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双盗技  作者: 桐島直千
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36話 引きこもりからの脱出 ジオ

2週間ぶりです。


見苦しくて苦しい回です。

書いて多少スッキリしました。


ああもう僕はダメな、なんてダメな奴ななんだろう。

ニーニャが残した布きれを握った左手を鼻先から離すこともできなければ、自堕落な肉の棒をしごく右手を止めることもできない。十回目までは数えた。その後は、気絶するまで、死ぬまで抜いてやると言う気になって、何回抜いたかもわからずに意識が途切れた。


「・・・うらやましき若さよな」

部屋に人の気配がして、僕の意識はまどろみの中から現実に引き戻された。ベッドサイドの椅子に、クンストマイスターが腰かけていた。うつぶせで倒れた僕は仰向けに直されて寝ていたが、汚れた下半身を赤い髪の女の人が拭いて清めてくれていた。


ニーニャ?いや、違うと気付いてから、羞恥心がこみ上げてきた。気絶するまで抜いたと言うのに、女の人に反応して立ち上がる息子をあわてて隠した。


赤い髪の女の人は、無表情につとめて作業をこなしていたが、僕を拭いた布を握りしめたまま複雑な表情をしていた。ニーニャよりすこし年上のようだ。


「その女は儂が買った非公式の奴隷だ。生娘のまま後家になったが、借金を返すために身を売った。ところが、主人である儂が立たんので、安心したやら残念やらという心境なのだ。生娘のまま老いるのは嫌だが、老人に抱かれるのも嫌。舐めまわされるだけで毎日生殺し。どうせなら君に抱かれたいと思っている。そうだな?」


その言葉攻めに、見る間に赤い髪の女の人は、耳まで赤く染めた。握りしめた清拭布から僕の分身が滲み出した。すでに部屋中に僕の臭いが充満している。赤くて赤い女性は、否定も肯定もせず、震えている。


「この女は、見てわかる通りニーニャ殿の代用品だ。こんな雌奴隷を調達してしまう儂はニーニャ殿に軽蔑されるかな?ま、そんなことはどうでもいい。儂はハイリゲスを打てる精力を取り戻さねばならぬ。そのためなら、なんでもする。おい、垂らすな!」


女の人の指を伝って、白濁した液体が流れだしていた。命令されてうろたえて、床にたらさないように手の平を上にしたり下にしたりし始めたが、すでに両面がでろでろになってしまっていて、落ちるのは時間の問題だ。僕は思わず叫んだ。


「やめてください!」

「やめるとも。君が引きこもるのをやめるならば」

「それとこれとは!」

「そうかね。儂は始め、君を説得する気で来たが、気が変わった。彼女をここに置いていく。口と手ならば許そう。儂はニーニャ殿を追いかける。やはり、代用品より本物がいい。カスパル殿の細君でないことくらい、とっくに知っている。君の女だというなら、遠慮はしない。嘘をついた罰を与えねば。下着も履かずうろうろする淫乱娘に、儂の我慢はもう限界だ。あの娘ならば、儂をもっと元気にしてくれよう。儂のハイリゲスを突き立ててヒイヒイ言わしてやる。そうなれば君も用無しだ」


正体を現したか、好色エロジジイめ!

「そんなことはさぜないッ!」

「クライスシルトッ!!」


僕はエロジジイの胸倉につかみかかった。途中で何らかの防御術を挟み込まれたが、僕の怒りの力はそれを上回った。金属の盾を砕くような音と共に技が粉砕され、僕はクンストマイスターを組み敷いていた。


アレ?弱い?そんな馬鹿な。


「痛いのう。骨が折れる。離してくれ。元気になったつもりでこの体たらくじゃ。鉄壁の防御を誇ったクライスシルトも破られた。儂はもうだめじゃ」


わざとらしく、げほげほと咳き込んだ。僕は萎えた。萎えた息子も慌ててしまった。


急にしおらしくなって、しみじみとクンストマイスターは話始めた。


「見ての通り、儂は弱り切っている。ハイリゲスを見せられるのは一度きり。君は納得していないのかも知れないが、儂は、儂らは、その眼の力を必要としているんじゃ。頼むよ、受け継いでくれ」


僕は感じていた。初めて自覚していた。左目がうずき出したことを。

ハイリゲス、ハイリゲス、ハイリゲス。まだ見たこともない、究極の奥義。

すでにこの眼は、その存在を察知し、貪欲に欲し始めたのだ。


「おお、すばらしき輝きじゃ」

「よしてください、盗人の目を、輝いているだなんて!」


この眼は、気が狂った母がくれた、忌まわしい呪いのプレゼントだ!


「君は英雄譚を読んだことが無いのかね。技を盗むことは罪でも何でもない!かつて儂は眼盗王の再来と言われた。そのことを誇りに思って生きてきた。儂と君の何が違う。力の源泉が多少違うだけだ!儂は母からもらった疲れやすい体、君は素晴らしい眼だというだけだ!」


うう。違うッ。クンストマイスターは僕を籠絡するために明らかに嘘をついているッ。


「実力じゃないだとか、他人には好きに言わせておけばいい!数多の技を統べて、クンストマイスターになれ!全員を組敷いて黙らせろ!お前は十字軍の末裔なのだろう!正義もクソも無く、相手が改宗するまで攻め続けるのだ!恥を捨て、実を取るのだ!」


うう。なんてことをー。それでも指導者なのか。それだからこそ修道院なのか。


「仕方ない、これをやる。ハイリゲスを覚えた後ならば、何をしようが好きにするといい。だから頼む。ハイリゲスだけはなんとしても継承してくれ!」


クンストマイスターは、眼帯を差し出した。


「わかりました。ハイリゲスだけです。もう、盗むのは最後です。その後眼帯を外すことは、絶対にありません!」


僕は、絞り出すようにその言葉を吐いた。


「よくぞもうした!ならばどけい、エクスプロズィオーンファウストォォ!!」


やっぱり騙されていた。約束が成った途端、僕は部屋の外までふっとばされていた。元気じゃないか。ズルい。


だが、でたらめな約束であろうとも、僕は、それを守る。僕は、僕の誠意を守る。疑われようとも、嫌われようとも、僕は誠意を大事に生きて来たのだ。


奥義継承の時が来た。望んだ形とは大きく違うけれども。


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