四十二話 【帝都一周の旅】7
夜が明けて、ロベルトに言われた店で回復薬を買う。冒険者が樽買いした事に興味を持たれたが、適当に商人である知人に頼まれたと言えば、納得していない表情だったけど何も聞かれなくなった。
どうせこの村にはもう来ないだろうし、その場をしのげればどう思われようが関係ない。
その後、ロベルト達に引き止められたが、熱い別れの挨拶を終えてシュタイゴンを後にした。
シュタイゴンから離れたら、車での移動を開始する。
行きとは逆で、帰りは早かった。
山脈の陰で森林は暗く、木の間隔は広い。落石の影響か、針葉樹がなぎ倒されて岩が転がっている場所もあった。
「ショウの旦那。なぜ夜は移動しないんじゃ?」
「道を照らす物が無いからです」
と言うと、ドーヴェルさんが首を傾げた。
「ランタンがあるじゃろうに」
「それでは暗すぎます。それに、ちょうど調べてもらっているところです。明るい光源を」
「そうか?」
そう、電球はまだ完成していないため、夜の車での移動は避けてる。
車のヘッドライトはただのお飾り状態。
ランタンを使わない理由は、光が安定しないからと、付けたり消したり不便だということ、燃え移る可能性があること。
しかし、この旅に出る前にとある依頼を出しておいた。
あとは帰ってきたらのお楽しみだ。
そしてしばらく進み、門に近づくと、色々と視線を浴びながら荷車として手続きを済まし、2、3日かけて倉庫へ戻って反省会が行われた。
本当は他の作業員ともやりたかったけど、休暇中の為居ない。
今回はドーヴェルさんとシェリルさんと俺の3人でやることになった。
〜〜〜〜〜〜
「さて、皆さん。今回の走行試験で何か気づいたことは?」
「んーそうですね・・・」
とシェリルさんが言いかけると、ドーヴェルさんをチラ見してこう続けた。
「運転する人の安全性ですかね・・・」
思い出される嫌な記憶。
「そ、そうですね・・・。他には?」
「サスペンションをもっと柔らかくした方が良いと思うぞ」
「なるほど・・・」
確かに馬車よりはマシだが、やっぱり地面からの衝撃が大きいと思う。
しかし、ドーヴェルさんが言うと着地のショックを和らげる為だと思ってしまう。
「改良しましょう。乗り心地が良くなるのは良いことです。他には?」
「走ってる時、索敵役があまり役に立たなかったです」
とシェリルさんが言う。
「発見しても、その報告中に通り過ぎてましたね」
そういえば「魔物がいまいした!今あの岩の奥で・・・」と指をさしながら手を横に回して「通過しました!」とか言ってたな・・・
それで魔法を使った索敵の範囲がそこまで広く無いことが分かった。森林の場合は話は変わるが、目視の方が遠くを探せたりもする。
だからと言って、見張りを無くすわけにはいかない。停車中は逃げられないし、野営してる時も危険だからだ。
「他には?」
「もっと修理器具と予備パーツを持った方が良いと思うぞ」
ドーヴェルさん・・・また飛ぶ気ですか?
修理を前提とするのは良くない。
「それは・・・考えておきます。修理器具と予備パーツの必要がなくなる方面で」
一瞬しょんぼりした様に見えたが、気のせいであってくれ!
「あとは何かありますか?」
「無いのう」
「ありません」
「じゃあ、これで終わりです。作業の方が休暇から帰ってきたらまた忙しくなるのでそれまでゆっくり休んで下さい。以上です」
反省会を終え、ヘレンさんの屋敷に持って行く図面の整理をしていると、こんな会話が聞こえてきた。
「あとはリーダーらしく無かったことぐらいかな」
ん?
「そうじゃ。ワシも思った。威厳を保つとか言っていたが、結局口調も元に戻っとったしのう」
「私もですけどね」
言われてみれば、確かに敬語使っていた。
「しかしもったい無いのう。ショウの旦那がドワーフだったら、きっとあのジャンプを理解したじゃろうに」
オイ・・・
他に聞けることはないか2人を追ったが、倉庫の門を出たところで別れてしまった。
決して、陰口が気になったからではない!
屋敷に帰ると、予定より早く帰ってきた俺をヘレンさんが心配してくれた。
自動車がどんな乗り物かは既に話してあるので、一通り完成して走行試験した事を話したら「私も乗りたかった!」と言われた。
早く帰ってこれた分、時間に余裕ができた俺は、休息をとりながら今回の走行試験での改善点を図面に施した。
◇◇◇◇◇◇
ーーロア帝国某所ーー
「よおジャック」
フードを被った男が話す。
「今更何の用だ?」
「まあそう怒るな。呼び出された理由も分かってるだろう?」
「ッ!!」
この男の言う通りであった。
今回呼び出されたのは他でも無い、あの有名な貴族を敵に回したからでもある。
「グスタフ、貴様ァ・・・!」
「おっと?こんな所で戦おうとは不用心だな。せめて誰の目に触れぬ外でやらないと」
「この野郎!」とジャックは思った。
彼が呼び出されたのもそれが関係する。
普段、身を潜めてスリや情報収集をして稼いでいる。つまり定住しない為、居場所が特定されることはない。
最近、グレイプス家の傘下に入って悪事はやめさせられたとはいえ、それでも居場所はバレないようにしていた。
「どうやって俺を見つけた?」
「簡単だよ。お前に渡したそのカバンだ」
「は?」
グスタフが説明を続ける。
「そのカバンが何の魔物でできているか知っているか?」
一見するとただのカバンだが、その一部に魔物の皮が使われているように見えた。そこそこ高級な皮ではあるが、金具や他の部分にもそれなりの物が使われている。
「なんだ、分からないのか?だから見つかるんだよ」
そこまで言うと、ジャックも気づいた。
使われていた魔物の皮・・・確か臭覚が非常に優れていた筈だと思い出す。
「まさか・・・」
「そうさ。1組の魔物を捕まえて、片方だけ見えない所で殺して、生きてる方に探してもらったのさ」
どこに逃げ隠れしても見つかる。
グスタフの事だ。例えカバンを捨てても追う手段があるのだろう。
だからこの事も教えた。
「・・・用件はなんだ?」
「自分の立場が分かっているようで何より。これでようやく本題に入れる」
一体どんな事を言われるだろうか?
とジャックは思う。
「ジャック。貴様には俺と一緒にストリアへ来てもらう!」
話の最初の方が未完成でした。
未完成部分を追加致したしました。
修正箇所
ドーヴェルさんの「ショウの旦那。なぜ夜は移動しないんじゃ?」
というセリフから改行で空白が続き、いつの間にか門で手続き済ましていたところです。




