四十二話 【帝都一周の旅】
「食料!」
「食料よし!」
「工具!」
「工具よし!」
「じゃあ荷物はこれでオッケーですね」
荷物を積んだ状態を見ると、まるで・・・
「まるで冒険家の車だなぁ」
「ショウの旦那、冒険者じゃないのか?」
「・・・なんでも無いです」
俺も一応冒険者だった件。
「では最後に一番大事なもの・・・身分証とお金と武器!」
「よし!」
身分証は門をスムーズに通るため。お金は勿論のこと、武器は万が一の事態に備えてだ。むしろこの世界じゃ持っていない方が危険だ。
「全部ありますね?」
「はい!」
「あるぞ!」
「それでは最終確認。予定では3日かけて帝都を出ます。その後、5日で帝都の反対側。山脈と広大な農牧地帯が広がる・・・忘れた」
「シュタイゴンですか?」
「そう!シュタイゴンにて食料を補給。5日で戻って帝都に入り、3日間で倉庫に。計16日かけて戻る予定です。早く進めそうな場合はそうします。もし、時間がかかりそうなら引き返します」
「ショウ様!本当にたったの16日で戻れるのでしょうか!?帝都は元々は1つの国です。侵入する敵から守るために、国を囲むようにして壁が作られました。侵入対策として、帝都の中心への直接通る街道も無く、第1地区に行くには長い距離を、時間を稼ぐように、計画的に作られた都です。少なくともその倍はかかると思いますが・・・」
なるほど。
帝都が元々1つの国だって事は知らなかった。
確かに都市にしては大き過ぎるわけだ。
それが勢力を増して土地を広げたと。その名残があの壁なのか。
しかし、どうも帝都から出づらいと思ったら侵入された時の対策だったのか。
確かに各地区を通る道があったら攻められやすい。
今までの不便さの理由が理解できた。
うん、納得。
しかしですね、32日もかけられないんですよねーこれが。
入学式がありますからねー俺。
「でも大丈夫です。この乗り物を使えば、計算上では16日で帰れます」
「そ、そうですか」
サスペンションとかタイヤとか色々いじったし、念願の四輪駆動方式だから悪路も平気だ。
たぶん・・・
一緒に案を出してくれたドーヴェルさんはよく分かっているみたいで何も言ってこない。
話を戻して・・・
「では役割分担です。体力の関係上、シェリルさんは車に乗ってハンドル操作を。ドーヴェルさんと俺の補助をお願いします。坂道に差し掛かったらブレーキ踏んでくださいね」
「分かりました!」
残りの作業員たちには休暇を出した。
なぜか「クビにしないでくれ!」とか言われたけどそんなつもりは無い。
車やエンジン開発、ポンプ、工作機械等、色々と漏れたら困る物を作ってきた人達だ。
手放すわけにはいかない。
一応逃げられないように、休暇終わったらボーナスを渡すことを約束した。
これでどこかへ行くことはないだろう。
「ドーヴェルさんは俺と一緒に車をお願いします」
「構わん構わん!むしろワシが酒以上に熱中した仕事じゃ!」
ドーヴェルさんはすごい。ドワーフなだけあって力が強い。重量が何トンあるか不明だが、少なくとも1トン以上はある車を引っ張ってみせた。
いや、ブレーキを解除すれば俺にもシェリルさんにもできる。しかし、ちょっとした段差、ちょっとした傾斜で1トン以上の塊を制御できなくなる。ドーヴェルさんには押す力も止める力もある。
まあ、流石に坂道で加速したらドーヴェルさんにも止められないだろうが・・・慣性力的に。
幸いにも帝都にはその様な坂はない。あるのはレンガや石で舗装された比較的走りやすい道と、たまに通る凸凹道とちょっとした傾斜だ。
俺も一緒に引くから不公平感はないと思う。
