28 . 別人物
「待って」
リタが向かおうとしたのを呼び止める。
「とりあえずご両親に聞いてみよう」
「わかった」
まだ朝早い。こんな時間から何やってるんだいったい。
「あら~2人とも早いじゃない~」
「ちょうどよかったお母さん」
「?」
「今妙な人がいて、村のこと観察してるみたいだった」
「真っ黒な服着てた〜?」
リタと視線が重なり2人で頷く。
「それ手紙で書いたことよ~。ほら、人の通りが増えたって。みんな真っ黒の服着てたのよ~」
嫌な予感は的中するかもな。
「僕の勘違いならいいんですけど、何か覚悟したような顔を一瞬だけどしたんです。早ければ今日、今日じゃなくても近いうちに何か起こるかもしれない......と思います」
何をするつもりなんだ?なんのためにこの村に?
「ここにいたら危ない?かな」
「わからない。でも何か起きるはずだ。じゃなきゃあんな顔しない」
「ま、まあ2人ともそんな深刻な顔しないで~」
そう言いながらも、アイナさんの顔が引きっている。やはり怖いんだろう。
「今日は首都に行く?」
「僕たちだけ行ったってしょうがないだろ。この村にどれだけの人が住んでると思ってる」
「それはそうだけど」
「とりあえず様子をみよう」
予知なんてできやしないんだ。でも何か起こってからじゃ遅い。どうするのが正解なんだ。
「と、とりあえず、朝ごはん作るわね~」
「ありがとうございます」
もし何かあれば、僕がおとりになればいい。リタには家族がいるんだ。
仮に僕に何かあっても、悲しむ人はいない。
僕より、優先すべきはリタとその家族。そして村人たちだ。
「ちょっと外出ます。すぐ戻るんで」
そう言い残し、もう一度外へ出てあたりを見渡す。
もういなくなってる。いや、僕から見える範囲にはいない。僕の思い込みで終わればいいんだけどな。
「あ、よかった。いま呼びに行こうと思ってた」
「ごめん」
「なんのごめん?」
「ああいや」
「さあどうぞ~」
こりゃまた豪華な朝ごはんだな。おいしそうだ。
でも何か起きるかもしれないし、たくさん食べておこう。
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「食べた~美味しかったです。料理上手ですね」
「よかったわ~」
食べることに夢中であいつらの存在忘れてた。
でも、よく考えてみれば、この村監視されてたよな?だったら何かあれば騎士団が護衛してくれるはずじゃないか?そうだよな。なら安心だ。
「キット、ちょっと付き合ってよ。トレーニング」
「もちろん」
「ちょっと家開けるね。大丈夫?」
「大丈夫よ~お父さんもいるんだし」
「そうだね。じゃあ...
ーードカーーーーーーン
「「「??!!!!」」」
「なんだ今の音?」
僕とリタ、そしてアイナさんの3人ですぐさま外へ出る。
「なんだこれ」
暴れてる。紫色の瞳をした奴らが。どうなってる?なにが起こってるんだ。
「お、おい、なんか変じゃないか?自我がないみたいだ。操られてるのか?」
「私に聞かないでよ!わかるわけないじゃん」
このままほっといたら、村が崩壊する。なんとかしないと.....でもどうしたら。
「リタ、リタ!!君は両親を連れてできるだけここから離れて」
「はあ?キットは?」
「なんとかする」
「なんとかって、どうやって?!」
「う、…」
「キット?」
「おれの番だ」
「はあ?なに言って.....キット?」
この時、リタは唖然としていた。キットになにが起きたのかリタにはわかるはずがなかった。
「ん?おい何やってんだ。早く逃げろよ」
「キットだよね?」
「あいつら倒せばいいんだろ?楽勝だぜ」
「キット......?聞いてる?」
「うるせーよ。黙ってろ」
そう言い放ち、俺は暴れる奴らへと一直線にむかい、刀を振る。
「え?」
弱くね?俺今、地面蹴って勢いそのままに刀を振っただけだぞ?相手になんねーな。つかこいつら自我がねーじゃん。誰かに操られてるか、暴走させられたか。どっちかだな。
「っと」
拳が飛んできた。動きが遅すぎる。まるでスローモーションだ。
「いって」
嘘。痛くない。脇腹殴られたから衝動的に声が出ちまった。力もないのか?何にも怖くねえな。
「あ、たしか俺、魔法使えるんだった」
だったら
「えーっとあれ?どうやって使うんだ?」
右手の拳を少し開き、そのまま前に突き出す。
「うわ!炎でた!すっっげ」
たったこれだけの動作なのに、あたり一面に炎が広がった。
そしてそれと同時に勢いよく奴らが吹き飛んだ。
「あーあー。んだよ。もう終わりかよ。つまんねーな」
体感数秒。
「ふう」
「ねえキット?」
「んあ?っ............」
「キット??ねえ大丈夫?」
突然苦しみ、倒れ込んだキットに、リタは戸惑うことしかできない。
リタの声がだんだん遠ざかるのがわかる。この感じ2回目だ、なんだこれ?
僕はそのまま意識を手放した。




