18話 僕は天才ダーーーーッ ジオ
途中で放り出すわけにもいかず、ヴィッキーを連れて来てしまったが、この子をしょったままでは戦えない。
「どこかに隠れているんだ、絶対出てきちゃダメだよ」
「うん、いざとなったらコレがあるから!」
ヴィッキーが指輪を取り出した。何かのアイテムだろうか?それにしても強行軍でゴミだらけのかぎ裂きだらけになっている。
「こんな時シュトッフレパリーレンが・・・」
ぱああ
えっ。使おうとしたわけでなく、話題にしただけなのに、発動した?
「えーナニコレ。おにいちゃんすっごい。キレイになったよ~」
修行したとか言ってたけど実は簡単な技?実は僕も天才だったり?
しみこんだ汗すらキレイになり、気分もサッパリした。失っていた自信が、すこし戻って来たように思う。
屋敷は、燃え崩れていた。阿鼻叫喚の地獄。炎の向こうで、大きな人影が動いている。あれが襲撃者か。他には何も無いか。ぐるっと見渡すと、視界のすみで手招きが見えた。赤い衣装の娘、ニーニャだ。ニーニャが大木の陰から手招きしている。良かった。逃げ出せたんだ。ヴィッキーをそっちにうながした。ディーたちは見えない。やられたのか。
凄い大男と目が合った。僕は頑丈剣を抜いて、鞘を奴目がけて投げた。注意をひかねばならない。しょっていた大盾を構える。僕には技は無いが、力と装備は充実している!
炎ごしに凄男も構えた。大剣一本。体に合わない革鎧を部分的に無理矢理つけている。
「ゴッドワルド・コブレンツだ。覚えろ」
「僕は盗賊には名乗らない!」
苦々しい顔をしながら、凄男は真っ直ぐ近づいてきた。間に炎があることを意に介しない。まだ大剣の間合いでもないうちに凄男が叫んだ。
「おはようの挨拶は、シュベーア・シュタルク・シュベルト!!!」
大剣が唸った。その途端、僕が構える大盾の左4分の1が、消えてなくなった。
冷汗が炎にあぶられて蒸発していった。凄男は、残骸に踏み込んだため、わずかに軌道を逸らしたようだ。あれが真心であったなら、盾ごと両断されていただろう。
僕は両眼を見開いたまま動けなくなっていたらしい。大剣を振った勢いで、地面で一回転した凄男は、もう眼前に立っていた。なんという迫力か。僕の倍ある?
強烈な頭突きが落ちてきた。大盾の上半分が陥没。僕は踏ん張る。
強烈な左拳で大盾の右半分が陥没。僕は踏ん張る。
強烈な前蹴りで大盾が前に折りたたまれた。僕はこれも踏ん張った。
僕が持っているのは今何だ?まるで鼻をかんだハンケチのような金属塊!
「こんにちわの挨拶は、三打撃。そして、こんばんわの挨拶は!」
「ドライ・シュネル・シュベルト!!!」
大盾が、左下から右上、右下から左上、最後に真上から真下に切り下された。持ったままだったら、僕の左手も三枚に下ろされていた。
凄い!!威力、圧力、切れ味。しかも獲物は大剣だ!盗賊風情の技ではない!
「最初の技は一瞬だったが、次の技は見えた!僕も必ず使えるようになってみせる!」
また、いいところでゴミが目に。しかし、そんなものを気にしている場合ではない。
「ならば先人に敬意を払うべし。このゴッドワルド・コブレンツは、咎あって騎士をやめたのではない!単に俺に合う装備が無いというくだらない理由でやめさせられたのだ!」
その話は、なんというか感動秘話と言うより、ちーん。という感じですが。ともあれ、僕にも覚えが無い話ではない。一般人用の大盾は僕にとっては普通の盾みたいなもんだったし。
「ゴッドワルドさん、僕の名前はジオカトロです。僕は一度見た技を覚える天才です。ご覧にいれましょう。ドライ・シュネル・シュベルト!!!」
左下から右上~ときて、右下から左上~につなぎーの、ううん、カーブが大きいな。
「ナニが天才だ、才能ないわい。がははは」
くうう~恥ずかしい~。絶対に覚えてやるんだッ!
