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双盗技  作者: 桐島直千
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11話 引き揚げ ディア

 まず、聞き込み中に顔見知りになった漁師に聞く。一番仕事に誠実な親方は誰だ。

 親方に聞く。明日は仕事を休んでお宝の引き上げをやらないか。給金ははずむぞ。

 宝の素性をうちあけ、主に持ち主への返還を目的としていることなど、親方と話しながら、彼が好きそうな方向へでまかせを並べる。酒をおごって気分よくする。


 親方は泳ぎの達者で素行の良い者を4人集めた。早朝から潜る。宝箱ごとの引き上げは無理のようだ。そして、水中では宝箱のカギが壊しにくいことがわかった。ジオを呼び戻すか?スキルを奪い取った後の出がらしだが、その破壊力には使いでがある。


 親方が潜ると言った。昨晩しこたま飲んだくせに早起きで、まさに海の漁師。まかす。死んでも構わんし。

 親方は一発でカギをぶっ壊し、宝をつかみ取りしてきた。大喜びである。それはそのまま与えることにする。他の4人も、最初の1回はつかみ取りとした。喜び勇んで我先に跳びこんで行く。後は、片手ごとに銀貨5枚とした。最初のつかみ取りより明らかに少ない量ならば、容赦なくやり直させた。何往復もして疲労して来たので、大物を優先して取らせ、金貨1枚を与える。アメを与えたりムチを与えたり。ただし、親方越しにだ。俺が直接やっても効果は低い。


 仕立屋が来たので一時商家に引っ込む。とりあえず、出来合いの物に袖を通す。今のままではあまりにもみすぼらしい。俺にはもっと箔のある上品な衣装が必要だ。大急ぎで採寸させ、桟橋に戻る。親方はまだ作業中だ。持ち逃げはされていない。


 だーが。俺様の目は節穴ではない。仕立屋が乗ってきた馬車の鞭を、漁師のちんぽこにぶち込んだ!どこの世界にきんたまが4つも5つもある奴がいるか!

 宝石が散らばった。水中にも落ちたがかまやせん。絶叫してきんたまを抑えてうずくまる奴も水中に叩き込む!身なり、眼光、鞭。もはや先ほどの貧相な若者ではない。真の支配者が誰なのか思い知らせる!


 おっかなびっくり3人はくすねた物を返した。不問とし、作業を続行する。宝の魅力はおそろしいものだ。善良なはずの者たちの心を容易く悪へと導く。親方は遠くの空を見ている。口笛とか吹くんじゃない!底が浅いな。今日から誠実の看板は閉店だな。


 見物人が集まって来たので、引き揚げたお宝を商家に運び込む。さっき話はつけてある。うってかわって店主に揉み手で出迎えられた。最初からそうしろ。

 借屋と生活必需品の手配を頼んだ。それと傭兵。盗賊・海賊に親族を殺された恨みを持つ者がいい。もう6人待っていた。


 部屋を借りて彼らの値踏みをする。一人ずつ面接する。親方には後ろでふんぞりかえっていてもらう。まだ俺に箔が足りないからな。手下はとっとと帰らせた。


 最初の一人。悪党が装う誠実面だ。賊の斥候だろう。どんな技を持つか聞き出して終了。

 次の二人。にわか傭兵。若造。恨みだけ。スキルなし。論外。

 四人目。壮年、赤ら顔、ひげ面。飄々としている。恨みとかあるまい。冷やかしか。スキルは、望遠鏡に羅針盤ときた。やとわれ船長向きだ。今は用は無いが。握手をして別の機会があればと。

 最後の二人組。サフィーロとドセーナ兄弟。手練れの雰囲気。面構え、装備良し。恨みは本物だろう。こいつらを両脇に侍らせれば、俺の箔を上げ得る存在だ。決定。奪う予定は無いのでスキルは聞かない。そこが彼らの自尊心をくすぐったらしい。満足げだ。


 バァアァーンと扉を開け放って部屋を出た。面接待ちが増えていたが、兄弟が用済みだと蹴散らした。よしよし、いい飼い犬っぷりだ。


おい。


 ちょっと待てそこのデカいの。何でちょこんと大人しく順番待ちしてた。何で兄弟に蹴散らされる。しゅんとして出て行こうとするな、ジオ!!


「いやなんか場違いかなーって。良かったーホッとしたよディー。質屋は君の言うとおりになったよ」

「そうか、では引き揚げた宝箱を持ってくれるか。それも質屋に預けよう」

 先頭に立つ俺。宝箱2つを担ぎ上げついて来る熊男。サフィーロドセーナ兄弟の目の色がまた変わる。4人で通りを練り歩く。周り皆がよけて通る。


 そうか、これがクソ親父の言っていた世界か!俺は間違っていた!今さらながら、しなやかな指で街頭音楽家の道を志していたチンケで貧相な自分が憐れに思える。すぐそこに一攫千金と栄誉が転がっていたのになんという回り道!


 それもこれもあの日、デュープハントゲレンクを得たあの日。あの日奴に出会っていなければ。俺の手がどうなったかはもうどうでもいい。唯一の不安は、この魔人の手をいつ奪い返しに来るかだ。早急に有用スキルを取り揃えて、奴に対抗できるようにならねばならない。目潰しとカウンターはそう考えるとクソスキルだ。なんでこんなのを盗ったのか。


 だが、今は初の戦果を楽しもう!

 うまい物を食い、高い酒を飲み、イイモノを着て、女を侍らせて豪遊だ!!

 ディア様の奇妙な冒険はまだ、始まったばかりなのだ!


 ん。そういや幼女はどうしたか。まあいいか。

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