12 . 不信
父親が続けていた、キットの観察。
その理由がわからない。悪いことばかりが頭に浮かび、まともな睡眠、食事をとれずにいた。
助けてほしい。そう思いながらもその気持ちを誰にも打ち明けられない。苦しんでいたキットは、もう一度パソコンを開く。そこで見つけた、ある文字。
キットはこの日ある決意をする。
ダメだ。一睡もできなかった。
父さんのパソコンに書かれていた "観察” という単語だけがやけに頭に残り、考えが止まらない。頭の中が渦を巻いて吐き気までしてくる。
父さんの部屋で見つけたUSBをあの日からずっと手放すことができずにいた。そして、握りしめたまま目を閉じる。そんなことばかりを繰り返していた。でも、頭に浮かぶのは悪いことばかりである。
USBを見つけてからもう3日も経っている。食事をするのも、作るのも面倒で、水しか口にしていない。さらに一睡もできていないせいで、体調も悪くなっていた。
それでも時間は止まってはくれないし、村の日常はなんら変わらない。
この世界、僕の時間だけがあの日から止まったままだ。苦しい。誰かに吐き出したい。このままじゃおかしくなりそうだ。そう感じていた。
「気晴らし.......外出るか」
家を出て、村の商店街に顔を出す。
しばらく歩いていると、見慣れた顔がふと目に入る。
「お〜!なんだ!キットじゃないか!毎朝肉買いに来てくれてたのにパタリと顔出さなくなっちまったから心配してたんだぞ!1人か?親父さんはどうした?」
「.....っはは、ごめんね。心配してくれてありがとう、おっさん」
力なく笑いながらそう答えた。
「なんかあったか?顔色悪いぞ!それになんだかやつれたみたいだ」
「まあね。ちょっと色々あってさ。父さんもしばらくは顔出さないと思う」
「そうか…。たまには来いよ?それと…これ持ってけ!特別だ。タダでくれてやる。元気出せ!」
父さんが死んだことを話せなかった。
"助けてほしい”
"どん底の僕を救ってほしい”
そう思っているのに、この言葉をおっさんに言うのは違う気がした。きっと困らせるだけだ。そう思って、出かけた言葉をギリギリで飲み込んだ。
「ふぅ」
そんなに歩いていないのに、どっと疲れが出た。やっぱり何かお腹に入れないとダメみたいだ。
おっさんに貰った手のひらサイズの揚げ肉を口にする。途端、僕の頬に温かい涙が伝った。
この時、父さんと初めて会った日、そこで食べた温かい食事を思い出していた。
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「.....…は!!」
机に伏せてあのまま寝てしまったみたいだ。あたりはもう日が落ち、暗くなっている。
睡眠と食事を摂った僕の頭は僅かに覚躍し、もう一度父さんの部屋に足を踏み入れる。怖いと知りたいという気持ちがせめぎ合いながらも、USBを差し込み、もう一度フォルダを開く。
「.....…! 研究??なんだこれ?見落としてた」
事細かく記載された僕の観察結果。そればかりに目が行ってしまっていたが、一番下までスクロールしてみると ”研究” の文字がでてきた。
「父さんがやっていた研究のことか?」
ますますわからなくなってきた。父さんは僕の何を観察していたのか。そしてなんの研究をしていたのか。それは僕になんの関係があるのか。この時、僕の "知りたい" という気持ちが前に出る。
これまで僕が見てきた父さんは偽りの人物だったのか? "東雲広” に対する僕の不信感は募るばかりだった。
「よし」
僕はこの日、父さん………東雲 広と彼が何の研究をし、なぜ殺されたのか。そして僕との関係。その全てを知る決意をした。
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