ジーニースライムの神化
ジーニースライムは繭の上空から降りてきた。
姿は多くの者が見たことのあるスライムではなく
ヒト型であった。
頭部、両手、胴、煙のような形の足、目が顔一周に合計8つ、細い胴からは触手が8本生えている。全体的に繭と同じ赤黒い色をしているが、黒い線が目から足に向かって伸びている。
「オレハ オマエラヲ クッテ チカラ テニイレタ!」威圧を放ちながら低い地響きのような声を出す。
「お前人を何人喰った…13人程度じゃないだろう……。」静かな声。チェチーリアは自分に言われたわけでも無いのにプレッシャーを感じる。
「イッパイ クッタ! イッパイ マリョク タマッタ! ツヨイマホウ テニイレタ!」オフィーリアのプレッシャーを感じずに話すジーニースライム。
「……だから、大きい魔法を連発できたんだな……。喰った奴が覚えた魔法、魔力を奪ったな!」オフィーリアから膨大な魔力が吹き荒れる。
「……ヤッパリ オマエ ヘン! ゴニン シナイ ヘン!」ジーニースライムは以前吸収した魔法使いのミスリードの魔法を強化して、常に使っている。
魔法使いが使っていた時は相手の意識を一瞬反らす程度だった。
今はジーニースライムが倒されない限り、影響範囲内なら半永久的に誤認させる。
「マホウモ ヘン! オナジマホウ オレニ カエッタ!」ジーニースライムは両手が光、2魔法を展開し、触手で3つの魔法を展開する。
「メルトゼロ」、「ブリザードランス」、「ライトニングピラー」、「リンクゲート」、「ペインエンチャント」を同時発動。3つの多重属性魔法で攻撃し、回避されても回避場所へリンクゲートで繋いで再度攻撃。ペインエンチャントで掠るだけで、追加ダメージを与える。
効率良く相手を殺す連携魔法だが、人間には使用できない。魔力量が絶対に足りないからだ。ただ、一人の例外を除いて。
「オマエハ キエロ!」
オフィーリアに魔法が殺到する。おまけにリンクゲートでフェイントを入れてくる。受けたら確実に塵も残さず消える。
これは、神に等しい能力。
このジーニースライムは歴代のデモンスライム種の中で紛れもなく最悪の存在だった。100人以上の魔法使いを喰い、魔力量と使用可能魔法の種類は神を越えた……。
羽化を経て機動力・発動魔法数が上昇、大量の耐性。ジーニースライムは神化を果たした。
「ほら!」吠えて一閃!美しい橙色の剣が橙の残像を残して走る!多重魔法は霧散した……!
「どうだ!エクスカリバーの力は!」偽物である。魔力を流すと橙に光る剣……そう、子どものおもちゃだ!
……? では、なぜジーニースライムの魔法が霧散したのか。それは、オフィーリアが剣に流した純粋な魔力が、殺到する魔法を上回って霧散させたからだ。
「ギギ! オマエ ナニ シタ!」ジーニースライムは動揺した。その隙を付き赤い影が疾走する。
「わたしもいるっす!」チェチーリアが使ったのは小鎌。ジーニースライムの真下まで到達し小鎌を振り上げる。
スパッ!
ジーニースライムを縦に真っ二つ!
死神から鹵獲したチェチーリアの小鎌「不断」は魂以外を切る鎌。器を壊すための鎌。
ジーニースライムはくっ付けことができない!
「アカイノ ナニ シタ! オマエ モ コロッ コォロォォス!」憤怒の覇気にチェチーリアは恐怖を感じる。ただ、少ない。感じる恐怖がす。
オフィーリアの方がこっ怖い……
「まだっす!魂よ逝け!!」大鎌に持ち替え、跳躍しジーニースライムに接近し横薙ぎ!
ザグっ!
「なっ!硬過ぎるっす……。」大鎌は薄皮を切り裂いて止まる。血は出ない……
「シネェェ!!!」真っ二つだが、笑み浮かべている。ぐちゃっ……気持ち悪い……
ジーニースライムが放ったのは超級核撃魔法「ニュークリアエクスプロージョン」。チェチーリアを超高温の爆発が襲う!
