18 . 察知
「うわぁー!何これ?ちょっと量が多すぎない?何日あれば読み終わるの?全然終わりが見えてこないんだけど!」
「僕も同意見だ。流石に目が痛いなこれ。おかしくなりそうだ」
リタと共に書類を読み進めてから、すでに1週間は経っていた。それでも終わりが見えてこない。なんか文字ばっかり見ていたら全部が黒い点にしか見えてこない。かなりの重症だな。それに、読み進めるうちに、これは果たして重要書類なのか?とも思えてきた。
量がある割にはどれも似たような内容ばかりが書かれているし、もう意味がない気がしてきた。
父さんは何のためにこれを取っておいたんだろう?いや、別に取っておこうとしていたわけじゃないのか?全然わからない。このままだと、目も頭もおかしくなる。休憩しよ。
「ちょっと気分転換でもしよう。飲み物を入れるよ」
「ありがとう、お願い。あ、コーヒーね。甘くしないで」
「あぁ、わかってるよ。ちょっと待ってて」
キッチンへ向かい、2人分のコーヒーをカップに注ぐ。ちなみに僕は、ものすごく甘くしないと飲めない。それを見たリタが子供だねって言いながら笑いを堪えていた時はちょっとだけイラッとしたんだ。まぁそんなことはどうでもいいんだけど。
「よし、お待たせ…って.....寝てる?!寝るの早すぎないか?」
「起きてる」
「うわ!びっくりした」
「目を閉じてただけ。あんだけ文字見てたらね」
「そっか。ごめんごめん」
もといた場所に座り、リタにコーヒーを手渡す。
「ありがとう」
「リタが目を通した書類には何かいい情報はあった?」
「いや全く。なんか似たようなことばっかり書いてあるし」
「そっか。僕の方も同じだ」
このまま読み続けて何か収穫があるとは思えないんだよな〜。んー。全てに目を通すか、ここで区切りをつけるか。どうしよう。それに、少しだけ面倒くさくなってきちゃったんだよな。
「とりあえず、タイトルっぽいのだけ見て、それが重要かもしれないって思ったら最後まで目を通すってのはどうかな?流石に私もこれ以上文字ばっかり見てたらおかしくなりそう」
「ははっ!それはそうだ。うん。そうしよう」
最初からそうすれば良かった。なんで思いつかなかったんだろう。
「じゃあ一旦終わりってことで、コーヒーも飲んだし、次は体を動かしに行こうよ」
「そうだね。ずっと同じ体勢でいたし、体を伸ばさないと。よし、行こう」
リタと2人で庭へと向かう。
僕の家は庭も広いんだ。体を動かすには最適の場所になっている。
「「んーーー」」
2人して大きな伸びをする。
「ねぇ、ずっと思ってたんだけど。私にもさ、その刀触らせてくれない?」
「え?やだ」
「そんなきっぱり言わなくてもよくない?」
「だってリタに渡すとなんか怖いし、壊されそう。それにこの刀は父さんの形見だ。僕だけが触っていい」
「な~んだ。つまんないの」
父さんが亡くなってからパタリと途切れていたトレーニングの習慣も、リタと暮らし始めてからは、また行われるようになっていた。
いつ、とか時間を決めているわけではないし、こんな感じで急に行われている。そもそもトレーニングって言っていいのかすらもわからない。
リタはもともと体を動かすことが好きみたいだったし、今よりもっと強くなりたいとも言っていた。「キットも一緒に」って言われた時、なんで?と思ったのはリタには内緒だけどね。だから、ほとんど僕の意思ではなく、リタに合わせてやってるって感じ。
うん。やっぱりトレーニングじゃないや。
それと、リタは、ずば抜けて戦闘能力が高いわけではなかった。僕と同等レベルか僕より少し上って感じ。実際に戦っているところを見たわけではないけど、なんとなくわかる。だから前に比べてしんどいと感じることは少なかった。父さんと2人の時は"しんどい"とか"きつい"とか、ましてやちょっと休憩なんて、そんなこと言っちゃいけない雰囲気だったしね。
リタは以前から木剣を使っていたため、父さんの部屋から木剣を見つけた時は大喜びしていた。剣士になりたいのかって聞いたらそれは違うって言ってたし、木剣を村から持ってくるのは邪魔で仕方がなかったとも言っていた。騎士団庁舎からこっそり…とか言い始めた時はびっくりしたけど、それ以前は長さのある木の棒を使っていたとか言いだすから、驚いたと同時に吹き出してしまった。
「ふっ!ふっ!」
僕はそんなことを思い出しながら、リタが木剣を振る姿をぼーっと眺めていた。
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「いいな~。かっこいい。僕もその剣使ってみたい」
「ダメだ。もっと体力をつけないと!それにこれは持つだけで疲れるぞ」
「そうなの?じゃあ父さんはすごい力持ちなんだね」
「ははっ!まあキットよりはな。それと凄いこと見せてやる」
「凄いこと?」
「見てろ〜?ふっ!」
「!! すごい!そんなに小さくなるの?」
「これはキットにはできないことだ。こうやって小さくすれば、武器を持っていることもバレない。すごいだろ?」
僕はこの時、目を離かせていた。
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っと話が逸れてしまった。懐かしい。こんなこともあったな。
僕の父さんは剣使いだった。すごく切れ味が良さそうな立派な刀を持っていたし、相当な実力者だったんじゃないかなと思う。実際は知らないけど。
僕は全く.....でもないけど使いこなせていない。でも父さんの形見として今は常に身につけている。
リタがさっき触らせて欲しいって言ったのはこれのこと。
僕も早くこの刀を使いこなせるようになりたいな~とは思っているが、まだまだ時間がかかりそうだ。今思えば、あの時、父さんは物を縮小させる魔法を使ったのかもしれないな。
「はぁ疲れた。そろそろ戻ろうよ」
「はぁ?何言ってんの?まだ30分くらいしか経ってないじゃん!それにずっと上の空で大して汗かいてないじゃん。全然動いてないよ?」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
確かに父さんのことを思い出していたからか、全然動いた感じしないな。でも疲れたし、休も。
「じゃあ僕は見学してるから、リタはまだ続けるといいよ」
「はぁ。まったくだわ」
リタが僕に鋭い視線を向けている。はっきり言ってものすごく怖い。口調も怖かったな。
よし一旦横になろう。それにしても結構な重さのある刀だ。父さんの言っていた通りだ。
それに僕には全然体力がない。それを痛感している。毎日のようにトレーニングしてたはずなのにな。
でも、正直毎朝のトレーニングの習慣がなくなったことは僕にとっては好都合だった。僕だけで続けても良かったんだけど、元々自分の意思でやっていたわけではないし、朝はもっとゆっくりしたかった。それに続けていたら嫌な光景まで思い出しそうで怖い。
結局リタと一緒にはやっているけど、ほとんど見学みたいなもんだ。
でもなんであんな山の方でやってたんだろう?あんなところでやらなくたって、今みたいに家の庭でやればいい。十分な広さがあるんだし。
横になりながらそんなことを考えていた。
「あ」
僕の目線の先、遠くに見えるあの場所。トレーニングの場所。たくさん汗を流した場所。父さんが命を落とした場所。
「あ!!」
「え!何!?急にびっくりするから大きな声出さないでよ!」
「あぁ、ごめんごめん。別に驚かせたかったわけじゃないんだよ」
「で、何?何か思い出すことでもあったの?」
「あぁ、そうなんだよ!実はさ.....」




