27 . 嫌な予感
「会ったことありましたっけ?」
「あ、いやいやないんだけど」
「は、はあ」
僕に話しかけてきた女性。
年齢は父さんと同じくらいだろうか。
「首都に住んでるの?」
「え?あ、いや僕は訳あってサイレント村に」
「そ、そう」
全然記憶にないんだけど。でも彼女は僕のこと知っているみたいだし.......うーん。ダメだやっぱり思い出せない!
「急にごめんね。私はリナっていうの。また来てよ」
「は、はい。では」
よくわからない人だったな。急に話しかけてきて、急に終わらせる。
僕だけが知らなくて、彼女は僕を知っている。なんか怖くなってきたぞ。まあそのうち思い出すか。帰ろう。
「リター」
「ん?キット!ちょうど良かった。これから帰るところだったの」
「そっか。タイミングバッチリだ」
「いろいろ見れた?」
「うん。南西区にも行ってきたんだ。あそこはとてもじゃないけど首都とは思えなかったよ」
「南西区に行ったのか」
僕の話を聞いていたらしい、リタの父親が口を挟む。
「はい。ネズミばっかで、こんなとこ来るんじゃないって怒られました」
「だろうな。あそこは孤児もいるんだ。盗みを繰り返してるような子供がうろちょろと。服もボロボロ、可哀想だけど、やたら手出すと何されるかわからないから」
「そうなんですね」
子供もあんなところで生活してるのか。もしかしてネズミも食べてるのか?あんなところにいたらおかしくなるぞ。
「よし。帰るぞ」
「キット?帰るよ」
「う、うん」
馬車に乗り首都から村へと戻る。
暗くなり始めても相変わらず綺麗な景色だ。
「すみません。少しだけお世話になります」
「いいのよ~リタに無理やり連れてこられたんだから気にしないで〜」
アイナさんに、一部屋空きがあるから使ってくれと言われた。ありがたい。
リタの家族に混ざり、夕食を食べていた時、僕は気になる話を聞いた。
「王国の隣国知ってるか?」
「いや、僕は全く」
「そうか。フラーウムトロンってとこなんだけどな、王国は何かと隣国を悪く言ってる。潰したいみたいだ。村にいればなんら害はないが、首都ではその名を出さないようにしろよ」
「わかりました。ありがとうございます」
「今日は疲れたんじゃない~?ゆっくり休むといいわ~」
「何から何までありがとうございます」
アイナさんの言う通りだ。慣れない場所、それにたくさん歩いたから疲れた。今日は早めに休もう。
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「早く目が覚めちゃったな」
そう呟きながら、リタは大きな欠伸をした。
外の空気を吸おうと、ふと庭のほうに視線を向けたリタの目に写ったのは、汗だくのキットだった。
「すごい汗。あんなにゆっくり振ってるのに」
リタはしばらくの間キットから目を逸らすことができなかった。
「キット」
「ん?リタか。おはよう」
「おはよう。すごい汗だね」
「昨日鍛冶屋に行った時、この刀を一日30回は振るようにって言われたんだ。僕自身も体力をつけて早くこの刀を使いこなしたいと思って、強くなりたいからさ」
「そっか。てか、声かけてよ」
あ、ごめんなさい。そんな顔しないで。
そもそもこんな朝早くに声かけたらそれはそれで嫌な顔するよね、たぶん。いや絶対。
僕はリタのことがわかるんだ。
「あ、そういえば、僕結構早くから起きてたんだけど、あの人達誰?」
「え?」
「こんな早くから妙なんだよね。この村のことじっくり観察してる。なんかさ.....」
「「嫌な予感がする」」




