4 . 一新
「どこで暮らすかな~。まいったな~。全部丸焦げになっちまった」
僕ら2人はボロボロになった服を身につけているだけで、他に何も持ち合わせていない状態で途方に暮れていた。
「なるべく遠くへ行きたい。まだ体力はあるか?キット」
「うん、へーき」
研究所から逃げ出して初めて見た外の景色に釘付けだった僕は父さんの質問に空返事で答えた。
ただ研究所が位置していたこのやけに広い場所はいったいどこなのかもわからないままで、海に向かって歩く父さんの後ろを黙ってついて行くだけだった。
やがて、流されてきたであろう少しばかり傷ついた船を見つけ、その後たどり着いたのがアンス村だったというわけだ。
村にたどり着くまでに1ヶ月以上。
この時の僕たちは海水だけを頼りに生きていたため、とてつもなく痩せ細っていた。
「ついた.......やっと村だ.....。生き延びた.....」
「...おなかすいた......よ」
「ああ、もうすこし奥へすす............」
ここで2人の意識は途切れた。
「......っは!」
ここはどこ?
「あらよかった。目が覚めたのね。安心して。一緒にいた人はあそこにいるわ」
そう言いながら女性が指を刺した方に視線を向けると、そこには用意された食事に無我夢中でかぶりつく父さんの姿だった。
「子供みたいだ」
そう呟いた僕を見て女性はそっと微笑んだ。
「あ、あの......助けてくれてありがとう。この村のひと?」
「私はユイよ。びっくりしたわよ。死んでるかと思った。服もボロボロで、浅い呼吸だったし...。
それよりほら、あなたも食べなさい!早くしないと全部食べられちゃうわよ」
「え?......!あ!ちょっと!僕の分とっておいてよ」
「んぁ?ひゃやくしろ」
頬をパンパンにしながら食べ物を頬張る父さんに、負けじと僕も久しぶりすぎる食事を大いに楽しんだ。
「はぁ一食った~!死ぬかとおもった。ありがとうなユイさん」
「いいのよ。元気になってこっちも一安心だわ。彼もよく食べるわね」
「まあ、こんな痩せ細っちまったのは俺のせいだから。ところでこの村はどんなところなんですか?ここで暮らそうかと思いまして」
「あらそうなの?ここは治安が悪いわよ。昼間なんかすごいんだから!」
「治安......か。ちょうどいい」
「え?」
「あぁいや、なんでもないです。本当にありがとうございました」
「この村の山の方にね、一個空き家があるのよ。あそこなら住んでもいいと思うわ。2人だと少し広すぎるかもしれないけど...」
「そりゃ助かる!行くぞキット」
「え?あぁ、うん。ユイさんありがとう」
「全く忙しないわね」
微笑みながら呟いたユイさんに背を向け、ユイさん宅を後にする。
こんな経緯であっという間に住まいまで決まってしまった。
のちにユイさんにはたくさんお世話になることとなる。




