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石じじいの話・海の話:瀬戸の太鼓;迫る汽船
石じじいの話です。
海の話です。
じじいが、旅先の漁師から聞いた話だとか。
1. 虚空に鳴る太鼓があったそうです。
それは、瀬戸内海のある瀬戸(狭い海峡)での現象でした。
「瀬戸」は、潮流が急な海域です。
そこでは、旧暦の六月の十七日に、一年で一番満潮となり、それは「十七夜潮」と呼ばれていました。*1
そのとき、その瀬戸では、どこからともなく太鼓の音が聞こえてきたそうです。
2. 汽船の幻覚がでました。
ある浜にいると、沖合から大きな汽船が高速で陸に向かってくることがありました。
「あっ!これは、座礁する!」と思うと、その汽船は、消え去りました。
この汽船の幻覚は、他の船に向かってくることもありました。
海岸近くで漁をしている船に迫ってくるのです。
迫ってくる船を恐れ、逃げようとして船から海へ飛び込むと、その人はかならず溺死してしまいました。
「船の幻覚から逃げるようとして、かえって船の幻覚にとり殺されてしまうのだ」と老齢の漁師はなげいていたそうです。
*1 正確には、大潮が終わっての「下げ潮」の時のようです。




