九話 ょぅι"ょ ニーニャ
あらまあ。あたしが知らない間に、男同士でお楽しみとは。
あたしはこの日、橋の上の両替商で金貨1枚を両替して、手数料にたまげて、今まで買えなかったものを様々に物色して、でも最低限の贅沢に留めて、生活必需品をそろえてーと超忙しかったのに。何、賊を退治してお宝ゲットですって?
戦果 盗賊4。
戦利品 宝箱1、沈没宝箱2、幼女1。
はー。金貨1枚が、かすむわー。
盗品ってことは持ち主に返還要求されるかも知れないけど。褒賞も期待できるわけで。
あれ。ナニコレ。
ょぅι"ょ?
どーすんのそんなの!誘拐犯と間違えられるでしょうが。
「というわけで、ニーニャにこの子を頼みたいんだ」
「あいつはどうしたのよ」
「沈没した宝箱を引き上げる監督。今晩は人足集め」
「自分でやればいいでしょうが」
「ダメなんだって。何回も潜水して、上がってきたところをブスリとやられるから、人にやらせて、自分は賊が近づいてくるのを陰で見張るんだって」
あったまいー。でも、こういう街って貴族とか役人も盗賊と結託しているのよねー。そーゆーの出てきたら。いや、あいつならなんとかしそう。というか手玉に取りそう。
「僕は明日、無事だった宝箱を換金する。質屋に持ってって値の半額で売れと。半分は、名乗り出た持ち主に返還する用意がある。残りは質屋の取り分だと。ディーの受け売りだけど、大したもんだ」
うわー、そりゃ質屋がんばるわね。実際の価値の四分の一があたしたちに払われるとして、一つも返さなければ四分の三が丸儲け。こっちは大損のように見えて、後腐れの無い金が手に入る。持ち主はタダで返還要求はまさかできない。大切な一品の場合、元値以上で買い取りになる。そういう対応も質屋まかせでいい。実に楽なやり方。盗品じゃなくて、盗品の奪還物ってとこが肝ね。質屋で手に余っても、繋がってる商人ギルド、有力者が出てくるでしょう。
クイクイ。
あ、ごめんね、長いこと幼女ほったらかしだったわ。
無事、親元に帰しました。 オワリッ。
・・・納得できないみたいね。仕方ないわ。
「あたしの取り分ー」くいくい。
んー。この子、正確に言うと幼女じゃないわ。少女よ。
幼女って○歳以下でしょ。○的対象にならないわ。
うちの男どもから見て、○的対象にならないので幼女。世間的には少女。OK?
「あたしの取り分ー」ぐいぐい。
お、だんだん自己主張が強くなりーの。
「あたしも船漕ぐの手伝ったのにー。一味でしょー、仲間でしょー、アネゴー」
あー。あたしらを海賊だと思ってんのね。それにしても、物語の影響力はすごいわ。拉致された本人ですら海賊にしびれて、あこがれちゃうのねー。
「そんなことより、お家を教えてよ。明日になったら帰れるからね」
「あたしの名前はヴィッキー!生まれた時から海賊なのよ!岡の連中の方に拉致されたの!あそこには戻りたくない!」
「いいこと。あなたは潜伏者なのよ。残地調者なの。いつか我々が大挙して攻め寄せるとき、内側から手引きするのがあなたの役目なのよ。村に戻りなさい。できうることならば、修道院に入り込みなさい。海峡を扼しているあの城の基幹部分に入り込みなさい。」
まー、あたしも口から出まかせが出ること出ること。
あれ、これ、誰から習った?
「いーやー!わかんないー!ごまかそうとしてもダメなんだからー!」
涙目のパッツン金髪美少女かーわいーわー。あたしなんて金髪になれなかった赤毛なのに。海賊少女なんてトルトゥーガで娼婦ぐらいが末だってわかんないのね。
あたしは、駄々っ子を懐柔するために、宝箱から小さな財宝を一個もらってきて取り分とした。碧眼が爛々と輝く。ああ、この子、与え甲斐があるわあ。そして騙し甲斐も。
「18、いや16になったら迎えに来てあげる。それまでは修行よ。何でもできるようになっておきなさい。役立たずはいらない。16歳の誕生日に、広場でその宝玉を天空にかざして叫びなさい」
「うん、わかった。なんていえばいいの?」
「猛々しきヴァイキングの子、勝利の子ヴィクトリーァが望む!ヴァル原より疾く来たれ!我らが海賊戦艦アーケイディーア、アーケイディーア、疾く来たれー!」
笑わないようにするのが、最大の努力のしどころだった。
ヴィッキーは真に受けた。一晩中練習していた。
大恥かけば、中二病も覚めるでしょ。嘘はこの子のため!
まあ、まんず16まで騙され続けたりはしないっしょ。




