六話 【クリーク村】 (中編)
「お、できたか?」
「はい、登録してきました」
「よかったな。でだ、ヘレンとお前について話しをしていたんだが、いいか?」
何だろう?
心当たりがあり過ぎる・・・
「実はね、あなたを第三地区の叔母様の所へ連れて行こうと思うの」
「え?」
叔母様?ひょっとして前に言ってた親戚か?
確か、余所者に厳しいって話だった様な・・・
別の親戚か?
いや、第三地区って言ってたな・・・
「ショウ、お前、住む所も無さそうだし、ちょうどいいだろう」
「説得はロジャーが何とかするから心配しなくても大丈夫よ」
説得するんだ・・・
「本当に大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ!」
「ああ、大船に乗ったつもりでいろ!」
どこからそんな自信が沸くのだろう・・・
何か当てがあるのかな?
もしそうなら、自分で宿を借りずに済む。
ここは甘えておくか。
「分かりました。よろしくお願いします」
「任せとけ!」
「任せなさい!」
こうして見ると、頼もしいな。
普段の行動を考えなければだが・・・
冒険者登録も終わった事で、宿探しに入る。
本当は宿探しが先だが、ギルドを見たときの俺の反応が楽しみで忘れてたらしい・・・
グー
「「「・・・」」」
ヘレンさんの顔が赤くなってきた。
犯人はヘレンさんか・・・
まあ、聞こえた方向からも分かる。
「二人して何よ!」
「「何でもありません!」」
ヘレンさん、目がヤバイ・・・
赤面状態で、その目はおかしい。
つっこんだら、ただじゃ済まされない様な気がする。
今のはなかった事にしよう。
兎に角ロジャーさんの後を着いていこう。
さっきのは気の所為だ、気の所為。
「ここだ」
着いたらしい。
目の前には、石造りの建物がある。
看板に文字と、ベッドの絵が描かれている。
字が読めない俺にとっては助かる。
「今日はここで泊まるぞ」
「はい」
「あい」
宿の中へ入る。
テーブルが並んでいる。
食堂かな?
その奥に、受付カウンターが設置されている。
そこにエプロンを着たTHEおばさんって感じの人がいる。
「いらっしゃい、ロジャー。あら、今日はヘレンも一緒なの?」
知り合いか?
「ああ、親父の頼みでなぁ」
「なるほどねー。で、一緒にいる坊っちゃんはどうしたんだい?見慣れない服着てるけど?」
坊っちゃん・・・
「あはは、ノーコメントで・・・」
ロジャーさん、困った顔でこっちを見ないでほしい・・・
「あらそう?何かやらかしたのね?」
なぜ「あらそう?」の後が小声なんだ・・・
「別にそういう訳ではないが、これからやらかすかもしれない」
何をだ!
「ふふ、楽しそうで何より」
どこがだ!
ヘレンさんも苦笑しないで何か言ってよ!
あ、あれは諦めてるのか・・・
「ほんで、何日泊まるんだい?」
「一日だけだ。急いでるからな」
「そうかい。部屋はどうする?」
「あー、2つで」
「あいよ。料金は銅貨5枚で食事は別、これが部屋の鍵、場所は分かるね?」
相場が分からん・・・
「ああ、ありがとう」
「ヘレン、鍵渡しておくぞ」
「あい」
「ショウは俺と一緒の部屋だ」
一緒なのか・・・
「分かりました」
「じゃあ着いてこい」
「はい」
部屋は必要最低限の物しか置かれてない。
小さなテーブルと椅子くらいだ。
ベッドは二段ベッドになっていて、あまり場所を取らないようにできていた。
ちょっと安心する。これでベッドが一つだったら床で寝ようかと思った・・・
「宿も取ったし、しばらくは自由時間だ。銅貨を3枚渡しておく。店を回るなり、好きにしていいぞ」
銅貨3枚ってどれくらいの価値だ?
