼盗王の眼力、ゆめ疑うことなかれ」
一同が、ぐっと拳を握りしめた。誰も僕個人を認めてはいない。僕はハイリゲスの奥義を継承し、それを皆に伝授することが義務なのだ。与えられるクンストマイスターの地位は暫定でしかなく、高弟達が代償たるハイリゲスを習得した後は、廃位される密約である。
予定は少し狂っている。
クンストマイスターの健康回復は、限界に達した。精進潔斎とは名ばかりの、奉仕役の女性との寸止め行為によって体内循環を高める、つまりは房中術により一定の成果は得られたものの、ある者から資金援助を得た女性は、自由を取り戻して去ったのだ。
そこで最終手段として、シュテルクングスミッテルをカスパルが用意する。いわゆる強壮剤だが、その濃度は強烈なものらしく、クンストマイスターのその後の健康・生命は保障されない。危険な劇薬の処方が薬方ギルドに発覚した場合、カスパルの薬師としての資格は保障されない。
それでも我々は、躊躇なく急がねばならない。
女性に資金援助をした者の名は、ディアロゴス。そう、僕が良く知る彼。ディーは急速に反体制派の勢力を修道院内に築き上げた。ディアブル一家と自称している。目的は、乗っ取りか独立か定かではないが、もはや公然とクンストマイスターの意に逆らう集団と化しており、海峡城の騎士団の後援もとりつけている。
修道院のクンストマイスター派は、最終奥義を門下に広めることによって求心力を取り戻さねばならない。
ハイリゲスは我が身にたくわえた太陽の力を、強力な体内循環を駆使することにより燃やす奥義。習得の絶対的な難易度は高いが、修道院の修行者ならば、素養も修練もすでに十分であり、問題ない。体力的・健康的に衰えたクンストマイスターが、教授のために連発披露できないことが問題なのだ。その役を僕が担う。
そして反体制派を圧するなり、放逐するなりした後は、人類の敵に挑まねばならない。
突如現れた魔人。人類の防御拠点の奥深くに侵入できる彼らを、野放しにはできない。魔人ブラウブリッツとやらが、彼の館で待つと言い放ったそうだが、そこに早期に侵攻しないならば、どのような干渉が起こるかわからない。
魔界に侵攻するためには、まずはヴェルトデアデモネン・アオスヴァイヘンという技を習得せねばならない。使い手であるリーンハルトは最初タネあかしをしぶったが、一瞬だけ魔界に入り込むことにより、人間界の障害物を回避して移動する技である。
その習得のためには、魔障が必要である。魔障とは、魔界の干渉により生じた障害である。簡単に言えば、魔物から受けた傷や障害があること。母が撒いた灰に眼を焼かれ、邪眼が巣食っている僕は、魔障があると言える。魔障を受けた者は、人からむしろ魔人に近い存在となり、魔界の門を叩く資格が与えられるのだ。
門を叩き、技で入り込み、その後は魔界から弾かれないように耐える。そうして初めて魔界に侵攻できる。一体何人を送り込めるだろうか。数人の手練れを送り込むことさえ至難であるのに、ブラウブリッツを打倒できるだろうか。
僕は引きこもっていたため、魔人を見ていない。巨大な敵、ままならぬ我が身。支えてくれた彼女には、愛想をつかされようとしている。
強くなれば、全て解決できる。そのための力はすでにある。だが僕は、それに覆いをかける。ハイリゲスの習得にしか、それは使わない約束だ。たとえ道半ばで倒れようとも、僕は、僕の努力で強くなりたい。
秘密合議の終わりに、クンストマイスターが宣言した。
「今宵、城外にてハイリゲスを打つ。披露するのは、予定と異なり我が一派の高弟のみとなるが、我が修道の最後の輝きを見せてくれよう。抜けがらとなった我は、波打ち際にでも打ち捨てよ。後は、頼む」
「我らが師よ、我らに思慕の念が無いとは、あまりのおおせよう。たといお体は意に任せぬ状態となろうとも、我らに変わらぬご指導を下さいますようお願い申しあげます。お世話を厭うものなど、この場におりませぬ」
