16話 総喪失 ニーニャ
2人の男の間を泳いで、両方とも失った。その私は今、邸内の食器のお片付け中。
「あー、何やってるんだろう、職業病かな」
無心で働いた。気が付くと厨房で夜になっていた。明かりをつける気にもならず、へたり込んだ。静かになると、聞こえてくる艶声、獣のような唸り声。まだやってんのか。
獣は、雇われ兄弟のゴツイ方か。ジオ程じゃないけど、あんなのに突かれまくったら死ねる。
くちゅ。
あ、下着の線を直そうとしただけなのに触っちゃった。
私は、何度か未遂がある。あの時、あの人のを受け入れていたら。逃げた後に一人で慰める。一夜の伽を求める連中にロクなのはいなかったが、やらせなかった連中は皆、運勢を下げた。轍にはまったり、靴をなくしたりとささいな事だが、その後の話も聞かない。
ゴツイのが追い込みに入る。相手はもう気絶しているようだ。私がオカズにしているのがバレたら、こっちに来るのだろうか。私もスカートを咥え、下着をずらし、一生懸命自分を追い込む。先にイケたら、死んだふりでもしよう。
! 誰かが階段を降りてきた。
強制圧力弁閉鎖!ベント中断!出力最少!・・・・・・・
私は、深海に潜む狼のごとく、音を立てずに潜む。たとえ胎内で浸水が発生しようとも、黙って耐え抜くのが海の漢なのだ。
ひそひそ話の後、3人が各所に散っていく。彼らは外をうかがいながら、潜水艦行動に移った。
時が過ぎる。私は、変態彫刻家が造ったようないやらしい格好のまま彫像と化した。動いたら、バレ
る。バレたら、超ハズカシイ。
ぴしゃん。
床に、汗が、垂れた。・・・汗なんだからね!
むふう。
鼻だけで息を続けるのがつらくなって来た。
無風じゃない。外から風が入ってきた。スカートの下の無防備な部分が冷え始まった。
あ、限界が近い。このまま固まっていてもどうしようもない。
かちゃ。
不意に、勝手口が開け放たれた。ひいいい。
誰かが入ってくる。警戒していた方と逆で、ビックリした。でも外からってことは賊?
厨房から入ってきた賊は、暗がりにしゃがんでいる私を踏まないように、奥に向かった。
が、何かに足を引っ掛けてスっ転んだ。私の脱ぎかけの下着につま先が引っかかっていた。賊は怒り心頭の様子だったが、うつぶせから仰向けになるから下着がよじれて、かえって外れなくなった。
そんなー、「胸キュン慶次」じゃあるまいしー!!
と、また異次元知識に驚いている所へ、世界が落っこちてきた。
正確には、2階が落ちた。一階の張り出し部分である厨房は無事だったが、頭だけ隣の部屋に行っていた賊は、ギロチンのように頭部を紛失した。
なななんあなあああああああ!!
あまりのことに、足首を繋がれたまま、私はうろたえながら、外へ逃げ出した。賊の死体が勝手口に引っかかり、あわてて下着のよじれを直して脱ぎ捨てた。
「ひゃっはー、全滅だぁぁぁー!!」
ゴツイのが叫んでいた。他のチンピラや女の人は?
兄弟の細い方が、何かスキルを使って家に火をつけたのが聞こえた。酷い。
丸ごと落ちたので、偶然大した怪我を負わなかった人もいたようだったが、瓦礫の中に半分うずもれたそれに、ゴツイのが的確にハンマーを打ち込んでいく。
「起きやがる奴は敵だああああ!!」
一応、それで味方に寝ていろということなのか。でも、ホソイのが火をつけまくっている。どうしようもない。
私は、大きな木の後ろに隠れた。武器も無い、下着も無い。見ていることしか。
ゴツイのがハンマーを思うさま奮っている。泣き叫んでいる。復讐の暴走。親兄弟の名を叫んでいるようだが、味方も巻き込むような復讐でいいのだろうか。
ハンマーが鈍った。その瞬間、ハンマーをつかみ止めながら、ゴツイのよりもっとゴツイのが立ち上がった。狡猾にも、様子を伺っていたのだ。
庭の広い方では、ディアがいつの間にか窮地に陥っていた。
「助けろ、サフィーロ!」「助けて、あにきっ!」
同時の救援要請に、サフィーロ兄貴は迷わず顧客より弟を選択した。
サフィーロが火矢を飛ばす。ゴツゴツがゴツイのを盾にする。ゴツゴツがゴツイのの足を持って、人間ゴツイハンマーで、サフィーロに打ち付ける。兄弟の頭が自分の体の中にめり込んだ。
下着はいてなくてよかった。・・・もれた。
ディアブル一党は敗北しました。党首は大の字に寝かされて縛られています。敵は3人残っているようです。屋敷は燃え盛っています。負傷者多数がうめいています。
どうしますか?
→逃げる。
助けを呼ぶ。
降参する。
胸キュン慶次・・・どうしてこうなった




