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双盗技  作者: 桐島直千
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八話 茶番 ディア

 ジオから形ばかりの教授を受け、ウムシュラーゲンアングリフを奪う前提条件は整えた。天才である俺は簡単に習得。奴はショックで忘れる。剣は買わずとも、賊から奪えばいい。魔人の強奪手は、物品を奪うことは容易いようだ。道すがら足のつかない物で数度実験し、盗んだらすぐ戻すことで確かめた。暴れ馬相手に危険を冒さずとも良かったのだ。今後は調子に乗って技名を叫ぶことは厳禁だ。辞書を引かれれば何をしたのかモロにバレる。ニーニャは馬鹿のように見えて聡い。警戒せねば。


 俺は、この町から海峡の向こうへ荷運びをしている賊がいることを知っていた。例の親父知識だ。ジオに置いていかれた隙に漁師、水夫にちょっとした聞き込みを行い、どのあたりに潜んでいるのかあたりをつけた。さらに護身用ナイフ・投げナイフを入手したが、銀貨は2枚残っている。


 夕闇、河岸の葦に潜む。ジオは全く隠密行動に向かない奴だ。ガタイはでかいわ、終始そわそわしているわ、すぐ物音を立てる。イラつく奴だ。やむを得ないので、手をつなぐ。俺の足跡以外踏むなと命令。デュープハントゲレンクの効果により、一味の忍び足性能が向上。


「なんか楽しいね」

「しゃ、べ、る、な」

 ぴしゃ。

(虫ぐらいガマンしろー!)叫びたいのを必死でこらえた。


 時間が経過する。荷運びの小舟が通過してゆく。この程度の船で海峡越えは自殺行為だが、時間で変わる急流が勝手に向こう側に押し流してくれるので、漕ぎ手はそういらない。

 目的の船が寄ってきた。隠し桟橋に接弦。一人が下りて行く。

「よし!」

「ま、だ、だ」

 ジオを抑えるのに苦労する。熊男めっ!!シネ、今死ね!!


 二人が宝箱を持って小船に搬入を繰り返す。その音の方がでかく、ジオのもがきが相手にはわからなかったようだ。

 三回搬入した。もういい。突っ込め我が、怪力熊男!


 ジオが猛然と突進した。相手はびびって船を出そうとしたが、船は重くなっていた。俺の投げナイフを首にくらって、向こう側に落ちる。ち、奴の武器を奪おうと思ったのに。


 ジオ一人で桟橋の向こうから来る二人以上を相手取れるか。

 ジオは待ち構えていた。必殺技の構え。バカじゃないのか。なんか投げられたらモロに食らうだろうが。後ろから蹴っ飛ばして・・・いや、無駄だ。


 諦めた。バカジオを狙って、俺を見ていない盗賊に護身用ナイフを投げて殺す。俺に向かって来た奴はバカジオになすりつけて体を入れ替え、死んだ盗賊の武器をデュープハントゲレンクで奪う。少し遠かったが吸い込んだ。よし。


 ジオはなすりつけられた賊と普通に切り合い始めた。バカメ、そのバカ力で押し込め!

 俺は、次に来た奴に挟まれて、桟橋の上で移動不能となった。ならば突っ込むまでよ。

 賊は俺の三角牽制切りを受け切れず、手の甲に傷を負った。左手に持ち変える。敵じゃない。

「アウゲザードルッケン!」

 危なかった。視野いっぱいに賊の目潰しの二指が迫って来たのに、一瞬硬直させられた。スキルか!ならば奪うまでよ!突いてきた指の間に手刀を割り込ませて目を守る。同時にデュープハントゲレンク発動!

「アウゲザードルッケン返し!」

 奪った技を速攻で使った。してみると奴の方が強いと?俺は魔人の手の性能に依存していて、本来ならばこんなチンカスよりも弱いというのか?判定基準が厳密に知りたい。


 目をつぶされた奴は、むやみやたらと左手の武器を振り回しながら後退した。そんなもの、何でもいいから投げりゃいい。死体を投げてやったら喜んで刺した。俺を倒したとでも?死体ごと足蹴にして、隙があるところをザクザクと突いて殺した。


 ジオはどうしたか。力まかせに抑え込んでいる。そうだ、それでいい。俺は近寄って急所を一撃。んん。急所ではなかったか。どこだ、急所は。結局数回刺した。


 もう来ないか。だが、奥の方でじたばたしているのがいる。近寄ると袋だ。袋が暴れている。中身は人だな。ジオが俺を弾き飛ばしてそれに駆け寄った。このー!

 「大丈夫ですか。今助けますから」


 そっちに夢中になっていていいのか?

 今お前は大事な物を失ったんだぞ?

 このディア様がお前なんぞよけられないと思うのか?


 しかし、このバカが俺より強い判定は気に入らないな。体力、生命力、筋力優先で、知性や賢さや敏捷性は無関係なのか。そっちの方が都合がいいが。


「ぷはっ」

 袋から出てきたのは、案の定、幼女だった。定番だな。海峡の向こうには変態貴族が待っていたのだろう。この財宝の持ち主でなければいいが。


「お嬢ちゃん、盗賊が戻って来るかも知れないから静かにねー。安全なところに戻ってから、色々聞くからねー。必ず、おうちに戻れるからねー。今は騒いじゃダメだからねー」


 ジオ任せではまた大騒ぎになりそうだったので、結局俺様が介入せざるを得なかった。小舟に乗るまで三人で手をつないでそろそろ歩き、財宝と一緒に出航した。


 途中、海峡に吸われそうになってあわてて三人で漕ぐ。ジオと宝の重さで浸水したので俺が泳ぐ。漁師が使っている桟橋に命からがら逃げ込んだ。宝箱はジオの馬鹿力でも1つしか上げられず、桟橋の所に2つ沈んでいる。


 ・・・なんだこの茶番は。


 幼女とジオだけが大笑いしている。

 ん。つまり俺だけがむすっとしているのか。


覚書 

デュープハントゲレンク(技自体)

 対象 自分と同数以上のスキル保持者に手で接触(本体依存で成長)特に制限なく奪う

 効果 スキルを奪い取る(本体依存で成長)不正な複製を行う。元を残すのも可。


魔人の手首(怪盗紳士の手首)・デュープハントゲレンク(不正複製の手首)

 効果 盗賊技能全般の向上。創造的能力の怠慢。


デア・ベーゼブリック 

対象 見た技にしびれる。あこがれる。

効果 目に映る文字が極大になった時、スキルを奪う。

特記 ジオの邪眼だけでなく、邪眼全てを指す言葉


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