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転移先で困って現代技術を再現した件  作者: 空白
第一章 ロア帝国編
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四十三話 【ホウレンソウ】2



山脈を迂回してストリア国へ通じる道を2人の旅人がロバを連れて歩いていた。


「で、いつになったら着くんだ?」

「まだ出発したばかりじゃないか。そう焦るな」


とグスタフが答える。


「出発したばかり・・・ってもう10日は歩いてるぞ?」

「そうか?」

「食料とか本当に大丈夫なのか?」


絶対足らないだろう。と思いながら、ロバに少量しか積まれてない荷物を見てジャックが言う。


「心配するな。ちょうど補給地点が見えてきたぞ」


道の奥に、一台の馬車が止まっているのが見えてきた。


グスタフがそこにいた人に「こちらをお願いします」と丁寧な口調で言ってロバを渡すと、その人はまたどこかへ去っていった。


「御者が居ねぇぞ!」

「そりゃ、招待状は2人分しか無いからな」


と言うと、さっさと馬車に乗り込んでしまった。


「おい!俺がやるのかよ!馬奪って逃げても知らねえぞ!」


すかさずジャックが馬車の壁を叩いて叫び、馬車の中から「そんな事をするバカには見えないけどなあ」とグスタフが返す。


ジャックはそんな貴族と思えぬ態度にため息を吐くと、手綱を握って馬車を出した。



◇◇◇◇◇◇



「なるほど。ジャックの気配が無いわけじゃ」

「はい。私の過ちです。申し訳ございません」


グレイプス家当主の書斎で、2人の会話が聞こえる。


「話を聞こう」

「はい。先日、いつもの様に例の場所へ行ったところ、契約通り現れませんした」

「それで?」

「あの日から今日まで探していたのですが、まだ見つかりません。恐らく、帝国が関係しているか。あるいは、死体は出ていませんが、過去の行いの復讐を目的とした暗殺の可能性が高いかと・・・」

「ふむ」


セバスチャンは内心焦りながらも、冷静を保っていた。

彼の主人がご機嫌では無いのは明らかである。


「しかし、屋敷で勤めながら小国ほどの広さのある帝都を探すには限界がございます。少々ここを離れるお許しを頂けないでしょうか?」


デフロットは少し考えた後、机の引き出しから小さな木箱を出した。


「開けてみなさい」


セバスチャンは言われるままに木箱を開ける。中には布があり、何かを包んでいた。主人の頷きで許可をもらうと、布を開いて中身を出した。


「芸術品ですか?」


重量感と共に光沢があり、金属製である事はすぐに分かった。

美しくは無いが、細かなところまで精密に作り込まれたところを見ると、相当な値が付くだろうとセバスチャンは思う。


「武器じゃ。ストリア産のな・・・」

「なんと!」

「この前、帝都で会議があってのう。第3地区の商業ギルドで起きた爆音の話は知っているか?」

「はい、存じてます。負傷者が出たとか・・・」

「その原因がコレで、コレを作ったストリア国が軍事式典に2人招待すると言い出した。リスクが高すぎる上に、まとめ役が気に入らん奴(グスタフ)で結局は参加しなかったのだが・・・」


と、その物体を拾い上げて手に握る。


「こんなに小さい上に魔力を消費せず、ここを指で引くだけで簡単に相手を殺す事ができる。近距離はもちろん、離れた場所でも使える優れものじゃよ。何より攻撃魔法よりも速さと威力がある」