チェチーリアは……生きていた。それもオフィーリアにお姫様抱っこをされながら。
「おいおい、気を付けろよなチェチーリア。」
「えっ!オフィーリア先輩!助けてくれたっすか?」
「? 当たり前だろ!お前は私の可愛い後輩だからな!」
「うぷっ!オフィーリア先輩っ!吐きそうっす!」
言葉やダメージで吐きそうなのではない。今オフィーリアは超高速移動かつ、三次元的に動いている。ジェットコースターの進化版。吐きそうなのは仕方ない。
「グゥ! クッツカナイ! ナニ シタ!」2人を尻目に切断面を調べるジーニースライム。
その隙にオフィーリアは着地した。チェチーリアはギリギリ吐かないですんだ。
「オフィーリア先輩。今のうちに倒しきるっす!」
チェチーリアが大鎌を再度構えた次の瞬間、触手が高速で動き切断面に沿って薄く切る。まさにスライムの輪切りである。その後、何事も無かったかのように新しい切断面同士はくっついた。
「あり得なさすぎっす!切られた部分は一生使えないハズっす!」死神の鎌は切ったものを対応物ごとに完全無効化する武器。ジーニースライムの動きは理を無視している。
「たぶん、細胞が1つ1つ別なんだろう。本体を倒さすか塵にでもしないといけないタイプだな!」
「無理難題過ぎっす!」
……オフィーリアは面倒くさくなっていた。
「なぁ……ぶっ壊していいか?」
「? いいっすよ!ジーニースライムをぶっ飛ばしてくださいっす!」
「いや……ここ全部……」
「?」
「チェチーリアごめんな……クビになったら……。」
オフィーリアから溢れる魔力が1段上がる……いや、数段上がる!
チェチーリアは気付いた。オフィーリアがぶっ壊すのは大英博物館ごとだと!
「ダメっす!怒られるだけじゃすまないっすよ!イギリスに居られなくなるっす!逃亡生活っす!」
余りの魔力の濃密さにオフィーリアがキラキラと輝く。そして、振り返る。物憂げに眉をひそめ、意志の強い眼差しでチェチーリアを見つめる。
「ふっ……お前となら退屈しないし、逃亡生活も悪くないな……。」きゅんとする……!
「ふへぇ~……。わたしもっす……。」さっきと違う意見にオフィーリアはこいつ意志が弱いなと思った。が、言質は取った!全力で行く!
ジーニースライムもオフィーリアの魔力の高まりを感じ恐怖した。スライムには基本的に感情が無い。しかし、恐怖を感じていた。
神の領域まで到達したが故に手に入れた思考力と元々併せ持っていた魔物としての野生の勘。それが警鐘を鳴らす。
濃厚な「死」が近付いていると……
そして、逃げ切れないこと、戦わなければいけないことを理解し魔力を解放する。
溜め込んだ魔力のほとんどを使いきってでも勝つ。魔力は目の前の2匹を喰えば補給できる。
神話級魔法の発動準備を始める。手始めにスライムをばら蒔く。多種多様なスライムを分離させる。ほぼ魔力を持たないスライムだが、邪魔になるだろう。
目から足に向けて走る黒い線が光る。8種類の光。赤、青、黄、緑、茶、紫、白、黒。
天災どころではなくなった……人類の存亡が掛かった戦いになった!
オフィーリアは一瞬で準備を終える。
チェチーリアにマジックシールド、ディフェンスシールド、大量の身体強化魔法を掛けた。
今ならチェチーリアは地球が失くなっても数ヶ月は生きられる。
「オフィーリア先輩!」きゅんとする!
「よし、終わらせるぞ!」カッコいい顔!
「ギィィ! コロス! オワルノハ オマエダ!!」
オフィーリアの飽き性から最終局面に!
チェチーリアは祈るのみだった。オフィーリアの勝利を!そして、一瞬きゅんとしたせいで忘れていたが、クビにならないように!切実に祈った!
両者の魔法が放たれる!
めっちゃ遅くなった!
次回決着です!