高弟の一人の言に、うなづいてクンストマイスターは退出した。
「さて。夜まで時間があるが、ヴェルトデアデモネンの件はどのように習得する。眼帯をしていたのでは盗めまいに」
リーンハルトが話しかけてきた。魔障持ちの僕が、まずは習得候補者だ。リーンハルトは僕の実力を疑っているし、眼力で奪われるのも癪だと思っているようだ。
「不本意でしょうが、曲げてご教授を。全ては魔人討伐のため」
「眼力に頼らずに、お前ごときが習得できるものか、非才の分際で!」
僕の目に、たくさんの技を盗まれた高弟ツェメントが、嫌味を言って来た。彼には頭が上がらない。調子に乗っていた僕が、恥ずかしい。だが、なればこそ自力で習得したいのだ。
「それよりも、だ。魔障をよこすがいい。お前はすでに魔人に近い存在。お前が儂らをちィっと傷つければ、それで魔障条件は満たせるのではないか?条件さえ整えば、リーンハルトの技ごとき、たちどころに習得して見せよう!」
クンストマイスターを敬愛していた高潔な高弟が、一転して信じられないような下品な顔つきで言い放った。リーンハルトの端正な顔がゆがむ。
「何ィ、魔障なしとは、貴様が魔物と戦いもせず臆病風に吹かれていた証拠ではないか!」
「たまさか魔物と遭遇し得たからと言って、他者を間抜け呼ばわりは、聞き捨てならん!!」
リーンハルトの一言に、終始黙りっぱなしだった別の高弟が、怒髪天の様相となった。まずい、クンストマイスターがいなくなってすぐに、仲間割れとは。
「魔障の件、試してみましょう!まず、ナイフで軽く・・・」
「そんなんですむわきゃネーだろうガッ!魔障とは、一生残る大怪我だ!!」
リーンハルトがキレた。でも、高弟2人は疑ってかかる。
「美青年のリーンハルトちゅわああん、いったいどこにお傷があるんでしょう?そんな綺麗なお体で、うらやまCといつもあたくし達、羨望していたのですのに」
「俺をカマ友扱いするな・・・ついていけん」
下品でオネェな高弟は、いかつい高弟にまとわりついて同調を迫ったが、不発だった。
リーンハルトは背を向けると、ぺろんと尻をまくって出した。
「ぶ、ぶわっはっは!た、たしかに、一生モノの大怪我だ!」
「ひいい、アヒイィイイ!リーンハルトの尻が、リーンハルトの尻が、まるで大中小の3つに!」
二人は、抱き合って大爆笑となった。右の尻に大きく爪痕が走り、割れている。憐れリーンハルト・・・。たぶん、子供のころからの古い傷だ。
「こいつらの尻も、3つにしてやれッ、ジオ!!」
それは、いいかも。怪我を笑うなんて趣味が悪い。魔物になすすべなく追われた子供の頃の傷を抉る、無神経な笑い。僕がクンストマイスターになったら・・・何を考えているんだ、僕は暫定の、繋ぎの、お飾りなんだぞ。
「ツェ、ツェメントさんは・・・」
「私の能力は、魔障由来だ。余計なことまで、話す気は無い。リーンハルト、私に教えてくれまいか。共に魔人を討とう」
二人は、いい感じで場を離れた。付いて行き難い雰囲気・・・。普段空気を読めない僕だが、この空気はわかった。お呼びでない。
「・・・あんな魔障はご遠慮したいな。臆病傷ではないか」
「我々は保留だ。何、いずれ魔物くらい出現しよう。堂々と胸板に向う傷を刻む」
高弟は全て去った。薬師カスパルが残っている。
「どうする・・・ジオ。君も僕もニーニャも、立場が悪くなってきた。かといって義務もある。僕はこれからシュテルングスミッテルの調合に入る。材料は極秘にせねばならない。それと・・・睡眠香を盗まれた。気をつけないと、あれで一網打尽だ」
ああ。神よ、僕に英知をお授けください。ディーくらい頭が回るなら、この程度の窮地は、すぐに解決することができるだろうに・・・。
そこで僕は、名案を思い付いた。なんだ、いるじゃないか本人が。
ジオがまた、作者を振り回します。仕返しか。
げぇ、なんてこと言い出しやがる!後先考えろ!




