29 . 本当の気持ち
「まだ目が覚めないの~キットくんは」
「うん。もう1週間だよ?やっぱり医者に」
「う、うう」
「あ、起きた。大丈夫?」
「ああ大丈夫。あいつらは?」
「消えた、っていうか回収された」
「何ともなかった?」
「うん。キットのおかげ」
「僕なんかした?」
「覚えてないの?」
「うん、全く」
リタと母親が顔を合わせる
え、なに?
「キットがさ全員殺したんだよ」
「殺した?」
「まるで別人だった。それに」
「それに.....なんだよ」
「色がさ、瞳の色が......紫に変わってた」
「はあ?そんなわけあるか」
「今は戻ってる。でも確かにあの時変わったんだよ。それに魔法も使ってた」
「僕に魔力はないはずだ。そんなわけあるか」
何を言ってるんだリタは。僕には魔力なんてないし、まだ強くないんだぞ。
「でも見たんだって!この目で」
「そんなわけないって!」
「ご、ごめん」
僕が1番困惑してるんだ。それに殺したなんて嘘だ。
確かに強くなりたいとは言った。でも傷つけたり、ましてや殺すなんて本意じゃない。
そうだ、前にも同じことがあった。父さんが殺された時だ。僕の記憶はないけど確かに僕が倒したんだ。
どうなってる。わけがわからない、僕の体になにが起こったんだ。
「騎士団はきたの?」
「来なかった」
「はあ?何のための監視だよ。護衛のためだろ?」
「だからその前にキットが全員倒したんだよ。本当に記憶ないの?」
「だからないんだって。本当に」
「リタの見間違いじゃないか?そうだよ。絶対」
「見間違いなんかじゃない!キットが魔法使って、その刀もちゃんと使いこなして、迷いなんてなかった。自分の意思でそうしてた」
嘘だ。受け入れたくない。絶対そんなことありえない。あいつらは自我がなかったんだぞ。操られてたんだ。そんな奴らを殺すか、救うべきだろ。
「血だ」
僕の目に映った刀。そこにはしっかりと血がついている。どうなってるんだ。もうわからないよ。
「キット、もういいの?」
「ああ、体を動かしてればそれに集中できる。余計なことを考えずに済む。悪いけど、しばらくは1人になりたい。ごめん」
「わかった」
「どうしたのよ~そんな顔して~キットくんが心配?」
「うん。まだ休んでた方がいいと思う。私は何でもキットにぶつけちゃうけど、キットはそんなことしない。
思うところはたくさんあるはずなのに、否定もしないし怒りもしないで私についてくれる。キットが今、本当はなにを思ってるのかわからない。それに私はキットの強くなりたいって思いをちょっと違く捉えてた。私は悪いことをした人は殺してもって思ってた。でもキットは傷つけることさえ躊躇してて、だから殺したって聞いてあんなに動揺してたんだと思う。なんて声かけたらいいかわからないし、余計なこと言っちゃいそうで」
「相当心配なのね~。そんな真剣な顔して真面目なこと言うリタ、久しぶりに見たわよ?きっと大丈夫よ~」
「だといいんだけど」
ダメだ。集中できない。もう僕は僕がわからない。魔力なんてないぞ。それに刀だってまともに扱えない。何で思い出せないんだ。苦しい。
本当に静かだ。あの事件以来に出る人は数えるくらい。元々多くはないみたいだし、人が住んでるのか?って思うくらいには静かだ。
「この手で殺した......か」
「あ、キット」
「急だけど、僕は首都に行ってくる。だから今日はもう帰らない」
「待って、私も行く」
「くるな、1人でいい」
「でも心配だし」
「僕がどこへ行こうと、何をしようと勝手だ。リタには関係ない」
僕はリタの顔を見ることなく首都へと向かった。
そんなキットをリタは放っておくことはできずこっそりとあとをつけていた。




