17話 完勝 ジャック
あらかた片付いた以上、殺すことも無いでしょう。
くやしそうに脳筋・魚の牙さんは座り込んだ。明らかに限界。重傷なのにでも生きてる頑丈。ひ弱な俺には真似できないね。
サフィーロ兄弟をひねりつぶして、突撃隊長がお戻りになった。他は全滅のようだ。名前なんだっけ、ゴッドツー・コーツーだっけか。身の丈十二尺のあの人。
「ゴッドワルド・コブレンツだ。覚えろ」
あ、頭をつかまんといてください。プチプチじゃないんで。
ふんッ。
一瞬、敵の党首がせんべいになったかと思った。腹に軽くめり込んだだけで大きくむせている。腹の中の物が全部でそう。おぇぇ。
「はーい尋問です。素直に、手短に。お名前は」
「ディア・・・ロゴス」
「へぇ、対話。あなたは対話を望みますか?その対価はお持ちですか?」
「質屋に、顔が効く」
「我々の希望額に満たない分を返済できますか?」
「・・・できる」
うん。こんな空手形はどうでもいいんだ。必死こいて騙しの算段を考えている眼だ。解き放ったら危険な奴だから、生きられると思わせつつ情報を取り、終わったら処分がベスト。
「では、黒幕は」
「大臣だ」
淀みなく答えた。色々おかしい部分もあるが掘り下げて聞かねばならなくなった。
「何大臣?」
「聞いてない。さる高貴なお方だと」
「じゃあ、あいつだな。もう聞くことは無い」
「ま、待て。歳のころは壮年。ヒゲ、ハゲ、デブ」
そんなこと言われてもね。ほとんどの奴が該当するのでは。
「もういい、撤退するぞ。そいつは引きずって来い」
突撃隊長が焦れた。え、力仕事苦手なのにー。
「すいません、じゃあ、気絶するまで殴ってください。蜘蛛の糸の中でナイフ持ったままなので、取り上げないと」
ゴギャッ。
気絶した。いや死んだんじゃないか。白目を剥いてみる。よだれを落とす。無反応。
よし、武装解除だー。実は女の子~ではなかったざんねーん。投げナイフをやたら持っていた。ブーツにも隠しナイフ。糸が乾いて柔軟性を失ったら、速攻脱出されるところだったな。白手袋かと思ったら、肌の色よりさらに真っ白い手。なんだこれ、他人の手とつけかえたような手だ。後ろ手に縛って、全身もぐるぐるハンモックにしてと。
屋敷に火が回っている。生きながら焼かれる叫び声。よくあることだけど、早くここを後にしたいね。マイプレシャスはまた後回しかな。
「羅針盤」確認。おや、反応が屋敷の向こうの峠じゃない。屋敷の周囲にあった大木の方に向いている。へぇ、戻ってきて、隠れているんだ。持っているのは子猫ちゃんかな。行動原理が良くわからないけどねぇ。
ハンモックは魚の牙に預けて、迂回しつつ大木の裏へ回り込む。白昼では目立つ衣装だが、闇夜では黒が闇に溶け込む。ターゲット「遠眼鏡」で確認。赤少女、青幼女。2人とも見ているのは突撃隊長の方か。お、誰かが勝負を挑んでいるぞ。戻って来た大男か。
脳筋同士なら正々堂々勝負をつけてくださいな。
「巣牌堕ゑ撫」
まず、木の幹に糸を飛ばす。粘力で自分を木に飛ばす。幹に着地と同時に、真下の2人に糸を飛ばす。糸を幹に引っ掛けて、自分が落ちる重みで少女らを釣り上げる。パンツが見えちゃうのはご愛嬌と。
ぬなあああああ!!
例のアレを持っているであろう青幼女に注意をひかれていた俺だったが、飛び上がっていく赤少女、落ちてくる赤少女、逆釣りになった後必死で隠そうとしている赤少女に目が釘付けになった。最初からちゃんと見ておけば。おしい。
叫び出そうとする口は黒い糸で塞いだ。良かったね白い糸じゃなくて。ついでに両足はオープン姿勢のまま縛った。自分で開いたんじゃんか。俺は、蹴っ飛ばされたくないだけです。
「あーけいでぃあー、あーけいでぃあー!」
青幼女がなんか呪文を唱えていた。見るとマイプレシャスを取り出してかざしている。
「おじょうちゃん、それは間違っている。こいつは俺の船、ブラックオパール号を呼び出すための対の鍵、ホワイトオパールの指輪だ」
そのための呪文は、おそろしいことに、もっとハズカシイのだッ。できれば小さい女の子にお願いしたいくらいに!!
「あ、そうだ、おじょうちゃん。俺の船の船長やらない?俺、提督ね」
「なるなる、海賊船長!ヴィッキー、ミニスカ海賊船長だよ!」
ノリのいい娘ですこと。破廉恥娘の方はフィギュアヘッドだな。にやり。




