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30 . 東雲広とリナ

 まだ体が変な感じだ。

僕は魔力なんかないはずだ。でも鍛冶屋に行って魔力がないと言った時驚いた顔をされた。この思い出せそうで思い出せない感じがすごく苦しい。あーもう。さっきから同じことばっかり考えてる。とにかく馬車に乗って首都へ行こう。



 「着いた」


 首都についた僕は一直線に鍛治屋へ向かった。


 「すみません」

 「あらどうしたの?」

 「この刀やっぱり僕には不釣り合いだ。だからここでいい剣士にでも託してくれないかと思って。僕は強くなることよりも先に、自分自身を知る必要があるって思ったんです」

 「キットくん」

 「ん?あ、この間の」

 「少し時間あるかしら?」

 「え、あ、はい。何でしょう?」

 「少し場所を変えましょう」


 彼女、リナさん。僕は彼女のことを知らないが、彼女は僕を知っている。彼女はこの鍛治屋で働いている人で、住まいはその真裏である。そんな彼女の住まいに、僕は案内された。


 「おじゃまします」

 「どうぞ。君もね」

 「え?」

 「あら、気づかなかった?彼女、ずっとあなたのことつけてきたみたいよ」

 「リタ.....」

 「ごめん。どうしても放っておけなくて。勝手についてきちゃった。途中で声をかけようとも思ったんだけど、キットなんかぶつぶつ言いながら歩いてたし。声かけられなくて」

 「そうか。まあいいよ」

 「キットくん。あなたは自分のことがわからない。自分の体になにが起こったのかもわからない。思い出そうとしても全く思い出せない。あってる?」

 「え、ああはい。でも何でそれを」

 「サイレント村でおかしなことが起こったでしょ?あの時私もサイレント村まで行ってたのよ。それでキットくんのこと見てた」

 「そうですか。一ついいですか?僕はあなたのことを知らない。でもあなたは僕を前から知っているようだった。その理由を僕は知りたい」


 彼女はしばらく黙り込み、意を決したように話し始めた。


 「私はね広くんと恋人関係にあったの」

 「広くん?」

 「あなたのお父さんよ」

 「??」

 「ずっと隠しておこうと思ってたけど、キットくんがすごく苦しんでるのを見て、私が責任をもって話すべきだと思ったの。キットくんが研究所から逃げ出した時のこと覚えてる?」

 「はい。あの時、僕たちはなにも持っていなかったはずなのに、父さんの部屋には見覚えのない書類が山ほどありました。あんなの一体どこからってずっと不思議だったんです」

 「あの書類は全て私が保管してあったものなの。少しずつあの部屋に送っていて。広くんとはずっと手紙のやり取りをしていたわ。私は広くんから、彼の幼少期、そして研究のこと、全てを包み隠さず聞いていた。リタちゃんって言ったわね。おそらくあなたが知りたがってたことは広くんが関係している。

キットくん、知りたい?話すべきだと思ったって言ったけど、あなたが決めて。全てを知る覚悟があるなら私は包み隠さず、あなたに全てを話すわ」

 「あなたの話を聞けば僕の体の謎も全てわかるということですか?でも、まだあなたを知らない。あなたの言葉を全て鵜呑みにして全てを信じることができるかと言われたらそれはわからない。…....でも、でも僕は知りたい......です」

 「わかった。私はあなたに広くんから聞いた全てを話すわ。私が広くんと出会ったのは20年以上前よ。広くんはね......」

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