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石じじいの話・海の話:無人島のヤシの木
石じじいの話です。
海の話です。
じじいが、旅先の漁師から聞いた話だとか。
日本海の、ある無人島には、一本のヤシの木が生えていました。
暖かい地方ではなかったのに、めずらしいことでした。
対馬海峡を経て、ヤシの実が流されてきたのだろうか?
普通はありえないでしょう。
あるとき、結核をわずらっていた男性が、手漕ぎの舟で、その無人島で渡りました。
そのヤシの木で首を吊って自殺をしようと思ったのです。
しかし、いざとなると怖くなって海岸にうずくまってしまいました。
そうしているうちに、漁師に発見されて救出され、漁師の家で介抱されました。
その漁師は、「あなたも、漁師になったらどうか?」と勧めました。
これは、自殺以上に乱暴な話でした。
それでも、結核の彼は、その勧めにしたがって漁師になりました。
長年、漁師として働いているうちに、彼は快復したそうです。*1
*1 それはありますまいっ!