その瞬間、眼窩のゴミが極大の文字になった。いきなり僕の振りがシャープになる。
左下右上右下左上真上真下ッ!
「貴様、油断させておいて、ぐうっ!」
ゴッドワルドさんの左胸板が3つに切り裂かれていた。えっ、僕がやったのか?
「もう許さん!シュベーア・シュタルク・シュベルト!!!」
あっと思った時にはもう大剣が僕の頭上に迫っていた。これを返すには!
「う・む・しゅ・ら・あ・げ・んんん」
「バカな、俺の大剣の威力をそんな姿勢で吸収するだとおおお!!」
僕はブリッジのようにのけぞりながら、頑丈剣と宝剣の二刀で大剣を受け止めていた。極限の中で、忘れていた感覚が僕の中に蘇って来ていた!いや、忘れてなんかいない!出せる!!
「あんぐりふっ!!!」
僕は吸収した力を全て返した!イケる!僕は天才だッ!僕の目が光って輝く!!
二刀をくらって宙に浮くゴッドワルドさんに、追撃の!!
「シュベーア・シュタルク・シュベルト!!!」
「ぐうあああああああああ!!」
決まった!
僕は、自分でも信じられないことに、遅れてきた天才だったのだ!
バカだ、アホだ、才能無いと言われ続けたが、ここに来て一気に才能が開花したのだ!
ゴッドワルドさん死なないで!もっと僕に技を教えてください!
「うう、おのれ~。だが俺にはまだ技がある~。決闘者が命を削り合った後には、決して出してはいけない技が~。禁断の卑怯技が~。俺が騎士をやめさせられた決定打が~。」
ふらふらになりながら、ゴッドワルドさんはうめいていた。
「ゼルプストリーベ!!」
きらきら光りながら、ゴッドワルドさんの全身が回復して行く。どーりで炎を恐れないわけだ。回復技を持っているなんて。確かに卑怯だ。でもうらやましい。覚えたい。
「シュトッフレパリーレン!」
せめて恰好だけでもつけようと思ったのだが、ゴッドワルドさんはうろたえた。
「何ッ、お前も、回復技だとッ」
こっちは衣服だけなんですが。まあ、教える義理は無い。
ハッタリでキリッ。とした表情を。まるでディーみたい。
ゴッドワルドさんは大剣をふらふらと持ち上げた。来るかシュベーア・シュタルク・シュベルト!でも僕の方が早いゾ!
「シュベーア・シュタルク・シュベルト!ドライ・シュネル・シュベルト!ゼルプストリーベ!」
ダンと切り込んで、ザクザクザクと切り刻んで、キラキラと僕は回復した。非常に疲れたが、それは表情には出さないように努めた。
「あ、ああああ、あああ~」
ゴッドワルドさんはかろうじてまだ生きていたが、僕に技を覚えられたショックで、回復技まで使えなくなってしまったようだ。それ、一時的ですよ。僕がウムシュを思い出したように、ちゃんと修行をやり直出せば、また使えるようになりますって。
もう戦意を失っているから回復してあげたいけど、ゼルプは自分しか直せないみたいだし。シュトッフレパリーレンしてもなあ。ものは試しか。
しかし、革鎧が修復された煽りで、キュッと首がしまってゴッドワルドさんは死んでしまった。なんということだ。意外とシュトッフレパリーレンも恐ろしいものだ。
炎は鎮火していないが、うめき声はもう聞こえない。崩壊に巻き込まれた者たちはみんな死んでしまったのか。
技を使い過ぎて、もう僕はへたり込みそうだった。ディーを探す気力もないが、女の子たちを守らねば。
声をかけても返事が無いので、大木の元に行った。ニーニャがあられもない姿で気絶していた。ヴィッキーの姿が無い。おかしい!こんなエッチな姿のニーニャを放っておいて、子供の方をさらうなんて!敵は一体どんな趣味をしているんだ。
読み返して唖然としました。
追撃の!!の次のセリフ
あんぐりふ→シュベーア・シュタルク・シュベルト!!!に修正
奪った技使うとこです。




