6 . 笑顔
不安しかなかった父さんとの生活も徐々に慣れていった。
流れで父さんと呼ぶようになってしまったけれど、僕は本当の父親のように慕っているし、僕が両親から受けられなかった愛情を父さんは沢山くれた。
「ねえ、父さん。今度一緒に買い物に行こうよ」
「おお、いいな。沢山買ってやるぞ」
「ほんと!やったー!」
「ただいまー」
「おかえり~。ってああ!鍋が!」
「あら、おかえりキットくん」
「え?ユイさん?」
「料理を教えてもらってるんだ。できるだけ美味いもの食べさせたいからな!」
「.....!ありがとう、父さん。ユイさんも」
ここ最近、父さんはユイさんに料理を教えてもらうようになっていた。
ユイさんが作ってきてくれたご飯をいただくこともあったし、父さんに料理を教えてくれたおかげで毎日おいしさがパワーアップしていた。
思い出したくないあのスープが嘘のようで笑ってしまう。
料理ができるようになってから父さんには今まで以上に笑顔が増えて、ものすごく微笑ましかった。
俺が作った料理をキットが美味しいって食べてくれることが何よりの幸せだ。
なんて言ってたな。
こんな平和な日常が続いていた。
そして現在に至る。
治安が悪くても父さんといれば怖くなかったし、何より心から笑うことができた。そして昔の記憶を全部忘れさせてくれたのも父さんだった。
父さんも僕を我が子のように可愛がってくれていたし、そこに嘘はないことは僕が身をもって感じていた。
トレーニングの時はものすごく真剣な眼差しで厳しいことも沢山言われたけど、僕のためだと思えば何も苦ではなかった。
それでも心の片隅でその理由を知りたい、なぜ?という疑問が消えることは一度もなかった。
それともう一つ、僕には疑問に思っていることがあった。
それは、父さんがトレーニング同様、毎日"変わったこと”はないかと聞いてくることだった。
それは夜寝る前
「父さん。僕はそろそろ自室に戻って体を休めるよ」
「そうか。ゆっくり休めよ。.....っとそうだ、今日は変化なかったか?」
「うん。大丈夫。.......ずっと気になってたんだけど、なんでそんなこと毎日聞いてくるの?」
「っはは。そんなの親として子を心配してるだけじゃないか。俺ももういい歳だ。キットになんかあると俺も困るからな」
「そう......だよね。ありがとう、心配してくれて。じゃあおやすみ」
「ああ。おやすみ」
キットが自室に戻ったことを確認し、広も自室に戻る。
そしてパソコンを開く。
そして、とあるフォルダを開き入力を始める。
フォルダ名は"キット"
”7日 23時36分 今日も特に変化なし 引き続き観察を続ける”
そう入力した東雲広はパソコンを閉じ、眠りについた。
フォルダの一番最初の入力日は、爆発事故の翌日だった。