「あの!本当に運転席に乗っていいのでしょうか?」
「もちろんです。何かあったら、俺が教えた様にそこのペダルを踏んで下さい」
「分かりました!」
むしろ乗ってもらわないと困る。
万が一の保険だが、止められなかったら、俺の全財産がパアだぞ。
今までの小遣い全部注ぎ込んだからな。デフロットさんに追加予算もお願いしたくらい。
すんなりくれたから逆に驚いたほどだ。
車以外の道具や設備費、制作費と研究費含めたら日本円で数千万円くらい使ってると思う。
俺がこの額を扱ってるいる時点で既におかしいけど、まあ、一緒に持ってきた予備知識のおかげでここまで抑えられたとも言える。
それに、この国の硬貨の価値も相場が分からなかったんだから仕方ない。
というか、金銭感覚おかしくなってるかも・・・
と、今までを少し振り返りながら倉庫の敷地外へ通じる門を開く。
ギギギィッ
「まだ日も登ってないので、足元に気をつけましょう。では、出発!」
この先しばらくは荷車として引っ張る。
なぜ馬車みたいに馬に引かせないのか言えば、御者が乗る場所が無いし、馬の世話が必要だからだ。
それ以前に馬の世話ができる人が居ない。
しばらく歩いたが、早朝に出た甲斐もあって、人混みの中を通る時間は計画当初より少なく、思ったより早く外に着けそうだ。
そして、無事に宿も借りて1日を終えることができた。
〜〜〜〜〜〜
ドンドンッ
「ショウさーん?」
シェリルさんの声か。
「ちょっと待ってくれ」
怪しまれない様に他の冒険者と同じくタメ口を使うように言ってある。
着心地の良い地球産のシャツを上着で隠し、部屋から出る。
ガチャ。
「お待たせ。ドーヴェル爺は?」
「もう起きてま・・・る」
いま「起きてます」って言いかけただろ。
宿娘にお礼を言って馬の繋ぎ場に向かう。
見張りにお礼とお金を渡して荷車を受け取る。
「夜逃げか?大変だな」
「ただの冒険だ。日が登ってない方が道も空いてるだろう?」
「そうだな!」
そんな会話を交わし、2日目が始まる。
◇◇◇◇◇◇
一方、農牧地帯のある一軒家では、ディッシャーという少年が活躍していた。
「そこ居るよ!」
「ハァァァッ!!」
スパッと肉が切れて魔物の首が落ちる。
「ふう。これで最後みたいだな」
「そう見たいね。さ、素材集めましょう!」
「そうだね」
ザザッ。
「ナイトウルフ!?」
「うあぁッ!?痛ってぇな!こんにゃろ!」
「えいっ!」
「グルルァァァッ!」
メンバーの魔法が命中し、ナイトウルフが絶命する。
「やっぱり風魔法最高!ってロイド大丈夫!?」
「ああ。引っ掻かれたけど、今ディッシャーに治してもらってるから大丈夫だ」
傷が優しい光に包まれて、時間が戻るかのようにロイドの腕は無傷になった。
「はい、おわり」
「「おお〜」」
「やっぱりいつ見てもディッシャーの治癒魔法は他と違うね」
「ありがとう。でも、これができるようになったのはあの人のおかげなんだ」
そう言うと、ディッシャー少年は遠く空を見つめた。
「ディッシャーがこの間言ってたショウっていう人?事故の日助けてくれた人でしょう?」
「そう。でも僕のお父さんが探しても見つからないんだって・・・」
「でもお前も凄いや。そのショウって奴と同じ事が出来るんだから。アンナも指切ったくらいでディッシャーん家に駆け込んで騒ぐな!」
「なっ・・・女の子にとってお肌を綺麗にするのはとても大事なのよ!」
「あはははっ」
「ディッシャー!あなたも笑うの?」
「今この瞬間が楽しくて笑っちゃった」
「・・・ディッシャー」
「そうね。今を大切にしましょう!」
「「「あはははっ」」」




