27話 リーンハルト
27話 リーンハルト
この城に侵入者!不覚にも心躍る!疾風のリーンハルトの出番なり!
城壁上の侵入者の姿を確認。とりあえず、叫んでいることは殊勝である。本物の襲撃者ならば、内郭に素早く侵入し目的を達成することだろうが、外郭をうろうろしている。まごついているようにも見えるが、中庭への誘導を指図した。後は私が見極める。尋問は捕縛の後でも良いのである。
四囲を檻に囲まれた状態の彼は、まるで迷い込んだ熊だ。が、その表情に狂気は無い。それはいいが、私相手に本気を出さんと、死ぬぞ。
最大射程の大きそうな奴に、遠間から微速接近。中庭中心の彫像を挟んで相対。来た。
「シュベーア・シュタルク・シュベルト!!!!!!」
私の目には遅いが、世間並では早い。彫像に隠れつつ接近するのを断念して飛び退く。
彫像が一撃で粉砕された。重強剣以上の威力に目を見張る。この男、破壊力は一流なり。
だが、次の一手は見えている。大地に残る奴の剣の先端を蹴りずらす。前転して起き上がり、三速剣を振り回した。軸をずらされたことに気が付かず、全くの空振り。この男、技量は並以下なり。技の系統は我らが一門の物である。
私はその長大な隙に速度重視のフリュー・シュプリンゲンで跳びこむ。相手の技が終了するまで完全に私の自由時間だ。ツヴァイ・シュネル・シュベルトで胸元を浅く切り刻み、奴が向き直る暇に逃げシュプリンゲンで脱出。紹介状が足元に落ちた。
以前の基準ならば、入門資格は十分に満たしていると言えよう。シュネルもドライが打て、シュタルクの威力は私も及ばぬ域。紹介状もある。だが、今はそれでは足りぬのだ。
あわてて紹介状を拾おうとする奴の手を切り飛ばさないように、紹介状だけを払い飛ばした。どうした、技量差は歴然だぞ。何か出せるなら早く出しておけ。
しかしそこで、外野のざわめきが気になった。檻の外で、門弟達がささやき合っている。
「あの威力、まるでゴッドワルドの再来だ!」
「・・・っていうことはまさか、奥の手も同じか!」
ち。つまり、刻んだ程度では意に介さなない輩か!捨て身で技量差を覆してくる嫌な相手を思い出す。のしかかられたら無様に終わるのは私だ。
案の定、落ち着き払って奴は技を使った。奴に刻んだ剣筋が、キレイに消えてなくなった。聞いたことが無い技だ。服まで直すとは尋常な回復技ではない。
「今度はあなたの番です」
奴はそう言い放ち、鎖骨の位置に剣を構えた。手招き。
何だと。どこからその自信が来るのだ。その隙だらけの構えで。回復技頼みか。
何が何でも前に出てくるゴッドワルドと違う、受け身の剣法。
何か投げてやれとは思うが、茶番にはしたくない。全力で決めてやろう。
短剣を紹介状に投げ刺す!注意を逸らす!
ホーホ・シュプリンゲン!高く跳ぶ!
落下中に私の奥の手ヴェルトデアデモネン・アオスヴァイヘンで奴を通り抜ける!
背後からパラリューゼ・シュベルト!
・・・うむ、これでは奴の技が何のか確認できない!何もさせずに圧勝してしまう。
結局、どちらにでも体を開けるようにしつつ接近した。油断してシュタルクを食らえば両断されてしまう。そして、いつでも逃げシュプリンゲンは打てるようにする。
間合いに入っても奴は何もしない。体裁きのゆらぎにも動じない。私が何か技を打つのを期待している眼だ。そうは行くか。お前に技はいらん。
奴の眼前に素手をかざす。素手の裏に隠した短剣を指先で一回転させて出現させる。それをゆっくりと紹介状に投げ刺す。面白いように目が泳いで視線誘導できる。未熟なり。
こうなればサービスだ。奴が欲しがっている所に軽く一発入れてやろう。どんな技で返して来るのか見てやろう。
「まてえええい!」
だが、そこでわが師の仲裁が入った。まさか、病臥を押してこられたのか!
「リーンハルト、お前はワシを殺す気か!?その足をどけよ」
え、クンストマイスター、それはどういうことですか。私はそんな!
「わからんのか未熟者!薬草園を台無しにしおって。お前が半分踏んでおる草がワシの生命線じゃ!」
くっ。やられた。全く気にしていなかった。歩行誘導されたのは私の方か!未熟!
「申し訳ありませんでした、クンストマイスター様!」
私はその場でひれ伏すしかなかった。侵入者が剣を振り下ろせば、即死である。
「だーかーらー、他の草も踏むなと申しておるのに!ここは薬草園ぞ!」
ははあっ、平に御容赦をッ!!
ジオは、自分が草を踏まないことは、気にかけていました。




