9 . 覚醒
ずっと様子がおかしかった父親に、ついに本音を曝け出したキット。
黙って下を向き、葛藤していた父親にキツイ言葉ばかり言ってしまう。
困らせたいわけでも、悲しい顔をさせたかったわけでもない。しかし、そんな思いとは裏腹に止めることができなかった。
頭を冷やす。そう言い残し、父親に背を向けたわずか数秒後、何者かによって父親は殺害されてしまう。
キットの目の前で命を落とした父親。
それを目の当たりにしたキットの体に突如として異変が起きる。
僕の頭の中は怒りと悲しみに満ちていた。許せない、そう思うのに足が動かなかった。
「くそ.....なんでだ」
涙声でそう呟き、自分の無力さを思い知った。とうさん…。
「ん? ぅぅ.....なんだ…これ......からだが……あつい」
突如として体に異変が起こる。なんだ…これ…
「よし、"おれ"の番だ。殺してやる。“おれ”はお前らを許さない」
そう呟き、"おれ”は父親を殺した奴へ一直線に向かい、顎を殴りつける。
「結構頑丈じゃねえか。”おれ”の拳が血に染まっちまった」
拳じゃ無理だな。なんか刀みたいなのがありゃいいんだけどなぁ…。そんなことを考えていた”おれ”の視界に奴のナイフが入る。
「やべ!」
考えていたせいで反応が遅れた。刃先が頬の皮膚を切る。その反動で体が一瞬後退する。
くそ!まずは何か武器を.....。そう判断した”おれ”の視界に父親の刀が目に入る。
「こりゃいい。息の根止めてやる」
その言葉を聞いた相手の顔がこわばるのがわかる。
「なんだ?ビビってんのか?」
「黙りなさい。あなたなど相手になりません」
「ッハッハッ、面白いな。言ってくれるじゃねえか。後悔するぜ」
相手の刃先の長さは大体把握できている。そして奴が踏み込んだ瞬間を見逃さなかった。でも動かない。
「……!」
まぁ驚くのもわかる。わざと相手の攻撃を受けたんだからな。
刃先が左肩の皮膚に刺さった。そのまま肉に食い込み、骨を割る感触がする。
「いい顔だな」
こんなことは今までにない。と言いたそうに驚いてやがる。
「そのまま」
「......!」
「そのままだ」
ナイフを抜こうとしても、そんな簡単には抜けないさ。
ナイフから手を離した一瞬の隙を見逃さず、右手で持っていた刀で奴の右頬から左肩にかけて刃を振る。
「いい切れ味だ」
そして原型をなくした顔を見て、"おれ”は笑みを浮かべた。
「痛いな~」
そう言いながら刺さったナイフを慎重に抜き取る。
「止血しないとダメかぁ。めんどくさいな、てか意外と弱いな」
そう呟いたのを最後に、意識が途切れた。
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「………!!!!」
地面に倒れたあと、意識が回復すると…
「っ…痛っ」
なんだこの傷。なんだこの疲れ。立ち上がれない。息が上がって苦しい。どうなってるんだ?僕の体に何が起こった.....?全然記憶がない。
頭の中が爆発しそうなほど色んな感情に苛まれ、考えていると、ふと視界に入る。
「............っ…とうさん」
視界がぼやけて、はっきりと顔が見えない。
「ごめん…ね」
この時、僕の微かな嗚咽だけが静かに響き渡っていた。




