石じじいの話・海の話:潮流に気をつけろ
石じじいの話です。
石探しのために高知県の太平洋岸を旅したときに、漁民から聞いた話です。
土佐沖には、潮流が速く強い場所がありました。
そこの海面は、鳴門の渦潮のような状態で、泡立っていたそうです。
晴天で、海が凪いでいるときは、その場所を見つけるのは容易なのですが、強風で海が波立っていると発見が困難でした。
夜など、なおさらです。
うっかり、その流れに乗り入れると、船を運ばれていってしまうのでした。
目撃者によると、船は、あっという間に大海のかなたに運び去られてしまって、追いつけなかったそうです。
助けようとした船もいっしょに流されたこともあったとか。
流された船は、いくらさがしても見つかりませんでした。
船体の一部さえも。
もちろん、乗組員の遺体も見つかりませんでした。
しかし、行方不明になった船が、海岸近くに「戻ってくる」ことがありました。
それは、どこからともなく現れて、他の船に静かに近づいてきます。
戻ってくる船には、「人」が乗っていて、彼らが、その船に呼びかけてきました。
「おーい、おーい」と。
戻ってくるのは、かなり昔に流された船なので、今までに救助されていなければ、乗組員たちが無事でいるわけはありません。
船乗りたちは、「戻ってきた船」をたいそう恐れて、それに行き会うと全速力で逃げだしました。
その船は、しつこく追いかけてくることはありませんでしたが、「おーい、おーい」という呼び声は、いつまでも聞こえていたそうです。
あるとき、「戻ってきた船」を検分しようと近づいた船があったのですが、その船は、強い潮流で沖合に流されそうになりました。
そこには、そのような流れは知られていなかったのにもかかわらず、船は大海に連れ去られるところだったのです。
けっきょく、助かったのですが。
こわい、こわい。




