表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/22

20 . 慮外

 「.....ただいま」

 「おかえり」

 「.....すぐに準備するよ。結構お腹空いてるでしょ?多めに買ってきたんだ」

 「ありがとう。さっきは言いすぎたかも。ごめん」

 「もういいって。結構響いた。リタが正しい。だから、ありがとう」


 リタは黙って頷いた。

 僕はキッチンへと向かい、昼食の準備に取り掛かる。おいしそうな肉だ。今日はどうアレンジしようかな?焼いてもいいし、煮てもいいな。

考える時間も楽しい。それに、やっぱり誰かのために料理を作るっていいな。父さんにも作ってあげたかったな〜。


 「お待たせ」

 「うわー!おいしそう」

 「でしょ?今日はいつも以上の自信作。さあ冷めないうちに食べて食べて」

 「いただきます」


 大きな口を開けながらリタが肉にかぶりつく。


 「どう?かな?」

 「すっごく美味しい」


 ああ良かった!その顔が見たかったんだよ。よし、僕も冷めないうちに食べよう。


 「あ、そういえばさっき帰ってきた時、リタ宛に手紙が届いてたよ」

 「ほんと?多分両親からじゃないかな?あとで確認するよ。ありがとう」


 え?いつの間に両親に手紙なんて出したんだ?てことは、もうここでの暮らしも伝えてあるってことだよな?親御さんどう思ってるんだろう。なんかすごく心配になってきた、変なこと書いてないといいんだけど.....。


 「あ、そうだ。私からも一つ」

 「ん?」

 「キットが家を空けている間に少しだけど書類を読んでたら......」


 そう言いながらリタは立ち上がり少し奥にあるテーブルから書類を取りに向かった。


 「これ」

 「ん?」

 「これって何かの地図?」

 「そう。あとその端っこに結果って字も書かれてる。破られた形跡があるから、この下に何か書かれていたんだろうけど、残念ながらそれに繋がりそうな書類は見つけられなかった。だから、あとでキットも確認してみて。私が見落としてるだけって可能性もあるからさ」

 「うん。わかった。ありがとう、リタ」

 

 「それと……さ。僕もちゃんと努力する。強くなるために。自分の弱さにもちゃんと向き合う。リタの言ってた通り、同じ過ちは繰り返したくない、後悔もしたくない。だから頑張りたい。一緒に」

 「……私の足だけは引っ張らないでよ」

 「わかってるさ」


 2人で静かに笑い合った。

こんな会話をしながら食事をしていたらすでに一時間が経過していた。


 「「ごちそうさま」」

 「じゃあ私は手紙を読みつつ、少し部屋で仮眠をとるよ」

 「そっか。わかった」


 僕も早いとこ片付けてリタが言っていた書類を探してみよう。

 2人分の食器を急いで片付けて、父さんの部屋へと向かう。

 この地図は多分、あの研究所の地図だろうな。それ以外に思いつかない。破られてるってことは処分された可能性が高いだろうな。

 ていうか、よくよく考えてみれば、これだけ2人で探しても何一つ貴重な情報が得られていないってことは、見られたくないものだけは処分して、あとは見られても平気なものだからそのままにしてあるってこともあるな。いや、絶対そうだな。そう考えれば納得がいく。

 全く意味がなかったってことだ。あんなに目が痛くなるまで頑張ったのに…。時間だけ奪われたな。

 ん?そういえば、逃げ出した時にはお互い何も持っていなかったはずだよな?父さんはどこから持ってきたんだこれ?僕が家を空けている間?でも人の出入りなんてあったかな?

 父さんは全然自分のことを話してくれなかったし、僕は父さんの上部だけを見てたってことだ。知ってるつもりでいただけだな。

 ダメだ。考えるだけ無駄。考えてもわからない。知りもしないのに、父さんを悪く見てしまう。


 「ふぅ。一旦休憩しよ」


 コンコンコン


 「ん?」

 「ちょっといいかな、キット」


 遠慮がちの声色に、部屋の扉を開けると何やら神妙な顔をしたリタが立っていた。思わず僕の顔がこわばる。


 「お母さんたちから手紙が届いたでしょ?それを読んでいたら何か気になることが書いてあって。その.....なんか村の様子がおかしいみたいなの」

 「おかしいって?」

 「もともと静かな村なんだけど、人の通りが増えて空気が変わったって書いてあって」

 「...........?」


 リタが住んでいた村のことを全く知らない僕は、なんと答えていいかわからずにいた。

 しばらく黙っていると、リタが口を開く。


 「私、一度村に戻ろうと思う」

 「え?」


 イマナンテ?


 「自分勝手なのはわかってるけど、一度気になるとダメなの。それに両親のことも心配だし」


 確かに自分勝手なところはある。ご両親を心配する気持ちもわかる。それは否定しない。でも、今はお互いの知りたいことのために協力しているわけだし、一旦それを投げ出すってことになる。

 でも.........気になったことは最後まで見届けたい。それがどう言う結果であれ、私が自分で決めたことに目は背けたくない。

 前にリタが言っていた言葉を思い出す。

そういう人だったね。君は。

 そして、僕は静かに首を縦に振った。


 「ありがとう」

 「気をつけるんだよ」

 「え?」

 「え?」

 「いやいや、キットもいくのよ?」

 「はあ?」


 僕の口から出た間抜けな声。

え?何言ってるの?ほんとに!僕は僕でやることがあるでしょうに!勝手に決めないでくれよ。


 「そんなのあと回しよ」


 ちょっと待ってよ!

ごめんなさい。ちょっと20秒くらい時間巻き戻せないかな?さっきの頷き、撤回させてください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