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石じじいの話・病魔を咬む
石じじいの話です。
母親が、病床の子供に添い寝していました。*1
夜中、彼女がウトウトしていると、座敷の奥の暗がりから、細長い腕が伸びてきました。
気がつくと、その手が子供の頭に達しようとしています。
薄暗い、豆球の行灯がついていたので、その腕がオレンジ色に浮きでていたそうです。。
とっさに、母親は、その腕に咬みつきました。
それに驚いて、その腕は、さっと暗闇にひっこんだのです。
それで、彼女は、家人を起こして、あちこちを捜しましたが、怪しいものはいませんでした。
次の日から、その子の病状は回復したそうです。
あれは、「病魔」の腕だったのだろうか?
いやいや、腕の出現は気のせいであり、病状の回復は自然のものだろうという意見もとうぜんありました。
母親によると、咬みついた腕が暗闇にひっこむとき、咬んだ皮膚の歯ごたえが感じられたと。
そのとき、口の中に、いやな臭いと苦い味が残ったのです。
その後、しばらくは、味覚が失われました。
それに、咬んだ前歯の数本が抜けてしまったのです。*2
*1 子供の病名不明についての記述は私のノートにありません。
*2 病魔に触れただけでも、祟りのようなものがあるようです。




