六話 【クリーク村】 (後編)
朝が来た。
ロジャーさんはまだ寝てる。
部屋の窓を開けると気持ちのいい風が吹いてくる。二階からの景色もいい。
スマホ時間で午前5時30分だ。
最近思ったことだが、この世界での体感時間とスマホ時間が近いので、ひょっとしてここも24時間なのかと思う。
ロジャーさんが起きたら聞いてみよう。
しかし暇だな。
起きるの早すぎたか・・・
スマホに入ってるゲームでもするか?
この世界でも充電できる事が分かったから電池は問題無い。
「ん、ショウ、起きてたのか・・・」
おっと、起こしちゃったか?
「あ、おはようございます」
「おはよう」
「起こしました?」
「いや、これぐらいの時間に起きるつもりだった」
へぇ、いつもヘレンさんに殴り起こされてたのに?
「今日にはここを出るし、朝のうちに準備を整えておかないといけないからな」
ああ、なるほど。
「手伝いますよ?」
「それは助かる。じゃあ、一階で飯を食ったら買い出しに行こう」
「はい」
食事にヘレンさんを呼びに行ったが、返事が無かった。
今はちょうど日が昇り始めたところだ。朝早いだけあって、まだ寝ているのだろう。普段はもう少ししてから起きるらしい。
一階の食堂で朝食を取る。
この時間でも食堂はやっているのか?と思ったが、店員さんがいつも通り働いていた。
オールでやってるのかな?
ぱぱっと朝食を済ませ、ロジャーさんに着いて行く。
「ロジャーさん、何買うんですか?」
「ああ、基本的に食料だな。あとショウ、お前の服だ」
「服?ですか?」
「ああ、お前の着ているものはちょっと変わってるからな・・・」
異世界だからか・・・
そう言えば、時々視線を感じたが服の所為か?
「やっぱり変わってます?」
「ああ」
これと同じようなものを着た人見たぞ?
「他の人も着てますよね?」
「ショウのは、普通の服にしては生地の質があまりにも良すぎるんだ。気付くやつは気付く」
言われてみればそうだな。ここは異世界で、全て人の手によって作られる。前の世界では、機械で質のいい物を大量生産してるからあまり考えていなかった。
「そうですか」
「ああ、ここはそういう服に気付くやつが少ないからまだいいが、これから行く第三地区には、貴族も役人も多く居る。叔母さんのとこへ着く前に目を付けられたら面倒なことになるから、今ここで服を買うんだ」
確かに面倒そうだ。
「分かりました」
「まあ、叔母さんの所に住むと決まれば大丈夫だから、それまでは我慢してくれ」
後ろ盾ができるまで待てってことか。
「はい」
ロジャーさんとお店を何軒か回り、麻でできた物を買う。
「着心地は落ちるが、しばらく我慢してくれ」
「いえ、僕のためにここまでして下さりありがとうございます」
「気にするな」
「住む所も、食べ物も、お金も服も、何から何までありがとうございます」
「本当に気にしなくていいんだぞ?」
どうしてそこまで助けてくれるんだろう?
今頃ながら不思議に思う。
「でもどうして・・・?」
「むしろショウにいてもらった方がこちらも助かるんだ。ははは・・・」
なぜそこで苦笑するんだ?
それに俺が居ることで助かるというのは?
「どういうことですか?」
「まあ、その、なんて言うんだ?ショウがいた方が心強いと言うのかな?いろんな意味で・・・」
どんな意味だよ・・・
「そうですか?分かりました。ではこれからもよろしくお願いします!」
「ああ、よろしく!」
そうやって裏のありそうな会話をした後、食料を買って宿に戻る。
部屋に行くと、ヘレンさんが荷物をまとめ終わる所だった。
「あ!ありがとうございます」
「いいのよ。いつもこうしてるから」
そうなのか?
「ショウ、さっき買った服に着替えてくれ。それから出発する」
「はい」
別の部屋へ行き、着替える。
「あら!似合ってるじゃない!」
「ど、どうも・・・」
異性に服が似合うと言われると少し照れる・・・
「よし、出発するか」
「はい」
「あーい」
「あら、もう行くんかい?」
あ、エプロンおばさんだ。
「ああ、これから第三地区へ向かうんだ」
「そうかい。最近、魔物が出るらしいから気いつけな」
「そうなのか?珍しいな」
魔物!?
ここに来てからまだ一度も見なかったな・・・
あれ、最初来た時結構ヤバかったんじゃないか?深い森の中で迷ってた様なものだからな・・・
運が良かったかな?
「ところで、そこの坊っちゃん」
「はい!?」
「どんな関係かは知らないが、ロジャーとヘレンがきっと守ってくれるから、魔物が出ても安心するんだよ」
「あ、はい」
「ハードル上げないでくれよ・・・それにショウ一人でも十分戦闘力あると思うから大丈夫だろ」
え?
俺に戦闘力?
ナイナイ・・・
「そうね、ショウなら大丈夫よ」
ヘレンさんまで・・・
なんでそんな事が言えるんだ?
「ありませんよ!」
「「え?あんなもの持ってるのに?」」
「え!?あんなもの?」
思い当たるものが一つ・・・
ひょっとしてスマホか?
あ、スマホをチラつかせながら凍らせるぞとか言った覚えがあるな・・・
「あれは武器ではありません!」
「「え!?」」
いや、スマホは武器じゃないからね?
あとで説明が必要だな・・・
「どんなもの持ってるか知らないが、早く出発した方が良いんじゃないかい?急いでるのだろう?」
おばさん、ナイス。他の目がある事を気にしてくれたのだろう。
目線で感謝を伝える。
気付いたらしい。にっこりしてこちらを見る。
「あ、そうだった。出発するぞ。話の続きは途中でしよう」
うわー・・・
面倒な事になったな。
スマホの説明をした所で理解できるのか?
なんとかして誤魔化すか・・・
服を変えたお陰か、出る時、視線を感じることは無かった。
クリーク村を出て、しばらく歩く。
「さて、説明を聞こうじゃないか?」
このあと、めっちゃ怒られた。
凍らせるぞ発言を真に受けてたらしい・・・
襲撃にあった時の最終手段にも考えてたみたいなので、出来もしない攻撃で冗談を言うなど、やってはいけないと言われてしまった。
そりゃそうか・・・
「ごめんなさい・・・」
「分かればいい」
「そうよ、もうやっちゃダメだからね?」
「はい・・・」
「よし、話は終わったし、気を取り直していこうじゃないか!」
そうだな、そうしよう。
「はい!」
「あい」
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