セバスチャンは彼の主人・・・あのデフロット・グレイプスがここまで褒めた武器が気になった。


「一体何処で?」

「ジャックじゃ。幸いにも消える前に預かった物じゃ。ストリアにいた時、軍から盗んだらしい。さっきの話も、使い方も聞いた。そしてショウの計画もな・・・」


ここでどうして翔が出るのだろう?とセバスチャンは思う。


「ショウ様の計画・・・自動車ですか?」


最近翔から聞いた話で予測をしたが、主人からはそれ以上の答えが返ってきた。


「それもそうじゃが、飛行機・・・鳥の様に空を飛ぶ機械でストリアを偵察するという計画じゃ」

「ヒコウキ・・・」

「学院で広い敷地が必要だと言っていたが、ひょっとするとそれかも知れぬ」


ショウ様を学院に勧誘した時に話した様な・・・と、セバスチャンにも翔と飛行機について話した記憶があった。


「だいぶ話が逸れてしまったな。これは音が大きい。揺動にも使えるじゃろう。それか自分の魔力が使えなくなった時の護身用として使うが良い」

「ありがとうございます」

「これはワシの予想じゃが、ジャックはグスタフ卿といる。そしてグスタフ卿は数日前・・・ジャックが消えた日じゃな・・・。帝都を出発してストリア国に向かう為、貴族の決まりに従って外出届を提出したと聞く。一番短い道のりは山脈を迂回する道じゃ。ジャックをこの国から出してはならん。どんな方法かはお前に任せる」

「かしこまりました」


自分の知らないとこまで既に調べ終えてる主人を誇りに思いながら、セバスチャンが書斎を退室した。



◇◇◇◇◇◇



「ショウ様。今朝、“ガラスと炭”というお荷物が届いておりました」

「ありがとう。ここらに運んでもらえるかな?」

「かしこまりました」


やっと来たか!


メイドと執事が運び込んだ箱を開ける。中には何枚かの紙と、一つ一つ丁寧に布で包まれたソレがあった。


「ふふふふふふ!」


これほど楽しみにしていた物は無いかも知れない。

心の底から吹き上がる喜びと興奮を抑えつつ、商業ギルドに注文して届いた物を確認する。


「えーっと、どれどれ?」


数枚の紙はリストと製造方法・・・


「素材を炭で炭化させた物のリストとラベル」


それと・・・


「ショウ様。この度は、グアラス工房をご利用頂きありがとうございます・・・」


中にはガラスの半球と密閉用のパーツが付いていた。


「これが素材リストで、そっちが設計方法・・・ちゃんと比べられる様に印もついてるな」


丁寧に布から出す。


黒や灰色の線が沢山包まれていた。


ガラスの半球と密閉用のパーツと部屋に置いてあった電極を組み合わせる。


そして、その装置を真空にする為、手動の真空ポンプを部屋の隅から取り出す。

これも最初は手こずったが、ドーヴェルさんが切削加工機と旋盤を使って完成させた物だ。


中の空気を抜きながら、部屋に置いてあるバッテリーへ繋いでリストと照らし合わせる。


そして、黒っぽい線の様なも・・・フィラメントを電極に設置してスイッチを入れた。


徐々に電圧を上げる。


ジリジリ・・・ピカッ


「おおおお!これで電球ができる!!」


一瞬だけ光って、消えてしまった。

すぐにリストにバツ印を入れる。


「よし!次!」


次のは10秒くらい光った。


「バツ!次!」


光らなかった。


「バーツ!次!」


少し光った。


「バッテン!次!」


すべてのフィラメントの確認が終わるまで実験は続いた。

フィラメントが切れたら別の素材のフィラメントと交換し、ポンプをゴッシュゴッシュ動かして真空にした。

時にはバッテリーの電圧が下がったら屋敷の地下の発電機から引っ張ってきた電源で充電をした。

直接電源に繋げなかったのは、発電機が安定した電力を送れないからだ。

これも今後の課題だ。


そして、全ての電球のテストが終わり、俺が決めた規格で点いたフィラメントが何種類か残った。


「ふう。後は、点灯時間だけだな・・・」


俺は洗濯機に取り付けたタイマーの応用で、装置とタイマーを直列に繋いで、フィラメントが切れたらタイマーも止まる様にしようとしたが、時計みたいなタイマーはまだ作れていないので、目視で確認するしか無かった。


そして、その日はいつもとは違う光源で夜を過ごした。


翌朝、目にクマができた状態でも実験が中断されることは無かった。


一方で、あまりの感動で「ふふふふふふ」や「おおおおお!」と奇声を上げ、翌日まで起きていて酷い顔になったせいで、一部の使用人達の間で「精神を病んでしまったのでは?」と噂された。

しかし、さすがはグレイプス家の使用人。

本人()に気づかれることもなければ、この話が外部に漏れることも無かった。



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