四十二話 【帝都一周の旅】4
眠っていると、シェリルさんに起こされる。
「ショウさん。起きて下さい。朝ですよ」
「ん。おはよう・・・ございます」
ちょうど太陽が昇ってきたみたいだ。
スマホの電源を入れて時刻を確認。
現在時刻 6:50
スマホの時刻を見てふと思った。
異世界に来た時の日の出の時刻はそんなに遅くなかった。
やっぱり地球とこことじゃ1日の時間の長さが違うのか?
それとも、単に冬になると日照時間が短くなるのは地球と同じなのか?
「どうしたんじゃ?」
「ショウさんがボーッとしてるんです」
2人の会話で我に帰る。
「おはようございます。すいません、ちょっと考え事を」
「そうか。じゃあ朝食を済ますたら出発するぞい!運転はワシに任せろ!」
「「それは却下で!!」」
シェリルさんと声がかぶる。
「なんじゃ、2人して。つまらんのう」
「つまらない・・・って!そういう問題じゃありません!ですよね!ショウさん!!」
「そうですよ!」
「ほら!パーティリーダーのショウさんが言っているんですよ!リーダーの言葉は絶対!」
そんな決まりあるのか?
それならリーダーらしく言おう。
リーダー。
リーダー・・・ね。
「その通り!俺はこのパーティのリーダーだ!従ってもらうぞ?初心者だけどね」
ドーヴェルさんが「なんか不安じゃ」と、シェリルさんは「余計な一言が」と呟く。
「朝食を済ませたら、野営の片付けして出発する。あと、リーダーの威厳を保つ為、たった今から俺は敬語を使わない!あ、2人も変な言葉遣いしなくてもいいから。なんの遠慮も要らない。タメ口でいい。これはリーダーの決定だ!」
この時、話を聞いている2人は思った。
それで威厳は保たれるのか・・・?
その後、簡単な朝食を終え、俺たちは計画通り出発した。
予定では、5日かけて帝都壁沿いに進み、裏側に広がる農牧地帯に着く予定だったのだが・・・
あれ?
なんか見えてきたぞ?
地図上では途中に村とかは無かったはずだ。
というか、太陽の位置とか色々考えてー
「集落がみえてきたわね」
「そうじゃのう」
「シュタイゴンじゃないのか?」
「「・・・」」
なんで黙るんだ?
時間は・・・ちょうど午後1時。
帝都の外壁から十分に離れた状態で、実際に車で走った時間は12時間くらいか?
確か、門から第3地区に行くだけで2、3日かかる。
帝都を横断する正規ルートでも最低10日かかると言われている。
馬を使えば早く着けそうだが、ここまでも違うものだろうか?
だって端から端だぞ?
車で外周した方が早いって一体・・・
「ふっ」
「ショウさんどうされました?」
「い、いきなり笑いおって、何事じゃ?」
てかなんで話し方戻ってるんだよ。
タメ口でいいって言ったのに。
「いや、車で外周した方が帝都を横断するよりも早く農牧地帯に着けるからさ。帝都を通る時の時間のロスを考えたらアホらしくなって」
だってあれだぞ?
第3地区から徒歩で帝都の外へ出て、車で外周した方が正規の直線ルートより早いのは流石に笑えてくる。
ここまでくるとこんな思考も始まる。
車を作れば、きっと軍事利用されるだろう。
速度が出せる乗り物は馬か、クリーク村のギルマスがなんか乗ってた魔獣だっけか?それくらいだ。
道さえあれば速度は出せるし、そうなると、主な用途は支援物資を運ぶ事。
そして軍から大量の発注が来て・・・
終いには・・・!
ロジャーさんとヘレンさんとデフロットさんに借りたお金を返せる!
余ったお金で人生ウハウハ!
なんて事はしないが・・・
一応頭の片隅にでもしまっておこう。
「ところでシェリル。この近くに人がいなければあそこに見える道を走りたいんだが」
「魔力反応もないので大丈夫かと」
「ありがとう」
やはり魔力量が多い人がいるのは便利だな。
「しかしあれがシュタイゴンか」
「シュタイゴン?あの集落がですか?」
「いやあ、まさかのう。もっと遠くのはずじゃったぞ?」
「そうですよ。計画では5日かかる話じゃないですか!ははは」
ザザザーッと土埃を巻きながら“シュタイゴン”と書かれた看板を通り過ぎる。
「シュタイゴンって書かれてなかったか?」
「ええ確かに」
「信じられんが・・・」
なるほど、想定外だったわけか。
こうして本来の計画よりもさらに早く着くことができた。
◇◇◇◇◇◇
ーー帝都第一地区ーー
城の長い廊下を2人分の影が映し出される。
「しかし本気ですか?平民を連れて行くのは構いませんが、何かあったら貴方の責任」
「ええ。昨日説明した通り、ストリア国の軍事式典へは一般人を同行させるつもりです。昨日の会議でもそう決まりました。その者はロア帝国出身者ではありませんし、何処ぞの者とも知れぬ記憶喪失者です。これで招待状に書かれた参加条件である“複数名”は満たせます。仮に何かあっても、帝国が失うのはその記憶喪失者と私くらいでしょう」
グスタフの話を聞き、頷きながら返す。
「はあ。切り捨てですか・・・そこまで仰られては。しかし、陛下がお気に召してるあなたが居なくなるのは困りますよ」
「ははっリード殿ご冗談を」
グスタフが笑いながら答える。
「本当ですよ?民に慕われ、様々な問題に自ら手をつけるその姿勢。陛下も大変喜ばれています」
「貴族とはいえ、私は平民上がりです。それに私の腹黒さをご存知でしょう?」
「そこまで言ってませんよ。っと、着きましたね」
ガチャっとドアを開けて2人が中に入る。
テーブルには先日グスタフが持ってきた箱と小物が数点。
「これが・・・昨日の会議で使った例の物ですか」
「はい」
事前に話し合っていた通り、その準備はすぐに終わった。
「結界と風邪魔法の準備は・・・終わってるようですね」
「ええ」
ロア帝国総合学院の学院長が最近開発したと言われる消音魔術を発動し、発動効果内にある音を閉じ込める。
「魔力の消費が激しいので手短にお願いします」
「そこは問題ありません。すぐですから」
そういうと、デフロットは箱から何やら金属製の塊を出すと、しっかり握り直した。
「これは初めて使う道具でして・・・扱い方が本来と違うかも知れません。しかし、先日の事件の話を元にすれば・・・」
用意した砂袋の的を狙い、ゆっくりと引き金を引く。
カチンッ
「ん?何も起こらないではないか」
「変ですね。報告によるとここを動かしたら発動すると聞いたんですが」
消音魔法は解除され、2人が原因を確かめる。
グスタフは報告にあった事をリードに全て説明した。
それがストリア国の新兵器である可能性ということも。
「しかし一体どういう威力かは分かりませんが、よくそれで他の者が納得しましたね」
「昨日の会議ですか?参加者の多くは例の事件についての報告を知っているので、単に関わるのを嫌がったのでしょう」
「そうでしたか」
「ストリアの式典に参加して使い方を調べてきます」
「ええ、よろしくお願いします」