「相場が分からないのですが・・・」
「じゃあ、一緒に行くか?」
そうしよう。
「お願いします」
「行きたいところとか、見たいもの、何か欲しいものはあるか?」
「ええ、それなら・・・酸っぱい果物と、亜鉛板と銅板、銅の糸が欲しいです」
「そうか、専門店もあるが、ここからだと鍛冶屋が一番近いし安いな。そこで亜鉛と銅を買うか」
金銀銅、鉄があるのは分かってたが、前の世界の元素って異世界にもあるんだな・・・と思う。
言って見たものの、この世界に無い金属だったらどうしようかと思った。
ステンレス金属などの合金はまだ無いだろう。
とりあえず、案内してもらう。
「何でそんな物欲しがるんだ?」
スマホを充電する果物電池を作るためと言っても通じないだろう・・・
「ただの化学実験ですよ」
「カガク実験?」
「ええ」
「カガクって何だ?」
あー・・・
化学の概念が無いのか・・・
「色んなもの混ぜたり熱したりした時に反応が起きて変化するみたいな感じですかね?」
「治療師の薬作りみたいなやつか!?」
見たことないから知らんが適当に答える。
「作り方にもよると思いますがそんな感じです」
「ショウ、お前は賢者か?」
「賢者な訳ないですよ」
「だよな、賢者が森で衰弱するはずが無い」
おい・・・
「とにかく行きましょう」
「すまん、行こうか」
必要な材料を集め、宿に戻る。
「ヘレンさんは?」
「食堂だろう」
お腹鳴らしてたからか・・・
部屋に戻り、早速作る。
因みに亜鉛板と銅板を買うとき、板状の物が無かったので、鎧やガラクタから作ってもらった。糸状のものは色々な装飾に使われるようで大量にあり、安かったらしい。
らしいと言うのは、全部ロジャーさんが交渉して更に安くしたからだ。
ロジャーさんの交渉が無ければ、そもそも板状にしてくれなかったりする・・・
この電池にはロジャーさんがかなり貢献しているので、完成したらロジャーバッテリー1号と名付けよう。
「始めます」
「おう」
レモンっぽい果物をロジャーさんのナイフでいくつか切ってもらう。
そこに亜鉛板と銅板を刺す。
これをいくつか作って、直列に繋ぐ。
後は充電コードを切って、導線の束から赤と黒のを見つけてビニール部を削り取る。
先ほど作った電池の線を繋ごうとして、ふと思う。
どっちがプラス極かマイナス極なのか分からない。
確か学校では、金属のイオン化傾向がどうのこうので極が決まるって教えてもらったが思い出せない・・・
ここまで来て、電極間違えてスマホ壊すとか嫌だぞ。
イオン化傾向の順番が分からん。
あ、スマホに問題集入れてたな・・・
スマホを開き、問題集を開く。
「あった!」
「お、おう」
声に出してた。
申し訳ない。
問題はあった。うん。
イオン化傾向が問題になってて分からんのだよ!
回答を見る、お、図が分かりやすいな。
一瞬勉強モードに入ろうとして、電池残量が10%を切ってることに気が付き現実へ戻る。
極が分かったので早速繋ぐ。
繋いだ時、電圧が高いとスマホが壊れるので、少しずつ直列にする数を増やす。
充電マークが点いた。
「やった!」
「できたのか?」
「出来ましたよ!」
ロジャーバッテリー1号の完成だ。
「俺には何が起きてるか分からないのだが・・・」
「スマホを充電してるんです!」
「ジュウデン?」
電気の概念が無いのか?
なら言い換えよう。
「あれです!雷の小さい版です!これでスマホのエネルギーを補給してるんです!」
「果物と金属であの雷が作れるのか!?」
電圧上げれば可能だな。
果物が耐えられないか?
「やってみれば分かります」
この後、ロジャーさんはしばらく独り言を呟いていた。
部屋を訪れたヘレンに殴られるまで・・・
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転移先で困って現代技術を再現する!
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転移先で困って現代技術を再現した件
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